『コスモス』の音楽(B.G.M.)といえばヴァンゲリス(Vangelis Odyssey Papathanassiou) の曲を思い浮かべる方は多いでしょう。
あるいは「コスモス=ヴァンゲリス」というイメージを持っている方も多いと思います。オープニングのクエイサーが浮かび上がってくるバックで静かに流れ出すピアノ(ベーゼンドルファー)とキーボードのハーモニー。シンセイサイザーものとしては実に有機的であり、かつ宇宙空間の無限の広がりを感じさせる雄大な曲。あたかも番組のために作曲・演奏されたかのような、実に印象的な曲です。仮に番組が他の作曲者(たとえばニール・ドグラース・タイソン版を担当したアラン・シルヴェストリとか)に依頼していたら、もっと違ったイメージの曲になったのではないでしょうか。この番組にこの曲を組み合わせたプロデューサー(音楽コーディネーター)のセンスの良さは、番組を通じで貫かれていると思います。 |
1943年3月29日南ギリシャのボロスで生まれアテネで育った彼は、1968年にデミス・ルソス、ルカス・シデラスとともに伝説的なバンド、アフロディーテス・チャイルドを結成、『666』などの名盤を制作し、ソロへ転向します。ソロになってからのヴァンゲリスは映像との融合が多く、数多くのテレビドキュメンタリーのサウンドトラックを担当します。彼の名前を世界的に知らしめたのは1981年の『炎のランナー(CHARIOTS OF FIRE)』、1982年の『ブレードランナー(BLADERUNNER)』で、日本では1983年の『南極物語』と、1980年に放送された『コスモス』でしょう。 ヴァンゲリスの『天国と地獄(1975)』と『反射率0.39(1976)』の2枚のアルバムは、リリースデータを確認すれば一目のはずなのに、一部では『コスモス』のサウンドトラックという紹介をしています。しかし、この2枚のアルバムは番組とはまったく関係なく、彼のオリジナルスコアであって、特にオープニング曲に抜擢されたような曲ばかりを目当てに聴いてしまうと、あまりにロック色が強すぎて、このアルバムの真髄を聞き逃してしまうかもしれません(実は私自身がそうでした)。 ヴァンゲリスをはじめとするプログレッシブロックは、この静と動のコントラストが大きいほど面白いと個人的には思います。 |
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『コスモス』では、先の“天国と地獄”以外にもう1曲、実に印象的な曲がありました。それが1976年にリリースされたこのアルバムに収録されている“アルファ”です。曲のメロディーは実に単純なパターンの繰り返しですが、水の雫が撥ねるような音色に番組の視聴者は惹きつけられました。特に私が気に入っていたのは、エピソード9『星の誕生と死』での元素の説明をしているシーンです。曲の透明感、クリスタル感と元素というピュアな感じがバランス良く見せてくれました。 |
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アルバムクレジットにあるように、今回のボックスは1973~1983年にポリドールからリリースされた作品が13枚収められています。しかも、今回初めてマスターテープからのミックスだそうです。今までリリースされていた過去のCDは、ただ単にアナログテープをCD化しただけの薄っぺらな音だったのですが、今回はヴァンゲリスが所有しているマスターを利用しているとのこと。収録タイトルは以下の通り。 | ||||||||||||||||||||
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最後に、ヴァンゲリスと宇宙のかかわりのあるエピソードを。1995年にスミソニアン天体物理観測所の国際天文連合小惑星センターが彼の栄誉を称えて小惑星にVangelisと名付けました。また、2001年にオーケストラ・アルバム『MYTHODEA
』が、NASAの火星探検プロジェクト(2001マーズ・オデッセイ)のための音楽としてリリースされました。また、これを記念してギリシアのアクロポリスで行われたコンサートは、ヴァンゲリス初のコンサートとして話題になりました。ソリストたちもレコードと同じ顔ぶれ。2003年10月にはNASAより'Public Service Medal'を贈られる。NASAのミッションへの多大なる貢献に対しての受賞。
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