星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

Michael Haydn(1737-1806)
 兄は交響曲の父として音楽の教科書には必ず登場するヨーゼフ・ハイドン(1732-1809)。古典期の三大作曲家の一人。今でこそ、知る人ぞ知る存在になってしまった弟ミヒャエルの方が、当時は人気があったというから、歴史というものはわからないものです。とはいえ、現在取り上げられる作品の数は圧倒的に、弟よりも長生きした兄に軍配が上がります。実は私も、あまりミヒャエルの作品を聞くことがないのですが、このヴァイオリンとヴィオラの二重奏だけは別格で、「二梃のための~」シリーズの中では、もっとも聞く機会の多い作品です。

 1783年にザルツブルクのコロレド大司教から依頼を受け、シンプルに二挺の弦楽器(ヴァイオリンとヴィオラ)のみの作曲を開始しました。しかし4曲完成したところで病に臥せってしまい、約束した全6曲までの完成には至らなかったのです。
 たまたまザルツブルクに帰省(大司教と喧嘩して「ウィーンで音楽家になる」と宣言し、生まれ故郷を去っていたが、皮肉なことに妻の出産のために帰郷していた)友人であるウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が救いの手をさしのべ、ミヒャエル宅で、わずか2日でK423とK424を作曲。この6曲からなる『ヴァイオリンとヴィオラのためのデュオ』を完成させました(当初は作曲者の了承の下、全曲ミヒャエル・ハイドンの名で出版しています)。今で言うところのゴーストライターだったわけですね(笑)
 ハイドン(当時ハイドンと言ったらミヒャエル)とモーツァルト、特にモーツァルトは彼の作品をお手本にしていた(レクイエムもミヒャエルの同曲を手本にしている。また、ながらく交響曲第37番と呼ばれていた作品も、実は序奏部分のみモーツァルトの作で、本体はミヒャエル作)ため、この器楽作もハイドン風に作曲したようです。

 

Michael Haydn/Wolfgang Amadeus Mozart
Aechs Duos fur Violine und ViolaSusanne

Susanne Lautenbacher; Violin
Ulrich Koch; Viola


Susanne Lautenbacher; Violin
Ulrich Koch; Viola

   

ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲
(Duos fur Violine und Viola)
-1783-

Michael Haydn
二重奏曲 第1番 ハ長調
I. Allegro / II. Adagio / III. Rondo con spirito

二重奏曲 第2番 ホ長調
I. Allegro moderato/ II. Adagio / III. Tema con Variazioni

二重奏曲 第3番 ヘ長調
I. Allegretto / II. Adagio / III. Rondo - Allegro

二重奏曲 第4番 ト長調
I. Allegro / II. Adagio / III. Allegro non troppo

Wolfgang Amadeus Mozart
二重奏曲 ト長調 K.523
I. Allegro / II. Adagio / III. Rondeau. Allegro

二重奏曲 ロ長調 K.524
I. Adagio - Allegro / II. Andante cantabile / III. Tema con Variazioni

 

 奇妙な制作過程を持ち、シンプルに二挺のみで奏でられるこの作品は、ヴァイオリンとヴィオラという組み合わせの中でも傑作と言われる割に、全曲演奏されることもレコーディングされることも稀です。そのおかげで私も見つけるのに手こずりました(笑)。
 Disk1にはハイドン(62'08")、Disk2にモーツァルト(43'24")の作品がそれぞれ収められています。いずれも肩肘の張らないサロン的な味わいを漂わせた雰囲気を持っています。

 のちのち、モーツァルトは自作をK523/K524をK423/K424として出版しました。なので、ほとんどのレコード会社は、こちらの名称でレコーディング/リリースしています。




Michael Haydn/Wolfgang Amadeus Mozart
Six Duets for Violin and Viola

Barnabas Keleman; Violin
Katalin Kokas; Viola

 

 意外にも、この曲集を探しまくっているときには、なかなか発見できずにいたのですが、2007年になってから新譜として、HUNGAROTONからコンプリートとクレジットされてリリースしてくれました。HUNGAROTONはこの手の器楽作品を比較的多く制作してくれています。

 このアルバムのアーティストはモダン楽器を使っての演奏で、艶やかな演奏を楽しむことができます。上記のLautenabacher & Kochとは異なり、まずはモーツァルトのK423、ミヒャエルの4曲、そしてK424という具合に、モーツァルトの2曲が前後にミヒャエルを挟むような配置です。

 ヴィオラのKatalin Kokasは2002年のブダペスト国際音楽コンクールのヨーゼフ・シゲティ・ヴァイオリン・コンクールにて第1位となった若手注目ヴァイオリニストです。(このときの第2位が小野明子です)。なお、このコンビでバルトークのデュオもレパートリーにしています。お相手のKelemanは“ハンガリーのクレーメル”と異名を持つヴァイオリニストです。

Hungaroton;HCD 32376/77

Barnabas Keleman





Michael Haydn/Wolfgang Amadeus Mozart
Six Duets for Violin and Viola



Werner Hink; Violin
Matthias Hink; Viola

 邦題こそまちまちですが、これもミヒャエル・ハイドンと、彼の依頼でモーツァルトが書いた“ヴァイオリンとヴィオラのための”作品集です。ウィーンフィルの第一コンサート・マスター、ヴェルナー・ヒンクとその息子マティアス・ヒンクによるハイドンとモーツァルトのデュオ。Lautenabacher & Koch盤を手に入れてかたというものの、立て続けに同曲がリリースされ、嬉しいやら、探し回ったあの日々はなんだったのかと複雑な気持ちになりますが、作曲家同士の友情あふれるこれらの楽曲が、様々な演奏者でレコーディングされることには、率直な気持ち、嬉しいです。ヒンク盤はLautenabacher & Koch盤と同様、Disk1にミヒャエル、Disk2にモーツァルトが収められています。

カメラータトウキョウ;CMCD-20091/2



Michael Haydn(1737-1806)

~1730年代生まれの作曲家~
Franz Joseph Haydn(1732-1809)
William Herschel(1738-1822)
 ミヒャエル・ハイドンが活動していた時代の天文学史を覗いてみると、望遠鏡などの技術革新が起こったことが引き金となって、現代天文学を切り開く発見が数多くニュースになりました。特に音楽界と天文学の交差する出来事として、ミヒャエルの1つ年下の作曲家ウィリアム・ハーシェル(1738-1822)が趣味の中で発見した天王星の発見でしょう。

M.ハイドンの活躍していた頃の天文学史・音楽史

M.ハイドンについて
♪参考資料♪
クラシック作曲家辞典(監修:中川原理/フェニックス企画編)
クラシック作曲家大全(監修:ジョン・バロウズ、日本語監修:芳野靖夫/日東書院)
各CDの解説 etc.

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