ウィンダム・ヒルの掲示板


EXPERIENCES / Ryan Michael Richards -2014-

Produced by Will Ackerman.
Co-Produced, Engineered, Mixed & Mastered
by Tom Eaton at Recorded at Imaginary Road Studio.



Ryan Michael Richards Music. 2014
   

♪ ♪ ♪

01. Her Garden
Ryan Michael Richards ; Guitar / Derrik Jordan : Violin / Tom Eaton : Keyboards

02. Heather Moon
Ryan Michael Richards ; Guitar / Tom Eaton : Piano

03. Pathway to Love
Ryan Michael Richards ; Guitar / Jeff Oster : Flugel Horn, Muted Trumpet

04. Coastline
Ryan Michael Richards ; Guitar Will Ackerman : Guitar / Premik : Lyricon

05. Delightful Mysteries
Ryan Michael Richards ; Guitar

06. On the Way to the Shore
Ryan Michael Richards ; Guitar / Noah Wilding : Vocal Pads / Tom Eaton : Percussion

07. Joyous Days
Ryan Michael Richards ; Guitar
Eugene Friesen : Cello / Jill Haley : English Horn Tom Eaton : Bass

08. Townbank Bay
Ryan Michael Richards ; Guitar / Noah Wilding : Vocal Pads

09. Victorian Love
Ryan Michael Richards ; Guitar / Jill Haley: English Horn

10.Daniella's Dream
Ryan Michael Richards ; Guitar / Tom Eaton : Piano

11. Day of Play
Ryan Michael Richards ; Guitar

 

 アコギの音に、なんの濁りもなく澄んだ音が体全体にしみ込んで来る。イマジナリー・ロードの作品は、どこかのCMじゃないけど、まるで渇いた身体にすうっと、山の岩から沁み出て来る冷たい清水を口に含んだときのように、あの火照った身体の体温が一気に冷やされるような気分にさせてくれる一枚です。特に最近の夏ときたら、単に暑いというだけではなく、蒸し暑いのが特徴で、そんなうっとおしい日を過ごすのには最適です : )

 ライアンにとっては2枚目となるアルバム(正確には2010年にリリースされたのはミニ・アルバム『PATHWAYS TO Love』なので、フルアルバムとしては1stです)ですが、どの曲も親しみやすい佳曲ばかりが揃い、卓越したギターテクニックがぎっしり詰まっていて、あっという間に終わってしまった、という感じでした。
 こんなにも素晴らしい楽曲を作り出すライアンは、幼少の頃学習障害といわれようですが、その際、家族は彼に楽器を使ったリハビリを思いついたようです。そのとき手にしたのがエレキ・ベース! フィラデルフィアにはこんなにも素晴らしいアーティストがいたなんて!

 ギターソロとアンサンブル。おそらくライアンが持ち込んだ楽曲を聴いたウィルが仕掛けたのでしょうが、このアンサンブルの楽器構成も絶妙です。特にウィルが参加している♪Coastlineのリリコン(最初聴いたときはパンフルートだと思った)も、清々しい空気に身体が包み込まれ、ゆっくりと身体の力が抜けていくのが自分でもわかり、頭の中もリラックスしていくのが感じられました。
 ♪ Townbank Bayがマイケル・ヘッジスのデビューアルバムに収録されている♪Two Days Oldに似ているのは、彼へのオマージュかもしれません。こういった曲を聴くと、彼がAlex De Grassi, Will Ackerman, Nick Drake, Eddie Van Halen, Jaco Pastorius, Christian McBrid らの影響を受けたというのもうなずけるのではないでしょうか?

 アルバムの中で唯一、ジャケットに似合った曲と言えば♪Daniella's Dreamぐらいなもので、それ以外の曲は、あたかも澄んだ青空の広がる高原で、時間を気にせず流れて行く白い雲を眺めている気分にしてくれるような、白と青のトーンです。

 いいギターアルバムだなと、素直に感じるのは、左手の弦を押さえたときになるキュキュキュっ、という音がふんだんに聞こえること(苦手な人もいたはず…)。ライアンの楽曲は変拍子が多用され、しかもそれが自然にメロディの中に入ってきているので、 「おおおっ、ここで?」と意表をつかれ、それが心地よかったりするのです。

 
Photo by Toshiharu Minagawa.