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今回紹介するWim Mertensのこのアルバムは、私にとってウィンダム・ヒルのカタログの中に、こうした音楽がリリースされていたことに、非常に驚いてしまったアルバムの一枚なのです。というのも、このレーベルはアコースティックなサウンドを売り(というよりも、アコースティックだけを製作していると思っていた)にしている集団だと「思い込んで」いたからです。
今にして思えば、海の向こうの小さなレコード会社であるウィンダム・ヒルの情報源というのが、日本のレコード会社のフィルターを通してのみ届けられていた時代だったからで、今ならインターネットを使えば、自分で情報を収集できるし、場合によってはミュージシャンと直接コンタクトを取ることさえ可能な時代です。 話がそれてしまいましたが、Wim Mertensのアルバムを最初に手にしたのは、実はこのアルバムではなく『WHISPER ME』(WH1079)の方で、アコースティックとはほど遠い、まさに想像していなかったアンビエントな世界が広がっていて、上記の理由から非常に驚かされた一枚だったのです。 ベルギー出身のWimの創り出す音楽は、同じメロディを繰り返し繰り返し奏でてゆく、いわゆるミニマルミュージックで、この手の音楽は総じて飽きやすいのですが、一度ツボにはまってしまうと抜け出せなくなってしまうという魔力を持っています。 ラストのLireの多重録音のメランコリックなメロディは、パッチワークのようなコラージュとなって響きます。A面で聴くことのできた曲は、一枚づつの絵画的な作品を思わせましたが、(アナログでは18分間)B面すべてを費やしたこの曲は短編映画を観ているかのようです。 A面には5曲配し、オープニングのメロディアスなピアノの響きは、ウィンダム・ヒルそのものといった雰囲気をもっています。そこへシンセサイザーが被さり、静かな雰囲気の絵画の中に身を置いているかのような気分にさせられます(そうした感覚が不思議)。2曲目は2台のハープによるポートレイトで、森の中にひっそりと横たわる静寂の湖面に時々さざなみを立てるアクセントが印象的。4曲目はオーボエのような管楽器が主役となって歌を歌っていますが、バックのピアノが早いパッセージで聴き手の心象を煽り、置き去りにされていくかのような気持ちにさせられます(う〜ん、困った)。続く曲は、前曲の続編とも言えるような曲で、ピアノのパッセージが機関車の蒸気のような音に変わり、どこかへ連れ去られていくような曲。限りなく無機質な音色。この曲も突然止まってしまいます。いわゆるシュトラウスの常動曲のようなタイプなのでしょうか。 |
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