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天球の音楽

なんと神秘的な言葉でしょうか

遙か昔

ピュタゴラスが提唱した言葉に由来します

大地を巡る天球が動くときに発する音、それが天球の音楽として鳴り響いている



当時の地球は中心に大地があって

その大地を取り囲むようにいくつかの球に覆われている世界を考えていたのです



そして

彼は一日に一回、 頭上に広がる天球が大地の周りで

どうして動き、音を発するのか考えました



彼が最初に思い付いたのは

神に仕える何者かが天球を動かし

そして天球を動かすために銀の鎖で引っ張っている

それが音を発すると考えたのです



やがては頭上に被さっている大空 すなわち大きく重たい天球が動く時に

何層にもなっているそれぞれ惑星天や恒星天が

擦れ合うときに発する音だという考えに辿り着きます



そののちプラトンがこの考えを受け継ぎ

宇宙の構造がどうなっているのか

どうして星々や惑星、月、太陽が動いているのか

どうやったら天球の音楽が鳴り響くのか

各惑星にと恒星天に天球を配置しセイレーンたちを住まわせました

そのセイレーンたちにそれぞれの音階を歌わせたのです



アリストテレスは現実に鳴り響くの音としてはあり得ないと

もっともらしい考え方を導き出したほど

これらの考え方が天文学者であり音楽家でもあったプトレマイオスが受け継ぎ

後の音楽用語になる「ハーモニー」という言葉います


ハーモニーは調和を司る神、ハルモニアが語源

「宇宙の調和」のこと

のちにジャン・フィリップ・ラモー(1683-1764)が

「和声」という意味で用いるようになりました



このピュタゴラスの神秘的な考え方は時を超え

プトレマイオス、アウグスティヌス、ボエティウスが受け継いで

ヨハネス・ケプラー(1571-1630)へと続きます

秩序に満ちた規則的な調和(ハーモニー)を見せる星空の動き

そこから何か聞こえてくると考えるのも不思議なことではないような気がします

ケプラーは当時の作曲家の音楽を参考に楽譜にしているぐらい




天界

青く澄み切った昼間の青空からは

そうした言葉を連想させてくれる情景は見当たりませんが

ひとたび陽も暮れ

ポツポツと星のまたたきが始まる頃

天界というイメージにピッタリの情景が頭上に広がります

すなわち星座の世界

特に中世の頃から描かれ始めたギリシア神話をモチーフとする古星図に

当時の人々は現代人よりも天を身近に感じていました

想像力に羽を伸ばして描かれた英雄や女神や獣たちが

規則正しく星空を横切ってゆくカラクリに様々な思いを育てたでしょう

残念ながら現代社会においては

昼間と見まごうほどの明るさで夜を照らし出す街の灯や喧騒が

そうした天界の音楽を聴く隙を与えてくれなくなってしまいました


たとえば音楽と宇宙を結びつける有名なエピソードとして

ギリシア神話の悲劇にオルフェウスとエウリディケの物語があります

黄泉の国へ行ってしまったエウリディケを求めて

黄泉の国へ下りる竪琴の名手オルフェウス

最後は悲劇の結末を迎えますが

彼の竪琴がゼウスの手によって星空に掛けられて「こと座」になりました

今でも静かな夜になると

こと座の方角から琴を爪弾く音が聞こえてくるそうです

こういったハナシは現実的にはあり得ないことですが

「聞こえる」と思った方が

天との関わりを親密に出きるような気がします

心の耳(目)で聴いたときに聞こえてくる「音」ではないでしょうか

「昔の人は感受性が豊かだった」のです

「天球の音楽」がピュタゴラスだけに聞こえたように


私としては昔の人が

そういった不思議に対するイメージを抱かせずにはおけなかった「心」に興味があります

個人的には科学的な立場で物事や現象を考えるのが好きなので

いわゆる“天使の声”や様々な現象から得られる“天啓”というものは

私の立場からは畑違いになります

他にもオバケやヨーカイの世界も(興味深いですけど)

そういった分野の人たちがその人たちの解釈のみによって成り立つものだと思っています

あまり突っ込んだハナシをすると

このページの本来の意図とはかけ離れていってしまうので止めておきましょう

(なんならコチラのページをどうぞ)

話は変わりますが“直人(ただびと。徒人とも書く)”という言葉があります

「特別な性質や能力を持った神や怪物でもない普通の常人」という意味だそうです

空の色や雲の流れ

風の匂いや星の輝き

皆が寝静まった後に聞こえてくる静寂の音

季節の変化など五感で感じる心を持つこと

僕はそうした現象を常に感じることのできる直人になりたいと思っているのです


こういったページをこさえておいて

こんなことを書くのも何なんですが

天界の音楽というものは実際に音として耳に聞こえるものだとは思っていません

あくまでも想像力と直人であることの問題

ある学者は

作曲者はその天から聞こえてくるメロディを楽譜にして作曲している

と唱えていた本を読んだことがあります
(『宇宙を聴く』茂木一衛)

なかなかおもしろい解釈だと思いました

ナルホドね

そういうことであれば誰しも想像してしまうのが

その曲につけられたタイトルからイメージする曲想ではないでしょうか?

音楽などとうてい作曲できない私にとってタイトルから「どんな感じの」といった

ある程度の想像は生まれます

それがイメージ通りだったとしたら!

これほど嬉しく楽しいことはありません(これだから止められない…)

これからもそういった曲を捜す旅は続くでしょう


そんなイメージを強く抱かせてくれる音楽に、

1985年にウィンダム・ヒルというレーベルからリリースされた

NIGHTNOISE / Billy Oskay & Michael O'Domhnaill】というアルバムがあります

このアルバムは後で紹介しますがオープニングの音が

私にとってはまさにぴったりのイメージでした


前置きが長くなりましたが

ここでは“天球の音楽”という言葉を敢えて使い

天界や星、宇宙をイメージ(題材)できる音楽を独断で判断し紹介をするページです。

 

ヒルデガルド・フォン・ビンゲン

ウィリアム・ハーシェルガリレオ

ハイドンベートーヴェン夜想曲

ヨーゼフ・シュトラウスの天体の音楽ホルストの惑星ドビュッシーの夜の音楽

冨田勲ヴァンゲリス

現代音楽喜多郎と久保田早紀

星、宇宙がテーマの音楽集

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