星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

エードリアン・ボールトの「惑星」

「惑星」といえばエードリアン・ボールトの名を真っ先に挙げる人は多いのではないでしょうか。私も小学生の時に出会ったレコードが、1967年にレコーディングされたニュー・フィルハーモニア管弦楽団を演奏したエードリアン・ボールトのレコードでした。

 

BBC交響楽団(1945)
 公式初演者エードリアン・ボールトによる最初の録音。ホルストの演奏に比べるとずっしりと重く感じるのは、技術の進歩のおかげでしょう。ノイズもあまり気にならず、それがあった方がかえって楽しいと思えるほどです。音質を求める向きには、もっと最近の録音をお勧めしますが、歴史的、あるいは過去の音を星空に求める私のような人間には、このノイズさえ音楽の一部になるのです。


 

フィルハーモニック・プロムナード・オーケストラ(1954)
 10年前のレコーディングの音と比較すると、この録音の驚異的な音圧やダイナミックレンジの広さには耳を疑ってしまいます。すでに65歳に達していて円熟を増しているとはいえ、レコーディング技術の向上は目を見張るものがあります。当時の音録音もさることながら、現在私たちが手軽に聞くことのできるCDへのコンバート技術もしかり、です。
 このレコーディングの5年後には、「惑星」を一般大衆に知らしめることになるカラヤンとウィーンフィルというパッケージがリリースされることになりますが、こちらのボールトのレコードは、当時デッカと二分していたレーベルで、ボールトはここの看板アーティストでした。なお、ここでの楽団は、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の母体です。


 

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1959)
 ウィーン国立歌劇場管弦楽団というのはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の別名。敢えてこの名称を使ったのには、当時デッカの専属アーティストだったためにやむを得ない理由からです。そして2年後には「伝統のある」ウィーンフィルの名目で、当代きっての大スターによるレコーディングが行われることになります。当時、ステレオが流行りだした頃で、プロデューサーのジョン・カルショウの手腕がいかんなく発揮されたレコードとなり、クラシック音楽を扱ったレコードとしては、時代の追い風もあり好セールスを記録したようです。
 それにしても右から2番目ののジャケットのセンスといったら、いったいなんなんでしょうか? 右側のヒロインの姿って、これでいいのでしょうか? もろ見えちゃってますが。


 

ニュー・フィルハーモニー管弦楽団(1966)
 なんたって自分のお小遣いで初めて買ったレコードでもあるので、思い入れは一番ある演奏です(中央)。この後に録音しているLPO(1978年)よりもずっとずっと名演であると思っています(クラシック音楽って、そういうところあります)。
 特に第4曲目の木星の演奏(第4主題に入る前の -間- が何ともいえない)はこれに勝るものはないといったぐらい。良い演奏には多く語る必要なし。1999年にEMIよりリマスター盤(右)がリリースされましたが、できることならSACD化してほしいと切に願っています。




ニュー・フィルハーモニー管弦楽団(1966)

 2012年12月、待ちに待ったボールト4回目の「惑星」がSACD化されました。どんだけこの音源の音質改善盤を待ち望んだことでしょう! まだリリース前なので視聴レビューはできませんが、すべての音を大切にリマスターしてくれるエソテリックの愛情を、今からひしひしと感じます。同社のリマスタリングのお目にかかるためには、まず、オリジナルとなるマスターテープの状態から選定されていくようですが、この音源が選ばれたということは、当時の状態でテープが残されていたということです。私がこのレコードを最初に聞いたのは、レコーディングされてちょうど10年後。もっと個人的なことを言っちゃうと、私が生まれる1年前にレコーディングされているのです。そんな昔のテープが、よくもまあ、保存状態がよく残ってくれていたものです。

♪追記(2012/12/04)♪
 わくわくしながらSACDプレイヤーにかけて聴きました。火星のイントロからして今まで聴いてきた音源のどの音よりも深い奥行き(SACDらしい)、そして低音の豊かな伸び(これもSACDらしい)に圧倒されます。オリジナルのマスターテープにこれだけの情報が詰まっていたんですね。とてもじゃありませんが、今までのCDには戻ることはできません(笑)。金星のソロ楽器のクリアな音色からは独奏者の息遣いまでが聞き取れそうです。そして海王星での女声コーラスの天上へ舞い上がっていくかのような透き通る浮遊感(ラトル/ベルリンで体感したような感覚)。これはSACDでないと体験できません。
 さて、一点だけ残念なところが。これはボールトの演奏とも販売元のエソテリックとも全く関係のない「解説」に対して。 ホルストの「惑星」を説明するのに、実際の惑星を引っ張り出してくるまでは良かったのですが(実際にホルストの惑星とは関係ない)、天文学の惑星とからめて記述している部分「2004年に冥王星が惑星から降格され」とあります。冥王星は準惑星(Dwarf Planet)、あるいは海王星外縁天体(Trans-Neptunian Objects)と分類されただけで、分類されたにすぎません。この解説者はマスコミが面白おかしく記事にするために使った「降格」という言葉を使っちゃいました。この方は「惑星が上で準惑星が下」といった印象を持っているのかもしれませんが、それは理解&勉強不足です。理解できていないのであれば、そのことには触れないほうがよっぽどいいと思います。音楽の事だけ熱く語ってください。まあ、私も音楽の事良くわかっていないのに好き勝手なこと言っているんですけどね(笑)。


ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1978)

 1967年の録音が私にとってのNo.1。およそ10年ぶりの彼の新録音とあって、どれだけ期待大だった! 残念ながらそれを越える演奏をしてくれませんでした。ただ録音が新しい分スケールが大きくなり、特に木星の第4主題の歌わせ方は、物静かなこの指揮者の性格を考えると後半部の盛り上がり方が信じられないほど興奮させられます。こういうのを作曲者直伝、初演者の強みの貫禄の演奏というのでしょう。自信と誇りと。ロンドン・フィルとは2度目の録音。2002年にEMIよりGREAT RECORDING OF THE CENTURYとしてリマスター盤がリリースされ、2012年にはSACD化となったのは当然と結果と言えましょう。

2012年の暮れにはシングルレイヤー としてリリースされます。


 
 
 
 


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