星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

夜想曲(グスタフ・ホルスト)
COMPLETE SOLO PIANO MUSIC / Anthony Goldstone


 ホルストの『惑星』を聴いたことがある人なら 「冥王星を作曲していたら、どんな曲になっていただろう」 という思いに駆られたことがあるのではないでしょうか。 彼の宇宙観は、多くの、特に現代人にからは共感を得ていますが、 初演からステレオによる録音(カラヤン/VPO)がリリースされるまでの期間に限っていえば、 今ほどの人気も無く様々な演奏可能条件から演奏機会に恵まれませんでした。当時のリスナーにとって シェーンベルグらの現代音楽と同じ位置づけだった と言っても言い過ぎではないでしょう。

 ホルストの書いた「夜想曲」も、そうした現代音楽の流れを反映したようなパッセージが至る所に現れ、シンプルなピアノという単色だけによりいっそう際立って聴こえます。しかし、オープニングの音色は 海王星のエンディングにも似て、というよりも太陽系の果てにある第8の天球にいるセイレンの歌声(女声のヴォカリーズ)を表現し、人間の世界とは違う、澄んだ神秘的な歌声で消えていく世界のように、夜想曲のオープニングにちりばめられた音色は、そんな透明感のある汚れを知らぬ星々の瞬きを思わせてくれます。

 もしかしたら、 クラウド・トンボーが冥王星を発見したのと、同じ年(1930)に作曲されたこの夜想曲の雰囲気が、第8曲目に繋がったかも知れない、と考えると 楽しいじゃありませんか。
ただ、そんな神秘的な雰囲気を打ち壊すかのような一撃は なるほど、現代音楽だなと、当時の音楽観が見えて来るようです。

 ホルストのピアノ作品は多くないので、この一枚で収まってしまいます。しかも余白には
ヴォ―ン・ウィリアムズに師事したコンスタント・ランバート(このランバートも天界に興味があったのかバレエ『占星天宮図』という作品を残しています)の作品が収録されています。

 

 この曲にはピアノソロ版とピアノ連弾版のスコアが残されていて、Anthony GoldstoneとYork2がピアノ連弾による演奏。もう一枚のアルバムにピアノソロ版が収録されています(Duncan Honeybourneのピアノ)。 このアルバムではクック(マーラーの交響曲第10番を補筆完成させた研究者ではない)のピアノ作品を中心に ホルストの夜想曲、ヴォーン・ウィリアムズの「小さなピアノの本」の夜想曲などを聴く事が出来ます。 また、ブラスバンドのために作曲した『組曲』の第2曲にも夜想曲が置かれ こちらはロマンティックな香りの漂うセレナーデ風です。

 1984年2月5日にアメリカの天文学者エドワード・ボーエルによって発見された小惑星3590には、グスタフ・ホルストにちなみ「ホルスト」と命名されています。

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