星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

オデュッセイア/魔の海の大航海
 ホメロス作と言われる【イリアス】と【オデュッセイア】は非常に長い叙事詩なので、これを映像化するためにはコンパクトにせざるをえず、制作者を悩ませたことでしょう。この二作は主人公を変えますが、ひとつの物語と言ってもよいかもしれません。文学の世界では【叙事詩の環】と言われるうちの二作。
 さて今作の主人公はオデュッセウスです。彼は【イリアス】においても知恵で大活躍するわけですが、ここではギリシア軍がなぜトロイに牙を向けたかまったくの説明もなく、その原因となったパリスもヘレネも、名前すら出てきません(いいのか?)。かろうじてアガメムノンとメネラオスの兄弟、アキレウスとヘクトルの戦闘が短いエピソードの中で紹介されているに過ぎないのです。これがまたあっけない。この辺りがギリシア神話ファンには不評の原因なのでしょう。

 しかしこの作品がトロイア没落後10年間の放浪がメインの作品だから仕方ありません(ガマンしてください)。それにしてもすべてがあっけなく終わってしまいます。私が初めてこの作品を見たのは衛星放送の時で、しかも見始めたのはオデュッセウスがポセイドンの怒りを買うシーンから。だからDVDを見て、ここまでがさらりと描かれているのに驚きました。
 ただ、原作を忠実に描くときりがないから、思い切って殺ぎ落とすのは仕方ありません。脚本家はそこから映画のための物語に書き換えるのが商売です(笑)。

 ダラダラ不満を綴ってしまいましたが、本編は実に良く制作されていると思います。さすがコッポラ、テレビ番組史上最高の制作費を使っただけのことはあります。スタジオかロケか。ここも勝負(なんのだ?)の分かれ目と言ってもいいと思います。1997年度のゴールデン・グローブ賞にノミネートされただけのことはあります。

 ギリシア神話を扱っているだけに、神さまも数名登場します。オデュッセウスを助ける守護神は女神アテナ。この役どころを端正なイザベラ・ロッセリーニが演じていますが、女神にふさわしい演技に惹かれます。彼女はロベルト・ロッセリーニとイングリット・バーグマンの娘だそうです。ただ、ちょっと表情が怖いかも。カラヴァッジョの自画像がメドューサをモチーフにしていますが、あんな感じ)
 フレディ・ダグラス演じるヘルメスはちょっと軟弱な、ちょっとアチラ(どちら?)系のプレイボーイ風に描かれて登場します(私はこれ系はダメです)。この旅のきっかけを作ったポセイドンはCGにより登場します。DVDのジャケットでは左下になんとなく目と鼻と口が見えます。

 以下、俳優たちのギリシア神話をお楽しみください。はまり役、イメージが壊れた役(笑)、いろいろですが…
オデュッセウス
「貞淑の象徴」ペネロペイア
「英雄の母」アンティクレイア
「英雄の息子」テレマコス
ヘルメス
アテナ
海神ポセイドン
風の神アイオロス
魔女キルケー
カリュプソ
ギリシア軍総大将アガメムノン
その弟、メネラオス
ギリシアの英雄アキレウス
トロイアの英雄ヘクトル
キュクロプス
木馬
 この映画には二人の名優が出演しています。一人は、この手の役を演じたら右に出る者はいない、もしくはそのままメイクなんかしなくても通用しそうなクリスト・ファー・リー。そしてチャールズ・チャップリンの(4番目の奥様)娘のジェラルディン・チャップリンが光っています。
預言者テイレシアース
乳母エウリュクレイア

 

オデュッセウス
◆アーマンド・アサンテ
ペネロペイア
◆グレタ・スカッキ
アンティクレイア
◆イレーネ・パパス
アテナ
◆イザベラ・ロッセリーニ
エウリュクレイア
◆ジェラルディン・チャプリン
テレイシアース
◆クリスト・ファー・リー
テレマコス
◆アラン・ステンソン
ヘルメス
◆フレディ・ダグラス
キルケ
◆バーナデット・ピーターズ
カリュプソ
◆ヴァネッサ・ウィリアムズ
アキレウス
◆リチャード・トゥルット
アガメムノン
◆ヨルゴ・ボヤジス
メネラウス
◆ニコラス・クレイ
   
   

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