アバドは、ウィーンフィル(1985~1987)とベルリンフィル(1999~2000)の両雄で全集を作り上げた唯一のアーティストです(その後に続くのはサイモン・ラトル?)。ウィーンフィルの全集なら、バーンスタイン、イッセルシュット。ベルリンフィルならカラヤンと言ったところでしょうか。 最初の全集では、序曲がカップリングされ、中には珍しい曲も含まれ、ジャケット(金箔のようなデザインもすごかった)もあって、リリースされるたびに話題になりました。 ウィーンフィルとのレコーディングで最も好きな一枚をあげるとしたら交響曲第6番。好きなメロディということもありますが、なんと言ってもカップリングの序曲が「へぇ、こんな曲あったんだ」と思ったことが大きいかも知れません。合唱団にピアニスト。なんかお得に感じる一枚でした。ウィーンフィルの出だしのストリングスの艶っぽさにも惹かれました。 第九の声楽は… ソプラノ:ガブリエラ・ベニャチコヴァー(Gabriela Beňačková) アルト:マルヤナ・リポヴシェク(Marjana Lipovšek,) テノール:エスタ・ヴィンベルイ(Gösta Winbergh) バリトン:ヘルマン・プライ(Hermann Prey) 合唱:ウィーン国立歌劇場合唱団(Vienna State Opera Chorus) |
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アバドのベルリン・フィルとの全集のウリは、ベーレンライター新校訂版を使ったことのようです。ウィーンとの演奏時は、当時の習慣に従ってブライトコップ版とのこと(この両版の違いは、ネット上で色々と情報が記載されているので、そちらを調べてみてください)。私はあまり楽譜とか、専門的な聞き方をしていないので、新たにレコーディングされて話題になっていればチョイスして、好きな曲を気持ちよく聴くというスタイルなので、どっちが好きとかはあまりなく、その時の体調とかによって左右される程度かも知れません… 唯一好き嫌いで判断するなら、ジャケットでしょうか? 特にベルリン・フィルとのジャケットは、アバド本人のポートレイト(アントン・コービン風)に軍配をあげたいと思います(笑)。ウィーンフィルとはクリムトの絵画が、いかにもクラシック音楽らしい雰囲気と高級感を漂わせくれました。音楽が好きならこっち、アーティストが好きなら… みたいな。かつてのマーラーの交響曲シリーズで見せてくれた「羽」のようなシリーズで、ジャケットを飾って眺めながら聴きたいシリーズではあります。 声楽は… ソプラノ:カリタ・マッティラ(Karita Marjatta Mattila) アルト:ヴィオレッタ・ウルマーナ(Violeta Urmana) テノール:トーマス・モーザー(Thomas Moser) バリトン:トーマス・クヴァストホフ(Thomas Quasthoff,) 合唱:スウェーデン放送合唱団(Radiokören) 合唱:エリック・エリクソン室内合唱団(Eric Ericson Chamber Choir, The) ウィーン・フィルのレコーディングの際は行わなかったピアノ協奏曲。ベルリン・フィルとツアーには親友のマウリツィオ・ポリーニが同行し、もう一つの全集を完成させました(ポリーニにとっては実に三度目の全集ですが、ウィーン・フィルとのレコーディングでは、当時は珍しかったカンタータ「合唱幻想曲」でピアノを弾いていました)。 そう言えばアバドがウィーンを去った後に、音楽監督になったサイモン・ラトルは、アバドの親友であるアルフレート・ブレンデルとピアノ協奏曲の全集をレコーディングしています(フィリップスにて)。 アバドはこの後(2001年2月 ローマ、聖チェチーリア国立音楽院)、もう一度ベートーヴェンを取り上げ全集に仕上げましたが、第九のみは前ベルリンとのレコーディングを使いまわしたとか… |