星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

紀元前三世紀頃、
エジプトを治めていたマケドニア王朝のプトレマイオス三世は、
その尊称「エウエルゲテス(善行者)」と、
人民から言われるだけあって人望の厚い王でした。
エウエルゲテスは詩人アポロニウスから教育の手ほどきを受け、
アレクサンドレイアの学芸、地理学、天文学など、
王の影響もあって、学問的にも恵まれた時代だったのです。

彼はキュレネの女王ベレニケ二世を妻に迎えてキュレネと合併し、
第三シリア戦争に打ち勝って、
シリアと小アジアを攻略し、
父が基礎を固めた王朝の黄金時代をもたらせました。



王がシリアとの戦いに出征するとき、
ベレニケ王妃は夫の無事を祈り、
美の女神アフロディテに対し、

「王に勝利を与えてくだされば私の髪を女神に捧げます」

と誓いをたてたのでした。
王妃の髪の美しさは国の内外はおろか、
神々の間でも有名だったのです。

やがて、
プトレマイオス三世が率いるマケドニアの軍隊が
勝利を得たという報告が届くと、
王妃は誓い通り、
なんのためらいもなく
美しい髪を切ってアフロディテの祭壇に捧げました。
まもなく凱旋した王は、
王妃の姿を見て驚きと共に失望を感じたのですが、
自分の勝利のために妻のした行為を喜びました。




翌朝、
不思議なことに王妃の髪の毛はアフロディテの神殿から消え失せていたのです。
王は天文学者のコノンに

「これはどういうことだ?」

と尋ねると、
コノンはちょうどその頃天に現れた新しい星の群をさし、

「神が王妃のお心ばせと髪の毛の美しさを愛でて、
「星座の群れに加えられたのです」

と言い、
王も王妃も大いに満足したということです。


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