星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)


黄道十二宮の音楽
 クラシック音楽を調べる際、いつも手に取る井上和男編の『クラシック音楽作品名辞典』にも名前の記載がない作曲家。そうした作曲家はこのページで紹介するシュミーラー以外にも、星の数ほどいることでしょう。
 星辰や、当時はまだ占星術などに影響されて生活していたかもしれない時代の作曲家が、目に見えるもの、目に見えないものからインスピレーションを受けて作品に描いていたものも、数多く忘れ去られて行ったことでしょう。そんな中、こうしてどこか(図書館だったり、教会だったり、個人宅だったり)で発見されるのを待っているのかもしれません。
トリオ・ソナタ Op.2

Johann Abraham Schmierer
Zodiaci Musici-1698-




Petr Wagner ; Viola da Gamba, Direction
Ensemble Tourbillon


   

組曲 第1番 ヘ長調
(Overture /Entree/Passacaille/Menuet/Ballet/Gigue/Gavotte/Rodeau)
組曲 第2番 ニ短調
(Overture /Allemande/Rondeau/Bouree/Menuet/Gavotte/Gigue/Plainte)
組曲 第3番 ニ長調
(Overture /Entree/Chaconne/Courante/Sarabande/Bouree/Air)
組曲 第4番 ロ短調
(Overture /Allemande/Courante/Sarabande/Bouree/Air/Ballet/Rondeau)
組曲 第5番 変ロ長調
(Overture /Allemande/Chaconne/Bouree/Menuet/Gavotte/Gigue/Rondeau)
組曲 第6番 ト短調
(Overture /Entree/Menuet/Bouree/Melodie/Gavotte/Gigue/Air)

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Petr Wagner ; Viola da Gamba, Direction

Ensemble Tourbillon

Lenka Torgerse ; Violin
Lubica Habart ; Violin
Ivo Anyz; Viola
Hana Flekova; Cello, Viola da Gamba
Marek Spelina; traverso
Petra Ambrosi; Oboe
Ales Ambrosi; Oboe
Tereza Samsoova; Oboe
Premysl Vacek; Guitar
Filip Dvorak; Harpsichord

 この組曲につけられた『ZODIACI』が、作曲家にとってどれほど天球と関わっているのかは不明ですが、出版された当時の天文学、特に博識者の中に限って言えば、それまでのプラトンやアリストテレスの古典的な宇宙ではなく、コペルニクス、ガリレオ、ケプラーらの物理学からのアプローチにより姿を変え、より科学的な姿に変貌しつつある時代でした。しかし、一般庶民の中では占星術がはびこり、身近な所に天球に描かれた星座の影響が色濃く反映されていたのではないでしょうか?
 副題につけられた管弦楽組曲(Orchestral Suites)が、バロック音楽らしい明るさと楽器の調和が、当時の宮廷で繰り広げられた雰囲気を漂わせています。作曲家が、どの程度十二宮の要素を盛り込んだのかはわかりません(組曲のタイトルこそ『十二宮』ですが、それぞれには番号だけが振られているだけにすぎません。そして残念なことに、前半の6曲のみが存在し、後半の6曲が作曲されなかったのか…。作曲の予告はされていたようなので、聴いてみたいものです。


〜以下、レコード・メーカーの解説〜

  歴史の闇に忘れられた作曲家ヨハン・アーブラハム・シュミーラー(Johann Abraham Schmierer, 1661-after1700)。アウクスブルクで生まれ、1680年までアウクスブルク大 聖堂で歌っていたという記述が残っています。その後ディリンゲン大学で哲学を学び、1682年11月1日からザルツブルク大学で法学博士を得て卒業。 1683年にアウクスブルク大聖堂の楽長に立候補するものの叶わず、1697年4月1日からアウクスブルクのフッガー財団の理事長の職に就いています。
 1698年にこの『12宮の音楽』の第1部が出版され、1710年には第2部の出版の予告がされていますが、その後消失しています。第1部は6つの組曲 からなる、4つの弦楽器と通奏低音のための作品。ブーレやシャコンヌのようなフランス風舞曲が含まれています。

 残念ながらシュミーラーはこの作品だ けしか知られていません。「公平な音楽学者や良識ある音楽愛好家には関係ないことだが」と前置きした上で、この企画を出したペトル・ヴァグネルはその理由 を、ドイツ語で三文文士(シュミーラー)という意味をもつ彼の名前によるところではないかと語っています。(キングインターナショナル)





Johann Abraham Schmierer(1661-after1700)

 
〜1660年代生まれの作曲家〜
Francesco Gasparini(1661-1727)
Tomaso Antonio Vitali(1663-1745)
Michele Mascitti(1663/4-1760)
Louis Lully(1664-1734)
Francesco Scarlatti(1666-1741)
Franois Couperin(1668-1733)
Alessandro Marcello(1669-1747)
Francesco Scarlatti(1666-1741)
 
 この時代の音楽はバロックの黎明期から繁栄期。そして天文学の世界では望遠鏡の発達による観測が本格化し、ニュートンらの登場により、万物への力学的解釈が始まるようになってきます。

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