|ウィンダム・ヒルの掲示板|
Photo by Toshiharu Minagawa.
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01. Marias River Breakdown CD Only Bounus Track All composed by Philip Aaberg. |
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アナログジャケットを壁に掛けて眺めながらこのアルバムを聴いています。まるで窓の外に、この風景が広がっているように、枯れ野を吹き抜ける風がピアノの一音一音と重なりながら、やがてそれが音楽なのか風(自然)の音なのかわからなくなってしまいました。例によってアッカーマン夫人だったアン・ロビンソンの仕事。 アーバーグもキャリアの長いアーティストで、ウィンダム・ヒルからソロ・アルバムをリリースする前は、ロック・バンドのキーボード奏者というキャリアを10年近く続けていました。エルヴィン・ビショップ、ピーター・ガブリエル(ジェネシス)、トム・ジョンストン(ドゥービー・ブラザース)などそうそうたるメンツ。そして日本でも南こうせつの「マイ・ハート」といった意外なアーティストの名前を発見することができます。 このアルバムとほぼ同じ時期にリリース(レコーディング)された『PIANO SAMPLER』『A WINTER'S SOLSTICE』にも参加しているあたり、アッカーマンのアーバーグに対する期待度の高さを伺い知ることができるかもしれません。そしてその予感は見事に的中したと言って良いでしょう。 彼の楽曲(ピアノと言い換えても良い)ジャケットから伝わってくるように、アメリカの大地の包容力や温もり暖かさが感じられます。1曲目の響きの中に、最初の数十秒でこの作曲家の個性というものが凝縮されていると言っても言いすぎではありません。同郷のジョージ・ウィンストンも、このデビューアルバムにはコメントを寄せているし(1stプレスでないとクレジットされていない)、積極的にフィルの楽曲をレコードに、コンサートに取り上げています。そして「作曲の面で、もっとも影響を受けた1人」として、アルバムごとにフィルの名前をクレジットしているので、彼からの影響は計り知れないのかもしれません。ジョージのファンにも聴いてもらいたい1枚、というよりピアニストです。 私が最初に聴いたのは『A WINTER'S SOLSTICE』の中の“High Plains”で、このアルバムに収められている曲とはアレンジが異なり、前奏に“もみの木”に似たメロディを奏でて、クリスマスシーズンを予感させます。そのアレンジが絶妙で、シンプルなアレンジの中に、どうしてこんなにも温もりのある映像が想像できるのだろうと、久しぶりに目頭が熱くなるような瞬間でした。そして、このソロ・アルバムにも収録されている“Lou Ann”。1988年にリリースされた『A WINTER'S SOLSTICE II』の“The Gift”が決定打となりました。 アーバーグの3度の来日公演には必ず足を運んでいますが、アンディ・ナレルとジョイントをしたときにお話しをする機会を得ました。実は、その前年にマイケル・ヘッジスと来日し、その際、写真をたくさん撮らせてもらったのです(無許可ですけど)。当時はまだプロモーターなども、写真に対してうるさいことを言って来なかったから、それをいいことにバシバシ撮らせてもらいました。翌年、箱根のリハーサルを終え、芝生の中をスタスタと歩いてくるアーバーグに近づき(リズ・ストーリーの時は向こうから来てくれた) 「実は昨年のステージの写真を撮らせてもらいました」 このアルバムには、アッカーマンが惚れ込んだだけのレーベル初期の音楽が詰まっています。上手く言葉では書き表すことができない自分の拙表現にイライラしてしまいますが、癒しとかヒーリングとかの安っぽいコピーではなく、こういった音楽は言葉で云々言い表すよりも、この素晴らしいジャケットを眺めながら、ただただ心から耳を傾けてもらいたいと思います。 〜Discography〜 |
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