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ウィンダム・ヒルの場合、ヴォーカル系のアルバムにはアーティストのポートレイトをジャケットにしていますが、マイケル・ヘッジスは、このライヴアルバムの前に『WATCHING MY LIFE GO BY』という全曲ヴォーカルという、当時としては異色の作品をリリースし、続けてこのライヴアルバムをリリースしています。前作は穏やかな表情を浮かべたポートレイトですが、このライヴアルバムは、彼のパフォーマンスがいかなるものかを如実に言い表しています。 それまでのレーベルカラーがアコースティックインストゥルメンタルというイメージに固定されてしまったため、レーベル傘下にオープンエアーという新しいレーベルを誕生させる事で、さらに幅広いジャンルの音楽を扱う方向へと広がっていきました。そこからの第一弾がマイケルの『WATCHING MY LIFE GO BY』だったのです。今回紹介するライヴアルバムは、半数近くにヴォーカルが含まれていますが、本家のレーベルの66番目のアルバムにカウントされています。 さて、マイケル・ヘッジスと言えば超絶技巧派のギタリストの面が大きくクローズアップされていますが、ここではその名に恥じないパフォーマンスを繰り広げています。ここではその貴重な彼のライヴステージを大いに楽しみましょう。 1985年12月、昭和女子大で初めてマイケルのパフォーマンスを目の当たりにしましたが、1曲目の“Silent Anticipations”のボディタッピングでいきなりがつんとやられてしまいました。最前列で見ていた私は「弦が切れる!」「ギターが壊れる!」などと心配で、思わず体をのけぞらせてしまったほどです。いやはや、これまで見たことのないギター奏法。どこかで読みましたが、こうしたアコースティックギターによるステージでは、座って奏でるのが普通らしいのですが、マイケルはフォークシンガーのように立ったまま奏でる珍しいアーティストと紹介されていました。確かに、マイケルの奏法を見れば、黙って座って演奏できるものではありません。また、わざと弦を切ることもパフォーマンスの一部に含まれていて、ポケットに用意していた新しい弦をその場で張り替えて、何ごともなかったかのように演奏を続けます。そういえば同じ1985年に世界規模で行われたLIVE AIDのトリにボブ・ディランがキース・リチャーズ、ロニ・−ウッドを従えて弾き語りをした際、ボブの弦が切れて、ロニーが自分のギターをボブに渡す、といった「ロニーは良いヤツ」という光景が見られましたが、大抵は演奏中に弦が切れたら一大事!マイケルはその当たり、計算づくしで楽しんでいます。 |
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01. All Along The Watchtower (Bob Dylan) |
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02. Because It's There |
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ウィンダム・ヒル・イン・コンサートより | ||||
03. Silent Anticipations 04. Ready Or Not 05. A Love Bizarre (Prince) 06. Breakfast In The Field 07. Rikki's Shuffle 08. Woman Of The World 09. The Double Planet 10.The Funky Avocado 11.Come Together (John Lennon/Paul McCartney) CD Only- |
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マイケルのパフォーマンスは、その楽曲の素晴らしさから耳だけでも充分楽しめる(どうやって演奏しているのか謎は増える一方ですが)アートですが、やはりステージを目にしていただきたいと思います。すでに故人となってしまっているので、残された映像作品は非常に少ないのが残念で仕方ありませんが、幸いにも『ウィンダム・ヒル・イン・コンサート』という作品が映像として残されています。アッカーマンが「これはマジックだ!」と叫んだ理由がこのライヴ映像ではダイレクトに視覚で訴えてきます。機会があれば、ぜひ一度ご覧下さい。最近ではYouTubeでも楽しむことができます(映像は良いとは言えませんが)
WINDHAM HILL IN CONCERT マイケルの映像作品としては、この他に『 SOLACE』があり、ここではベンチに腰掛けて“Aerial Boundaries”を演奏するという珍しい映像を見ることができます。ただしマイケルを始めとする登場アーティストはすべて口パク指パク(というのか?)。こういった音楽にもPVがあるとは知りませんでした。 |
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マイケルのライヴトラックとしては、このライヴアルバムの他に2001年に編まれたベスト盤『BEYOND BOUNDARIES』にも収録されていて、その中には未発表音源として“Aerial Boundaries”と“Ragamuffin”を聴くことができます。(他にも既出の音源を含め全5曲のライヴ音源収録)その他、1999年、友人たちによって日の目を見ることになる『TORCHED』に“Spring Buds”と“Free Swinging Soul”の2曲が収録されています。 |
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SOLACEより「Aerial Boundaries」
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〜Discography〜 *Rabbit Earsより。**Open Airより。 |