星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

 
 超絶技巧派として名の通っているリストによる管弦楽作品にギリシア神話からの題材作があります。しかも興味深いことに、作曲者による編曲版としてのピアノ・ヴァージョンもCDでは聴くことができるので、聞き比べを楽しむこともできます。


♪ 交響詩「プロメテウス」(1850/55)♪
 プロメテウスの神話で有名なのは大神ゼウスから火を盗み、それを人間に与えたという行為がゼウスの反感を買い、その罰として岩山に鎖で縛り付け、ゼウスの化身でもあり象徴でもある鷲に内臓をついばめ」させたという伝説でしょう。しかもその罰には終わりがなく、内臓をえぐられたプロメテウスの肉体は不死身だったため、内臓が無くなるたびに復活したそうです。そのたびに鷲がやって来て再び内臓をついばむ… それが永遠に続く苦しみという罰を与えたのです。それほどゼウスはプロメテウスの行為を許せなかったということでしょう。残酷なギリシア神話としても有名ではないでしょうか? プロメテウスは星座にはなりませんでした(いちおう星座はゼウスが天空に投げ上げたりして作られたことになっている ←アラトスの『星辰譜』)が、プロメテウスを苦しめたという功労で鷲の方はわし座として星空にその姿を記しています。



♪ 交響詩「オルフェウス」(1853/54)♪
  リストの連作交響詩の4作目で、彼のオルフェウスに対する心情が伺われるようです。作曲家が、このギリシア神話から受けるイメージと言ったら、その多くが悲劇的なエピソードを音にしているのに対して、リストはオルフェウスの一番幸せなひとときを描写し、終始します。それはどこまでも美しく牧歌的な旋律に満たされていると言っても言い過ぎではないかもしれません。グルックの「妖精の踊り」のような、目の前に田園が広がっているかのようです。オルフェウスの奏でる楽器(画家によってはオルフェウスが奏でている楽器は竪琴だったりヴァイオリンだったり様々)の調べで、その周囲には盛りの動物と言わず、あらゆるもの木々や泉までもが、彼の音楽に耳を傾けている、そんなイメージが浮かんできます。リストはその情景をソロ楽器で描いているかのようです。


Photo by Toshiharu Minagawa


ワイマールの響き〜リスト:管弦楽作品集
Disc1
ダンテ交響曲 S109/R426(地獄篇/煉獄篇/マニフィカト)
システィーナ礼拝堂で S360/R445

Disc2
ファウスト交響曲(3人の人物描写による) S108/R425
(I. ファウスト / II. グレートヒェン / III. メフィストフェレス - 終景の合唱)

Disc3
交響詩『前奏曲(レ・プレリュード)』 S97/R414
交響詩『オルフェウス』 S98/R415*
交響詩『人、山の上で聞きしこと』 S95/R412

Disc4
交響詩『フン族の戦争』 S105/R422
交響詩『ハンガリー』 S103/R420
交響詩『マゼッパ』 S100/R417

Disc5
交響詩『タッソー、悲哀と勝利』 S96/R413
交響詩『英雄の嘆き』 S102/R419
交響詩『理想』 S106/R423

Disc6
交響詩『プロメテウス』 S99/R416*
交響詩『祭典の響き』 S101/R418
交響詩『ハムレット』 S104/R421
交響詩『ゆりかごから墓場まで』 S107/R424

Disc7
フランツ・シューベルトの行進曲 S363/R449より(第3番、第2番、第4番)
シューベルト:さすらい人幻想曲(リストによるオーケストラとピアノ編)
3つの葬送的頌歌 S112/R429より(第1番、第2番)
王の旗は翻る S355/R442(原曲:ピアノ・ソロ S.185)

Disc8
メフィスト・ワルツ第2番 S111/R428
レーナウのファウストによる2つのエピソード S514/R1812
2つの伝説 S354/R440
(小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ/波の上を渡るパオラの聖フランチェスコ)
ラコッツィ行進曲 S117/R439

Disc9
6つのハンガリー狂詩曲 S359/R441(F.ドップラーによる管弦楽編)
第1番ヘ短調
第2番ハ短調
第3番ニ長調
第4番ニ短調
第5番ホ短調
第6番ニ長調『ペストの謝肉祭』

(ギリシア神話関連*はオルフェウスとプロメテウスのみ)

ウィーン・アカデミー管弦楽団
マルティン・ハーゼルベック

 ★ ★ ★ ★
 このアルバムは私の趣味を満たしてくれるピリオド・オーケストラによるリストの管弦楽作品を網羅したボックスです。個人的にはここで紹介している2曲が聴ければ良いわけですが、日本人の悲しい性かな、完全版というか、ここでは「全曲」が揃っているアルバムとして、せっかくだからと枚数の多いこれを推薦しておきます。というか、ピリオド楽器というのはリストの演奏史でも珍しいレコーディングだからです。そして合唱好きの私には、2曲の交響曲(Disc1/2)がピリオドで聴けるとは至福の喜びです(笑)。 やっぱり星空を眺めている傍らで流れていて欲しいのはピリオドの音でしょうか?このアルバムは全9枚組というボックスです。






ワイマールの響き〜リスト:管弦楽作品集
(オケ版と同じくギリシア神話関連はオルフェウスとプロメテウスのみ)

交響詩『人、山の上で聞きしこと』 S95/R412
交響詩『タッソー、悲哀と勝利』 S96/R413
交響詩『前奏曲(レ・プレリュード)』 S97/R414
交響詩『オルフェウス』 S98/R415
交響詩『プロメテウス』 S99/R416
交響詩『マゼッパ』 S100/R417
交響詩『祭典の響き』 S101/R418
交響詩『英雄の嘆き』 S102/R419
交響詩『ハンガリー』 S103/R420
交響詩『ハムレット』 S104/R421
交響詩『フン族の戦争』 S105/R422
交響詩『理想』 S106/R423

ピアノ:レスリー・ハワード、マッティア・オメット

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 オーケストラ版と違うのはS107『ゆりかごから墓場まで』が収録されていないことぐらいでしょうか?あとはピアノもモダン・ピアノというところか… 聴きたいのはS98とS99だったから全曲じゃなくても…




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