星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

ディオニュソス讃歌 Op.31-2, H116
(Hymn To Dionysus)

リグ・ヴェーダ Op.26
(Choral Hymns from the Rig Veda)

二つの東方絵画 H112
(Two Eastern Pictures)

 


 ホルストが生涯を掛けて追い求めたインドのリグ・ヴェーダは、惑星の解説の中で、ホルストがインドにどれだけ傾倒していたかという話の中で必ず出て来る楽曲です。しかし、惑星同様、編成が一筋縄では行かないために、全曲通して演奏されることがほとんどなく、またレコーディングも一部が偏って取り上げられることはあっても、生演奏同様全曲はこの一枚ぐらいしか現役盤はないようです。このアルバムはホルスト財団の支援によってレコーディングされました。

  カップリングで収まっている2曲も、比較的演奏機会やレコーディングでも登場する曲。ディオニュソスはギリシア神話で酒の神として登場しますが、個人的にはかんむり座のエピソードで活躍しますので、好きな神様です(私は飲みませんけど!)。オープニングの牧歌的な雰囲気は、ギリシア神話のエピソードを連想させるには十分です。そしてこの曲は、彼の代名詞になっている『惑星』の一つ前の作品番号がつけられた曲です。彼には占星術的な影響を惑星に与えましたが、ディオニュソスには神話のエピソードを絵画的に描いてくれているような気がします。なお、ギリシア神話では曲名通りディオニュソスですが、ローマ神話のバッカスのこと。『惑星』をローマ神話名(惑星の英名がローマ神話名だから当然ですが)からとっているので、ディオニュソスもバッカスで良かったんじゃないのかなぁ、と思ったります。



曲の構成は以下の通り


第一群:管弦楽と合唱のための H96
I. 戦いの賛歌(Battle Hymn)
II. 無名の神へ(To the Unknown God)

第二群:女声合唱と管弦楽のための H98
I. ヴァルナへ(To Varuna)
II. アグニへ(To Agni)
III. 葬儀の歌(Funeral Chant)

第三群:女声合唱とハープのための H99
I. 夜明けへの賛歌(Hymn to the Dawn)
II. 水への賛歌(Hymn to the Waters)
III. ヴェーナへの賛歌(Hymn to Vena)
IV. 旅人の賛歌(Hymn of the Travellers)

第四群:男声合唱と管弦楽のための H100
I. ソーマへの賛歌(Hymn to Soma)
II. マナースへの賛歌(Hymn to Manas)

 

 テキストがインドのリグ・ヴェーダという古代インドの聖典から採用しているところから、なんとなくインドっぽい(ビートルズでいうところのジョージ・ハリスンや、ラヴィ・シャンカールみたいな感覚で想像してしまうと全く違います)音楽を想像してしまいますが、インド音楽に影響を受けたのではなく、その精神に影響を受けているので、まったくの西洋音楽(平均律)に成り立って作曲されています。ホルストはこの聖典に影響を受けて、サンスクリッド語を勉強し、この曲に採用した讃歌を自ら翻訳して、それに作曲したのです。

 このアルバムでは曲集の順番通りではなく、第二群の女声合唱と管弦楽から始まり、第一、三、四群と並んでいます。その前に収録されているディオニュソスが管弦楽と女声合唱という編成だからでしょうか? 続けてバリバリの西洋音楽が奏でられ、歌詞がわからないリスナーには普通に平均律の音楽になっています。実はこの曲を初めて手にしたのは、ウィルコックスのアルバムではなく、下で紹介しているカリオプ女声合唱団の2013年の新録がリリースされた一枚でした…

 特にお気に入りは第三郡の女声合唱とハープのための4曲。私もドビュッシー同様女声が好きなので、こうした雰囲気のある曲は、星空を眺めながら傍らに置いたスピーカーから流れているのを聞くと、時の経つのを忘れてしまいます(決して睡魔に教われることはない!)
  そして最後に収録されている「二つの東方絵画」も同じ編成による静かな2曲。わずか3分にも満たない曲ですが、ドビュッシーの「選ばれた乙女」に匹敵するのではないかと思います。

 そういえば 冥王星が太陽系の新しい定義として「惑星」というカテゴリーから「準惑星」になる直前に、こともあろうにホルスト協会の会長であるコリン・マシューズが「冥王星」を作曲し、海王星の後に続けて演奏するよう指示を与えるという暴挙に出ましたが、こうしたホルストの作品を聴くにつけ「続けて演奏」の意味が、いかに意味のないことかということを再確認して欲しいと思います。 と、ここで「冥王星」という作品にケチを付けるつもりはないので、また別の機会に…

二つの東方絵画 H112
(Two Eastern Pictures)

リグ・ヴェイダ Op.26 より
(Choral Hymns from the Rig Veda)

葬送歌と祝婚歌詩 H112
(Two Eastern Pictures)

7つのパート・ソング
(Seven Part-Songs)


レジーヌ・テオドレスコ&カリオプ女声合唱団
ニコラ・ジューヴ, アナイ・ゴードゥマル


 レジーヌ・テオドレスコ率いるカリオプ女声合唱団の一枚は、ネット上では四部全てが収録されているような表記があって、それに騙される結果購入してしまい、そののち、ウィルコックスに至りました(未だにそのサイトは間違えたまま)。
 このアルバムでは女声のみのパートに限ってレコーディングされているので、リグ・ヴェーダは第二群と第三群のみです。しかも編成が小規模で、合唱の伴奏はピアノかハープのみ。よりいっそう神秘的な雰囲気が味わえる好盤です。私はそうした神秘的な雰囲気をホルストに求めていろいろな曲を漁っているので、とても好きな一枚となっています。


 
 

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