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NIGHT DREAM -2011-

Produced by Marika Takeuchi.
Mixing, Mastering Engineer: Andreas Bjørck.
Recording Engineer: Yuki Ohnishi

All Compositions by Marika Takeuchi.

Marika Takeuchi

 

♪ ♪ ♪

01.Night Photography
Marika Takeuchi; Piano

02.Underwater
Marika Takeuchi ;Piano
Navid Hejazi ; Violin / Yuki Nakajima ; Violin / Maureen Choi ; Violin
Micheal Brooks ; Violin / Eri Itonaga; Viola / Ro Rowan ; Cello

03.Starlight
Marika Takeuchi; Piano

04.Mystic River
Marika Takeuchi ;Piano
Navid Hejazi ; Violin / Yuki Nakajima ; Violin / Maureen Choi ; Violin
Micheal Brooks ; Violin / Eri Itonaga; Viola / Ro Rowan ; Cello

05.Sweet Home
Marika Takeuchi; Piano

06.Night Dream
Marika Takeuchi ;Piano
Navid Hejazi ; Violin / Yuki Nakajima ; Violin / Maureen Choi ; Violin
Micheal Brooks ; Violin / Eri Itonaga; Viola / Ro Rowan ; Cello



 

 2011年に、まだ学生時代にレコーディング、リリースされたアルバム。1stとなる今作(EP)は、星や夜をテーマにしたサウンド・スケッチ。2013年にリリースされた『IMPRESSIONS』をはじめ、どうあっても私の興味をそそる内容ばかりで、しかも曲想が、まさに探している音楽にぴったりというのだから、私にとって、竹内さんとの出会いは嬉しくてしょうがありません(笑)。そして最初に取り上げてくれたテーマが星ということなら、聴かないわけにはいかないのです!

聴いた順番が、2nd、1stとなってしまいましたが、2ndと同じく、曲順がピアノソロ、アンサンブルといった交互に奏でられ、単調になりがちな雰囲気になっていません。しかもストリングスアレンジなども、ご本人が手掛けていて今後も楽しみなコンポーザーであり、アーティスト(ピアノだけに限らない)として目が離せない存在になりそうです。
 1stの1曲目ともなれば、アーティストにとっては名刺代わりのようなもの。アルバム全体の雰囲気を持っている曲と言っても過言ではないでしょう。そして、それを裏切らない曲が次々と登場します。

♪Night Photographyはピアノソロ。星降るようなという言葉がぴったりの小品。

まりかさんの友人であるAntonio Moreno Salmoralの写真に感動して作曲したという楽曲。

夜行性の私にとっては、星のソムリエ的にも、この曲を聴いて思い浮かべるのは「空が明るいにもかかわらず、見上げた場所の空気の透明度が高く、微光星までもが瞬いて星空から語りかけてくれる」といった情景です。

 何度も何度も、そんな夜を経験してきたにもかかわらず、何か物足りなさを感じていたものがありました。そう、天界から流れてくる音楽。まさにこの曲だと思いました。

夜はまだ長いというのに… 
もっと聴いていたいと思うのに… 
ずっと聴いていたいのに… 

わずか2分で終わってしまいます。

♪Underwaterは夜の湖面に映った星空でしょうか?ストリングスなどが加わり、透明度の高い水面に情景が浮かび上がってくるようです。何物にも汚されることのない水の物語。

♪Starlight 星のまたたきを思わせ、思わず私の講座「四季の星座めぐり」のエンディングで使わせていただき、今後も使わせていただくことになりました。: )

 普段、あまり星の輝きとか、夜空の明るさに気を留めていない人たちも、こうした星の輝きを思わせる曲を耳にしたら、きっと昔に見上げたであろう美しい思い出の中の星空を思い起こしてくれると思ったからです。残念がら、都心では、ひとつふたつの電気を消したところで、夜空に大した変化はおこりませんが、私の思いが一人二人と伝わって、もっと多くの人が同じ思いになってくれたなら、竹内さんの奏でるこの曲のように、一人一人の頭上に、星の姿が、ひとつふたつと輝き蘇ってくるでしょう。

♪Mystic River は、ストリングスのメロディがダイナミックな川の流れを思わせ、激しいうねりがユニゾンで奏でられていきます。目を閉じるとその情景が見えてくるようです。実に描写がうまく、指先が画家の筆のようです。

♪Sweet Home 、ピアノソロ。誰にとっても我が家というものが一番落ち着くところだから。そんなホッと一息ついたときの安堵感が漂っているようです。思うに日本の作曲家にはそうしたテーマを書く傾向がなく、西洋人には「家」を文化的(擬人的?)に考える傾向があると思えます。Country Roadの世界観というか… まりかさんは希少な存在と言えるかもしれませんね(笑)
 この曲は2011年3月11日に発生した東日本大震災の直後に、被災者の方々や出身国である日本のことを思って作曲されたそうです。この曲の背景を知っているのと、知らないのとでは受ける印象がだいぶ変わってきます(実は私がそうでした)。きっとこのメロディを聴いて涙を流される方もいらっしゃるのではないでしょうか?


♪Night Dreamはタイトルトラック。これで2、4、6と偶数のピースはピアノとストリングスのハーモニーが奏でられ、最後はエンディングにふさわしいスケールの大きなアレンジが施されています。ずっとこの先も続くような広がりを見せて終わります。アルバムジャケットに映し出された無数の星々のように、リスナーにそれぞれの夢を見せてくれるでしょう。


 すでに2014年秋には3枚目となるニューアルバムをリリースしているので多作なアーティストです。しかも今度のテーマは雨。自慢じゃありませんが、星のソムリエでありながら雨が大好きな私。


Photo by Antonio Moreno Salmoral.

以下MRG Recordingsに掲載されているプロフィールを転載

 日本出身の作曲家、ピアニスト。三歳よりクラシックピアノを始め、その他幼少期にはバイオリンとホルンを演奏。尚美ミュージックカレッジにて作曲を勉強し、在学中からNHK−FMや日本放送、ユニバーサルミュージックなどに楽曲提供。クラシック音楽と映画音楽に強い影響を受けつつ、New Ageやイージーリスニングにも強い関心を示し独自のサウンドを探求し続けている。
 2009年に渡米、バークリー音楽院にて映画音楽作曲を専攻し、これまでにノルウェーの風景写真家TSO Photographyの「The Arctic Light」や貧しい子供達のための教育プログラムHorizonをテーマにした「Horizons: 50 years」、数々のフィルムフェスティバルでベストファンタジー賞を受賞している「Finding Ambrosia」など数々のショートフィルムの作曲を手がけている。
 2011年にはデビューアルバム「Night Dream」をリリースし、同年にリリースしたシングル「The Arctic Light」はこれまでにオーストラリアのCurtain UniversityのTVコマーシャル「Make Tomorrow Better」やノルウェーのオフィシャル観光サイト「Visit Norway」、その他ショートフィルムや広告に多様使用されている。
 2012年にバークリーを首席で卒業した後もボストンに在住し、作曲家、編曲家、ピアニストとして幅広く活動中。去年夏にリリースした2ndアルバムImpressionsは10th Zone Music Reporter music AwardsにてBestNeo-Classical Albumにノミネートされるなど高い評価を受けている。今年2014年11月11日には、ピアノソロから室内楽、中国の伝統楽器二胡を使った斬新なオーケストラ曲まで幅広い作品を収めた最新アルバムRain Storiesをリリースした。」

 


Photo by Antonio Moreno Salmoral.


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 アルバムジャケットと、このレビューに使わせていただきた写真は、Antonio Moreno Salmoral氏の作品です。次作の『IMPRESSIONS』も手掛けた写真家。写真の提供はまりかさんから。まりかさん、ありがとうございました。