星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

Charles Koechlin(1867-1950)

 フランスの作曲家シャルル・ケクラン(1867-1950)は、天文学者を志していたというエピソードを聞き知って私の目にとまりました(笑)。もしもと思って、彼の作品を調べたところ、夜想曲を結構作曲してくれていました。ここでは、私の手元にあるケクランの夜想曲が収録されているアルバムを紹介します。
 

Charles Koechlin
PIANO WORKS -1992-

cpo 999 054-2


Deborah Richards; Piano

Producer: Peter Schilback
Enginieer: Frauke Schulz

   

陸景と海景 Op.63(Paysage et marines)

半音階の夜想曲 Op.33
(Nocturne chromatique)

古い田舎屋敷 Op.124
(L'ancienne maison de campagne)

 作品63の『陸景と海景』、作品124『古い田舎屋敷』に挟まれるようにして収録されているこの作品33の夜想曲は、オリジナルはハープ。

 

Charles Koechlin
MUSIQUE DE CHAMBRE -2017-

SWR music 19047CD

Deborah Richards; Piano

Producer: Peter Schilback
Enginieer: Frauke Schulz

   





Disk 2
♪2つの夜想曲 Op.32 (1897-1907)
(Deux Nocturnes pour flute, cor et piano)
I. Venise(Andante con moto) / II. Dans la foret(Adagio)

Tatjana Ruhland; Flute
Joachim Bansch; Horn
Yaara Tal; Piano


Disk 3
ファゴット・ソナタ Op.71 (1918-1919)
(Sonate pour basson et piano)
I. Andante moderato / II. Nocturne: presque adagio / III. Final
Eckart-Hunbner; Basson
Inge-Susann Romhild; Piano

ソロ・ホルンのための組曲 Op.185 (1942)
(Suite pour cor anglais seul)
I. Melopee pour s'evader du reel / II. Scherzo: Danse de faunes
III. Plainte Nocturne / IV. Final: LAme libre et fantasque
Lajos Lencses; English Horn



 ケクランの室内楽がまとめて聴けるお徳なボックスセットです。しかも、この7枚組には夜想曲が4曲収録されています。そのうち、フルートとホルン、ピアノのための2つの夜想曲、ファゴット・ソナタ、ホルン組曲の中にそれぞれ夜想曲が紛れ込んでいます(そういうところで見つけられると格別嬉しいものが!)。
  ただケクランの夜想曲や、室内楽、ピアノ曲が全部聞けると言うわけではないのですが、その中には夜想曲的な雰囲気の曲もあったりするので、このボックスごと持ち出して、一晩中掛けておくのもなかなか良いものです。なので個人的にはお気に入りのボックスです。また、全体的にピアノ独奏曲はモンポウに通じる雰囲気を持っていたり、管楽器のソロはプーランク的なエッセンスが詰まっています。

 

 

CHARLES KOECHLIN -2003/2004-

SWR music CD93.106


Radio-Sinfonieorchester Stuttgart
Christine Simonin, Ondes Martenot
Heinz Holliger; Conductor

   


夜想曲「星空の詩」 Op.129
(Vers la Voute etoilee)

ファブリチウス博士 Op.202
(Le Docteur Fabricius)

 


 

 ケクランはピアノや、室内楽のこじんまりとした(私が思う所の本来の夜想曲のスタイル…)以外にも、管弦楽のための夜想曲も作曲しています。しかも単に夜想曲ではなく、タイトルに「星空に向かって」と。日本での邦題は「星空の歌」としているようですが。

  静かな序奏に始って、だんだんと盛り上がりを見せていく。まさに地上から見上げていた好奇心の眼が、科学の力を身につけ、次第に地球を離れ、世界中の天文学者が解き明かし始めた宇宙の奥行きを表現しているようです。ケクランはそうした観測結果など、友人であり、同郷の天文学者、カミーユ・フラマリオン(1842-1925)から聞かされていたのではないでしょうか? 曲想は 大海原と化した星空へと旅立っていくように感じられます。静かな雰囲気は始ってすぐに終わってしまいますが、なにか宇宙へと向かう映画を見ているかのような雰囲気。たとえば未知との遭遇に近いものがあるでしょうか?

 この「星空の詩」は、フラマリオンの思い出に捧げられた管弦楽のための夜想曲なのです。このあたりも私のつぼにしっかりとはまっています。フィールドやショパンのそれとは、私の考えるところの夜想曲と違った意味を持っていますが、ここでは私が求める夜想曲を体現させてくれます。

  ケクランはここで紹介した管弦楽曲のほか、ピアノ、もしくはハープ独奏のOp.32と、フルートとホルン、ハープのためのOp.33と魅力的な夜想曲を残しています。また、彼は(本職の?)作曲家という肩書きのほかに天文学者としての顔を持っていることから、その作品には天文学を思わせるタイトル曲を見つけることができます。
  なお、ケクランはフラマリオンの天文書を読んで星に興味を持った様ですが、このフラマリオンは火星のカナリ(渓谷という意味)を知的生命、つまり火星人が建設した運河であると主張したことで知られています。また、中世の宇宙観としての挿絵として有名な製作を手掛けた人物でもあるのです。
 もう1曲の「ファブリチウス博士」はヨハネス・ケプラーの娘と結婚した天文学者です。この管弦楽曲で使われているオンド・マルトノ(メシアンの「トゥランガリーラ交響曲」が最も有名な曲)という楽器の存在が、強く現代音楽を意識させてくれます。

 

 

 

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