モーツァルトのクラリネット協奏曲K622のところでも同じことを書きましたが、エピソード4では音楽の配置も対照的な構成になっていて、思わずその選曲の妙にうならずにはいられません。ここに紹介するのは全エピソードの中でもショッキングな映像が映し出されたシーンで狂ったような印象を与えてくれたフランツ・リストの「死の舞踏」。まるで地上の地獄を見るかのように、公害や戦争により環境破壊された映像が映し出されます。

 人間達よ、他に住む世界など何処にもないのに、なぜ自らの居場所を汚して何になるのだ !! 待っているのは荒廃のみ。
「死に神」が猛り狂う様を思わせるこの曲と映像は見事というしかありません。見ている者を追い詰める効果が抜群です。

怒りの日、その日は
ダビデとシビラの預言のとおり
世界が灰燼に帰す日です。
審判者があらわれて
すべてが厳しく裁かれるとき
その恐ろしさはどれほどでしょうか。

 ピアノの旋律が力強く「怒りの日(ディエス・イレ)のメロディを奏でていますが、実はこの旋律の作曲はリストではなく、もっと古い時代に歌われていました。グレゴリオ聖歌の中にその旋律を聴くことができます。リストや、その先生に当たるベルリオーズが幻想交響曲の中で用いた頃から、この旋律が「死」を象徴するようになってしまいました。

せっかくなのでこの「怒りの日」のメロディが登場する主な曲をリストアップしてみましょう。

・幻想交響曲;第5楽章(エクトル・ベルリオーズ)
・死の舞踏(フランツ・リスト)
・交響曲 第3番、死の舞踏 (カミーユ・サン=サーンス)
・交響曲 第2番 (グスタフ・マーラー)
・交響曲第1番、パガニーニの主題による狂詩曲、交響的舞曲、鐘、晩祷(セルゲイ・ラフマニノフ)
・無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番(オーギュスト・イザイ)

 これらのうち、「もろ引用」として有名なのはベルリオーズとリスト。前者は映画『シャイニング』で効果的に使われているので、思い出す方も多いのではないでしょうか? リストはブオナミーコ・ブファルマッコの「死の勝利」(カンポサント教会)からインスピレーションを受けて作曲したと言うことです。

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死の舞踏
 エピソード4【天国と地獄】

 このエピソードの前半ではモーツァルトの天上的に美しいK622が田園的(この世の天上は、やはりそうしたのどかで牧歌的な風景ではないでしょうか)な映像美を見せてくれましたが、エンディングではリストがブファルマッコが1355年に描いた『死の勝利』から書いた曲を使って天国と地獄を描き分けています。

 ストラヴィンスキーの春の祭典に引き続いて、突如怒りの日のメロディが、まさに怒りを露にして登場します。(51m35sごろから

 戦争、開発、公害、貧困、病気などの映像がパラフレーズとなり、死の舞いを踊る姿を表現しています。

破壊をもたらす死神
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ジョルジュ・シフラ/パリ管弦楽団

 
 リスト本人が超絶的なテクニックをもったピアニストだっただけに、その後のピアニストたちに多大な影響を与えました。しかし、それがかえって多くのピアニストたちを萎縮させたことも事実です。
 「死の舞踏のパラフレーズ、怒りの日」としてハンス・フォン・ビューローに捧げられたこの曲を弾くピアニストがあまりいないのですが、ここに紹介するシフラ親子共演によるレコードは貴重な存在といえると思います。しかも「リストの再来」とまで形容されるジョルジュ・シフラが、息子のサポートを受け「リストもこんなんだったんだなぁ」と思わせる打鍵の力強さを聴かせてくれます。

14世紀に流行った「死の舞踏」(ハンス・ホルバイン画)

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