Photo by Toshiharu Minagawa.


WH-1134
A WINTER'S SOLSTICE IV / Windham Hill Artists
Produced by Dawn Atkinson.

01.Carol of the Bells*
02.Silent Night*
03.Crystal Palace
04.Winter Bourne
05.Dona Nobis Pacem*
06.Wexford Carol*
07.Just Before Dawn
08.We Three Kings*
09.Angels We Have Heard on High*
10.Sheep May Safely Graze*
11.Trumpet Tune*
12.Three Candles
13.Rain [From Four Seasons]*
14.Christmas Hymn
15.Asleep the Snow Came Flying
Windham Hill Records, 1993



 1993年にリリースされたこのシリーズの第4作目は、レーベルがBMGの傘下に入ったことも影響してか、レーベルの顔とも言うべきアルバムジャケットに大きな変化がありました。それは大手会社の意向なのかイメージを一新させようと言う意図か、アルバムカヴァー全体に対してタイトルの占める面積が8割を占め、ウィンダム・ヒルらしさを欠き、レーベルとしての雰囲気が全くなくなってしまったことです。個人的には「ただのクリスマス・アルバム風ジャケット」という印象しか受けませんでした。

 しかし、内容は今まで通り、何ら変わらずに安心して耳を傾けることが出きる「冬」をテーマにした素晴らしい作品集に仕上げてくれています。今回も新人やエレクトリカルなサウンドが多いのですが、注目すべきはアンサンブルの多さです。ソロ名義で参加しているアーティストは多いのですが、完全な独演は2曲だけで、2、5、8もソロですが、本人による多重録音のため完全な独演となると、このシリーズ初登場となる最古参アーティストアレックス・デ・グラッシのギターと新人のビリー・チャイルズのジャージーなピアノの2曲だけになります。

今回はでレビューしたコメントに加筆・補正しました。


曲目の*はトラディショナルです。
01. Carol Of The Bells*/ Windham Hill Artists
Liz Story ; Piano / Andy Narell ; Steel Drums / Paul McCandless ; Oboe / Barbara Higbie ; Harp
Philip Aaberg ; Synthesizers / Turtle Island String Quartet / Michael Manring ; Bass
 アーティストが“ウィンダム・ヒル・アーティスト”となっていますが、ここでレコーディングに参加しているのは、(登場順に)バーバラ・ヒグビーのハープ、アンディ・ナレルのスティール・ドラム、リズ・ストーリーのピアノ、マイケル・マンリングのベース、ポール・マッキャンドレスのオーボエ、タートル・アイランド・カルテットの弦楽四重奏、そしてフィリップ・アーバーグのシンセサイザーと、実に豪華な共演を堪能できます。 これらのアーティストたちが、このシリーズの走りとなったジョージ・ウィンストンの『DECEMBER』に収録されている“キャロル・オブ・ベルズ”をそれぞれのスタイルでソロを取りながらレコーディングしてくれました。ファンとしてはソロで聞きたいアーティストばかりで、オープニングから派手に始まるのは良いのですが、フェードアウトして終わってしまうのが、何かもの足りなさを感じてしまいます。 また、レーベルがBMG傘下に入ったことにより、レコード会社がプロモーションビデオを作成しました。そこでは、この曲に参加しているアーティストの演奏シーンを見ることができます。(SOLACEで見ることができます)

02. Silent Night*/ Steve Erquiaga
Steve Erquiaga ; Guitar
 クリスマス・ソングの中でも1、2を争う人気曲賛美歌109番“きよしこの夜”の登場です。吹雪のようなめまぐるしい変化で始まったオープニング曲のあとに、しっとりとしたこのナイロンギターの演奏に耳を傾けていると、身も心も温まるようです。 残念ながらこの曲もフェードアウトして終わります。

03.Crystal Palace / Oystein Sevag
Oystein Sevag ; Keyboards, Computer Programing / Lakki Patey ; Guitar
 『ピアノ・コレクション2』に参加したオイスティン・セヴァーグのエレクトリックなサウンドからは、真っ白な雪というよりも澄んだ水と、凍りつくような空気を連想してしまいます。それは彼の使用している楽器の中にコンピュータとクレジットされているのを目にしてしまったからかもしれません。しかし、ありがちな無機質なサウンドにはなっておらず、非常に有機的な感覚の漂うサウンドに耳を奪われてしまいます。クレジットこそセヴァーグのソロ名義になっていますが、Lakkiの奏でるアコースティックギターの響きがそうさせているのかもしれません。だからこそ、ウィンダム・ヒル・レーベルの一員として参加しているのでしょう。

04. Winter Bourne / Paul McCandless
Paul McCandless ; Whistle, Oboe, English Horn, Synthesizer / Bob Ward ; French Horn / Steve Erquiaga ; Guitar
Richard Schonherz ; Synthesizer / Wilbur kreb ; Bass
 マッキャンドレスのオリジナルで、寒々としたケルト的なホイッスルではじまります。そこへリチャード・ショーンヘルツのキーボード、ウィルバー・ケルブのベースとスティーヴ・アキアーガのナイロン・ギター、ボブ・ワードのフレンチ・ホルンといったウィンダム・ヒルのファミリーが加わりサウンドに厚みと暖かみが増してゆきます。
  この曲もポールのソロ名義になっていますが、このシリーズには、音楽を聴く楽しみの他にもうひとつ、クレジットを見る楽しみがあります。この曲には友人のソロを盛り立てるために、実力者たちがさりげなくサポートをしています。それにしてもレーベルのアーティスト層の厚さには呆れかえるばかりです。

05. Dona Nobis Pacem*/ Michael Manring
Michael Manring ; Bass, Acoustic Bass, Piano
 賛美歌“我らに平和を与えたまえ”をアレンジしているのは、このシリーズではすっかりピアニストとして定着してしまった感のあるフレットレス・ベーシストのマイケル・マンリングです。ここでようやくベースを手にし、自ら弾くピアノとのデュオを披露してくれました。ボンボン時計が冬の訪れを知らせ、チクタクチクタクと冬の足音を連想させるようです。

06. Wexford Carol*/ Nightnoise
Triona Ni Dhomhnaill ; Piano, Accordion, Synthesizer / Micheal O'Dmhnaill ; Guitars, Synthesizer
Brian Dunning ; Flute, Whistle / Johnny Cunningham ; Fiddles
 ブライアンの民謡調の主題に導かれて、ナイトノイズの奏でる世界に浸っているといつ聞いても懐かしさが込み上げてきます。途中のフィドルが歌い出す箇所からの転調は、懐かしい地に足を踏み込んだときの気持ちがリスナーにも伝わってきます。それが辛く厳しい北国であっても。
 3年前にリリースされた『ウィンター・コレクション3』には、まだBilly Oskayがいましたが、今作と『SHADOW OF TIME』からは、名フィヨリディストのJohnny Cunninghamが加わり、よりいっそうアイリッシュ色が強くなってきました。

07. Just Before Dawn / William Ackerman
William Ackerman ; Guitar / Micheal O'Dmhnaill ; Whistle
 私がこのアルバムでもっとも好きな曲。そしてもっともウィンダム・ヒルらしい曲といえる1曲でアッカーマンの登場です。前曲から引き続きナイトノイズのマイケル・オドネルがホイッスルで参加しています。ステージでいえば、グループが去ってマイケルだけ残っているという感じ。あえてギターをアッカーマンに譲り、マイケルはホイッスルでメロディを歌い上げています。(ギターデュオも聴きたかったなぁ)
 何という希望に満ちたメロディでしょうか。タイトル通り、まだ夜の明ける前の薄暮の寒さの中に差し込んでくる一筋の光。まさにそんな情景が目の前に広がってくるような曲です。この両者の共演はこの1曲だけです。

08. We Three Kings*/ Barbara Higbie
Barbara Higbie ; Harp, Piano, Fiddle, Voices, Synthesiizer
 マルチ・アーティストのバーバラ・ヒグビー再登場。賛美歌52番“三人の博士”です。ここでバーバラはハープ、ピアノ、フィドル、キーボード、ヴォーカルという多重録音ながら見事なアンサンブルを聴かせてくれます。

09. Angels We Have Heard On High*/ Darol Anger & Mike Marshall
Darol Anger ; Baritone Violin / Mike Marshall ; Guitar
 次の曲で登場するマンドリン・クワルテットのマイク・マーシャルと、4曲あとに登場するタートル・アイランド・クワルテットのダロール・アンガーによるユニット。ウィンダム・ヒルで二人名義は『CHIAROSCURO 』以来のことになります。曲は賛美歌106番“荒野の果てに”。今回、マイクはマンドリンではなくギターによる伴奏に徹しダロールが冬の風となって駆け抜けてゆきます。

10. Sheep May Safely Graze*/ Modern Mandolin Quartet
Mike Marshall ; Mandolin / Dana Rath; Mandolin / Paul Binkley ; Mandola / John Imholz ; Mandocello
 クリスマスでは定番(?)の作曲家大バッハのカンタータ208番“狩はわが喜び”第9曲「安らかに草を食み」を、弾むようなマンドリンでアレンジしています。今までのバッハにはない演奏ですが、マンドリンカルテットはまるで自分たちの曲であるかのようにオリジナリティ溢れた演奏を繰り広げています。

11. Trumpet Tune* / Alex de Grassi
Alex de Grassi ; Guitar
 ウィンダム・ヒルの最古参アーティストの一人、アレックス・デ・グラッシによる、このアルバム初めての独演です。曲は英国の作曲家ヘンリー・パーセルの『トランペット・チューン』。タイトルにはトランペットとついていますが、実際はチェンバロの曲で、デ・グラッシは教則的な演奏を奏でていますが、よくよく聴いてみると素朴な演奏の中に隠された高度のテクニックには舌を巻いてしまいます。久しぶりの登場に彼らしいソロを聴くことができて、ファンとしては非常にうれしい限りです。同年に『THE WORLD GETTING LOUD』をリリースして元気なところを見せてくれました。

12. Three Candles / Schonherz & Scott
Richard Schonherz ; Keyboards / Peter Scott ; Guitar / Michael Manring ; Bass
 ショーンのキーボードとスコットのギターのコンビに、フレットレス・ベースのマイケル・マンリング(マイケル三度目の登場!)が織りなす透明感のあるサウンドは、アコースティックでアレエレクトリックであれ聴いていて清々しくなります。

13. The Rain From The Four Seasons*/ Turtle Island Stirng Quartet
Darol Anger ; Baritone Violin, Violin / Dave Balakrishnan ; Violin / Danny Seidenberg ; Violia / Mark Summer ; Cello
 ようやく町の煙突に降り積もった雪、冬の訪れ。ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集『四季』の第4曲、冬の第二楽章;ラルゴのメロディがそれを楽しむかのように変奏しながら、パッチワークのように断片的に現れてはクリスマスの情景を楽しむようです。もしかしたらふとっちょの白髭を蓄えたおじさん? リーダーのダロール・アンガーも三度目の登場!

14. Christmas Hymn / Billy Childs
Billy Childs ; Piano
 11曲目ののデ・グラッシのギターに引き続きこのアルバムとしては2曲目の独演です。 リズ・ストーリーのような透明感とジャージーなリズムと独特の間。どこかで聴いたことのあるモチーフを元に静かにクリスマスを歌い上げます。
 ここでピアノ小品を提供してくれたビリー・チャイルズはウィンダム・ヒル・ジャズから5枚のアルバムをリリースしています。この時期にリリースされた『PORTRAIT OF A PLAYER』は、ピアノ、ベース、ドラムスというトリオによる演奏。

15. Asleep The Snow Came Flying / Tim Story
Tim Story ; Synthesizer, Piano / Kimberly Bryden ; Oboe / Martha Reikow ; Cello
 朝起きて一面の銀世界が広がっているのを見みると、なんだか心がウキウキしませんか? 眠っている間に雪は静かに夜の闇から舞い降りて辺りを白一色に染めていたのです。誰にも気づかれることなく朝を迎え、子供たちに気づかれる前の静かなひととき。最初に迎える冬の使者への歓声が始まる前にアルバムは静かに幕を下ろします。
 レーベルの中ではエレクトリック・サウンドの第一人者的な存在のあるティム・ストーリーですが、彼の作品の主役はあくまでも生の器楽。ここでも主役となっているのはティムの弾くピアノ、キムベリー・ブライデンのオーボエ、マーサ・レイコフのチェロのクラシカルな組み合わせのトリオによる室内楽的な香り。

〜Discography〜
A WINTER'S SOLSTICE(1985)
A WINTER'S SOLSTICE Vol. 2 (1988)
A WINTER'S SOLSTICE Vol. 3 (1990)
A WINTER'S SOLSTICE Vol. 4 (1993)
A WINTER'S SOLSTICE Vol. 5 (1995)
A WINTER'S SOLSTICE Vol. 6 (1997)
A WiINTER SOLSTICE REUNION (1998)
A WINTER'S SOLSTICE : SILVER ANNIVERSAY EDITION (2001)