そんな怪物を相手にヘラクレスは退治を試みるのですが、1本の頭を打つたびに、そこからは新しく2本の頭が生えてきました。
長い格闘の末に一体何本切り落としたのかわかりません。ヒドラの頭が50、100、1万本と伝える伝説もありますが、それはこのときの情景があったからでしょう。
ヘラクレスはなかなか劣勢になりませんでしたが、優位に立つこともありませんでした。そうこうしているうちにヒドラの加勢に女神ヘラが差し向けた巨大な蟹が現れ、ハサミでヘラクレスの足を挟みはしましたが、あっというまに踏みつぶされてしまいました。
このときになって、ようやくヘラクレスはイオラオスに助けを求めます。彼がヒドラの首を1本打ち落とすたびに、イオラオスが持ってきた松明でその傷口を焼き、再生を防ぐことができました。 エウリュウステウスは、ヘラクレスがイオラオスとの共謀でヒドラを退治したことを理由に、彼の功業として認めようとしませんでした。また、ヘラクレスを苦しめただけで、ヘラの思惑通りにはなりませんでしたが、ヒドラと化け蟹の功績を認め両者を星空に上げて星座にしました。
冬の夜、冬眠から目覚めた獣たちの姿として、ヘラクレスに退治されたネメアの獅子、ネルレーの蟹、大蛇が揃って星座として東の空に昇ってきます。
しかし、時間が経つと「冬眠から目覚めた獣たち」の姿から一転して「ヘラクレスに追われる怪物」の姿として立場が変わって見え、単なる日周運動が、ギリシア神話絵巻として意味を持ってくるのです。 |