イマジナリー・ロード・スタジオ: ウィンダム・ヒル後のウィリアム・アッカーマン

インタビュアー: ジェフ・ウィルソン

 ウィンダム・ヒル・レーベルの特異性を充分に評価する為に、音楽史をいくらか正しく知る必要がある。
カリフォルニアをベースとしたこのレーベルが大人気を博した1980年代を振り返ってみよう。 この年代ほど音楽や録音が洒落ていて、人工的かつ加工やプロデュースが施されすぎていた時代が あっただろうか。ウィンダム・ヒルの音楽は明らかにそういったものを脱ぎ捨てた自然な響きであり、 アコースティックの楽器ただひとつで奏されることも多かった。この時代に提供された解毒剤のような ものではなかっただろうか。

 ウィンダム・ヒルが傑出していたのはそのサウンドのみが理由ではない。見せかけ抜きのレコーディングは真に才能のあるミュージシャンを必要とした。そうしてウィンダム・ヒルはそれ以前は殆ど無名であったアーティストを発見し世に送り出した。その中には、ジョージ・ウィンストン、アレックス・デ・グラッシ、 シャドウファクス、スコット・コッス、リズ・ストーリー、マーク・アイシャム、そしてマイケル・ヘッジズが含まれる。もちろんのことこのトップ・アーティストのリストの中には、ギタリストであり大工仕事のサイドプロジェクトとしてこのレーベルを作ったウィリアム・アッカーマンがいる。ウィンダム・ヒルの基点は「好きでする仕事」であって、それが何億ドルも生み出したのはほんの偶然だった。とはいってもビジネスサイドで経験することは過酷だ。彼はそこを去ることになる。

 といって彼が音楽から離れたわけではなかった。1993年にアッカーマンはバーモントの山の中に
イマジナリー・ロード・スタジオを建てた。スタジオをフル回転させる為、あらかじめお抱えのアーティストを用意したり、ブループリントを作ったりすることなしに彼はそれを行った。しかし新しいミュージシャン達が現れ始めた。そして彼らの音楽はウィンダム・ヒルのスピリット溢れるものだった。したがってアッカーマンは以前のようなレーベルを経営することにはもはや関心を持っていないとしても、依然音楽産業界において力を発しているのだ。新作のサンプラーCD "THE GATHERING" がそれを確証している。この「ザ・ギャザリング」はイマジナリーロードで成された録音の中から特にセレクトされたもので構成され、単なる試聴の為のものとは違う。それ自体人々に記憶されるべきCDであり、叙情的で色彩に富み官能的なソロ演奏、及び素晴らしいアンサンブルが含まれる。(CD購入をご希望の方、またアッカーマンの最近の仕事について知りたいと思われる方はこちらへ http://imaginaryroadstudios.com/

 

 

 アッカーマンの活動を耳にしたなら "The Absolute Sound(ザ・アブソルート・サウンド)" はぜひとも彼に会わなければならない。私がそれをする機会に恵まれて幸いの至りである。あるアーティスト達はインタビューの読み手を常に意識しながら答えるものだが、アッカーマンは極めて率直だ。休みなく話し、トピックを掘り下げ、かつ情熱的だ。彼は惜しみなくインタビューに答えてくれた。レコーディング過程について答えられていない質問はないのでは、と危惧される読者の方も、このインタビューから益を受けるはずだ。アッカーマンの答えを聞けばわかるように、まだ探求できることは沢山あるのである。他のレコーディングスタジオで行われている過程を彼は熟知しているわけだが、人がどのような方法をとっていようと、彼が自分自身の耳で聴いて行うやり方が変わることはないだろう。


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ジェフ: ウィンダム・ヒルをやめられた時のこと、そしてイマジナリー・ロード・スタジオを始められた時のこと、両方に関心があるのですが。加えて後者は前者とどこが違うのですか。

ウィル: 経営上の観点から言えば主だった違いというのは、「現在私は自分がプロデュースするレコード会社を所有しているのではなく、独立したプロデューサーとしてアーティスト達のために働いている。」ということです。過去十数年の間に私と仕事をした個々のクライアントは、自分自身のレコーディングプロジェクトとして、あるいは彼らのレーベルのためにここで録音しました。ウィンダム・ヒルとの関係の終わりについてはかなり個人的な話になります。初期のウィンダム・ヒルで私が経験したことは実に素晴らしかった。会社はとてつもなく成長し年間700%、1000%の伸びを示していきました。A&Mレコードとの取引を通じ、個人販売元や支店販売元がありました。国内外でプラチナレコード、ゴールドレコードを獲得し、カーネギーホールやモントレー ジャズフェスティバル、ハリウッドボウルへ出演しました。そもそもは私の建設会社「ウィンダムヒル建設」の仕事の傍ら、趣味で始めたレーベルであることを考えると、、これは劇的な急成長であり驚くべきことです。1980年までは私の名刺には「ウィンダム・ヒル建設/レコード/音楽(BMI)」と印刷されていたんですよ。ひとつ残念に思うのは、グラミー賞がニューエイジのジャンルを設けたのはずいぶん後になってからだということです。ジョージ・ウィンストンはまちがいなく沢山のグラミー賞をもらっていたでしょうし、マイケル・ヘッジズも然りす。 おそらく "ウィンター・コレクション(A WINTER’S SOLSTICE)" も他の多くのものと同様もらっていたでしょう。レーベルが企業的になるにつれて私のそこでの経験はだんだんと喜びの少ないものになって行きました。 会社はちょうどいい時に売却されたと思っています。ただ繰り返しになりますが、私が会社を売ったのはファイナンシャルのことが主な動機ではなく、個人的な事が理由です。

ジェフ: ひとつのレーベルの下にレコーディングが行われているのでしたら、あなたが作るタイプの音楽を好むファンにとっては作品をトラッキングするのがより簡単になるのでしょうが。今、あなたのもとで録音されている物は音楽的にあらゆる面でウィンダム・ヒルを彷彿させる物です。とはいっても、これらのレコーディングが多くの異なったレーベルに所属しているという事実はマーケッティングをよりむずかしくさせませんか。どのように広げていらっしゃるのでしょうか。

ウィル: 前提としてはおっしゃるとおりです。わたしはまたレコード産業にあっさりと戻るつもりはないのですが、「人数を増やすことで力を高める」方向性を作る必要性を感じました。どこまで発展するかはわからないのですが、ただ方法を考えあぐねているだけではないのです。最近私は過去何年かの間にプロデュースした21人のアーティストの曲を集めひとつのオムニバスCDにしましたが、(私自身は22番目のアーティストとして入っています。)大変嬉しく思っています。アルバム名は「ザ・ギャザリング」、別題は「ウィンダム・ヒル・レコード創設者ウィル・アッカーマンのプロデュースによる新世代の音楽家達」というもの。とにもかくにも、このオムニバスCDを編集するに当たり見たり聞いたりしているうちに、私の中に初期のウィンダム・ヒルに近い感覚が呼び覚まされました。「ザ・ギャザリング」は私のこれまでの仕事を有形かしてくれましたし、同時にこれらのアーティストを代表して働くよう私に動機付けを与えてもくれました。というのは、彼らのマネージャーになるということを考えると、それは明らかに容易ではないからです。何にしても私たちは皆このひとつのアルバムに集められ、素晴らしいレビューをもらっています。正しい方向に進んで行っている証拠でしょう。これがどこまで進展するかはわかりませんが成るに任せて、私はそれに付き添って手助けできることはするつもりです。"THE GATHERING"に入っているミュージシャンは非常に才能のある注目に値する人たちです。私も一員 としてアルバムに参加できたことを誇りに思っています。

ジェフ: ミュージシャン達自身があなたを探し出し、録音やプロデュースをしてもらっているようですね。どうやってあなたがビジネスをしてることが分かったのでしょうか。

ウィル: 私の名は電話帳にすら載っていません。人々が私にコンタクトし続けて来るのもウィンダム・ヒルが残した功績で注目すべきことです。私が20年前に売却したレーベルが完全に消え去るだろうと想像しているのではありませんが、このレーベルが多くの人にこれほど大きな感動を与えているというのは、予想しなかったことでした。未だに驚くほどの量のeメイルを人々が送ってくれるので感激しています。人生のつらい時期に音楽によって乗り切ることができた、と話してくれます。単なるリラクセイションから宗教的啓示に至るまですべてを話してくれます。最も感動的だったもののひとつですが、ある人が「愛する人がこの世を去る時に望んだことが私たちの音楽を聴くことだった、、」と話してくれたことがあります。地球上の人間が、慰めと生きる意義を人に与えること以上に意味のあることができるでしょうか。私たちがそれをできたことをとても有難いと思います。そして現在素晴らしいミュージシャンと共に私が作り出している音楽がそのレガシーを受け継いでいることを深く信じています。

ジェフ: この記事を読んだミュージシャンであなたにデモテープを送りたい人がいたらどうしたらいいのでしょうか。

ウィル: 電話帳には載っていないんですが、オンラインが使えます。私のウェブサイトhttp://www.williamackerman.com/を通して私にコンタクトすることができます。

ジェフ: 親にお気に入りの子がいるのと似ているかもしれませんが、イマジナリー・ロードで録音したミュージシャンの中で特別際立っていると思われたアーティストはいますか。

ウィル: 上手い類比ですね。でもお気に入りを選ぶことはできないんです。"THE GATHERING"を聴きあなた方自身で決めてください。正直なところ私の考えは何にしても重要ではない。これらのミュージシャンをサポートする人々の意見が大切だということです。

ジェフ: 良い録音をする上で一番大変なことは何でしょうか。

ウィル: 大変だと思ったことは一度もないんです。私はこの仕事を40年近くもやっていて、何を自分は好きなのか、どうやったらそれを達成できるかも知っています。また私は、この地球上のスタジオで私が出会うことのできた最高のエンジニア、トム・イートンと仕事をしています。彼は最近このスタジオにより近いブラトロボロという町に越してきました。トムはウィンダム・ヒルの目録に私より通じていてだんだんと二人で一緒にプロデュースを行うことが多くなってきました。彼の父親のように感じているのではありません。私たちは対等な立場で仕事をしています。私がだんだんとプロデュースの仕事を減らして行った後、彼がこのレガシーを続けて行ってくれたらと願っています。もうじきやめることを示唆しているのではありません。楽しくて仕方ないですから。

ジェフ: 録音するのが最もむずかしい楽器は何ですか。どうしたらその楽器からベストのサウンドを引き出せるのでしょうか。

ウィル: 音をちゃんと録るのに特別にじれったく感じる楽器があるとは思いません。最近再び私はマイクの位置を変えることによって微妙な変化を見出しています。これからしばしば採用することになると思います。当初からウィンダム・ヒルの録音はオーディオマニア的とみなされていました。これは私自身の無知と関係していました。(よく言えば多分純真だったのでしょう。でも無知だったということを否定するわけにいきません。)ギタリストの場合体が楽器と接していて、両耳は楽器の非常に近くにあります。私はその近接した状態をまね、マイクを置いて見ました。ピアノを録音する時も同じ事をしました。 ピアノの内部にマイクを詰め込んだのです。ペダルやダンパーの音、それらすべてを録るんです。そういったことを遠慮なく行いました。ピアノの録音では、低音域を左のスピーカー、右で高音域をを聞き、その動きをレコーディングの中で聴くのが好きなんです。スティーブン・ミラーという私が信頼を置いている素晴らしいエンジニア(彼は数多くの独創性に富むウィンダムヒルミュージックの音作りを技術面で助けました。)はそういったサウンド作りの手助けをしてくれました。ですから近接した録音は私の音作りに大いに関係しているのです。私のミキシングは独特だと思います。追い求めているものを表現する為に私は「サイコ・アコースティック」という言葉を使っています。他の人が同じ言い回しを使っているかどうか知りませんが、この言葉は私に「空想上の部屋の中にミュージシャン達が各々座っている様子」を思い浮かばせるのです。彼らは部屋の前方に座っているのか、後方か、左か右か。この頭脳パズルは少なくとも私のミキシングの方法論の一部になっています。

ジェフ: あなたの録音の多くには楽器一台で奏された曲が多いですね。ちょっと録音の話は横に置いて、、、何がソロ演奏を忘れがたいものにするのか、しないのかを教えてください。

ウィル: 華やかな演奏にはもちろん感心します。でももし完璧な演奏か、感情を揺り動かされる演奏かを選べるとしたら、私はいつでも感情の方を選びます。どうしてそう確信しているのかは分かりません。私は感動するかしないかのどちらかなのです。スタジオにおいては幾度も涙することがありました。人間の魂がそれを表現するという美しい能力を目の当たりに見ることは不思議でもあり誉れでもあります。
私はその瞬間の為に生きているのであって、一緒に仕事をする才能のある人々によってそれをしばしば経験できるのはとても恵まれたことです。

ジェフ: いわば方程式のようなものですが、良いサウンドを得るにはお金がかかりますね。費用がかかりすぎるという理由で妥協しなければならないことはありますか。

ウィル: プロデューサーとして私はすべてのアーティストの強みと弱みを即座に判断する必要があるんです。私自身の音楽を見ても、私はマイケル・ヘッジのような素晴らしく革新的なアーティストではないし、私のいとこアレックス・デ・グラッシのような驚異的なテクニシャンでもない。私がやっていることは痛々しいほどシンプルです。でもそれが成功する為には本当の正確さが必要なんです。イマジナリー・ロードに来るアーティストは各々何かユニークな面を持っている、、、それが何かを私は見つけなければならない。その面に光を当てそうではない部分は多めに見ることが結果として最も成功するのです。一言で言えば勝つ戦いをするわけです。アーティストの時間、エネルギー、インスピレーション、そしてお金を、実を結ばなそうなものを追い求めるために無駄に使ってはいけない。楽曲また演奏の様々な面において、限界はどこなのかを見極めることが、私がまず真っ先にやるべきことなのです。プリ・プロダクション(プロダクション以前の仕事)がなぜそれほど私にとって重要な過程か、ということの理由です。

ジェフ: The Absolute Soundやオーディオマニアの世界一般では、可能な限り実際の音を捉えることが重要とされています。まず第一にアッカーマンさんはこういった美学には賛成ですか。リアリスティックサウンドとはある程度錯覚なのでしょうか。(例:プロデューサーがレコードに加えるリバーブは、サウンドをライブパフォーマンスに近いものにする。)

ウィル: 客観的に見てどうかは分かりませんが私は純粋主義者ではありません。私は自分のレコーディングが私らしくあるのが嬉しいのです。私らしくないのはいやです。私はある時期素晴らしく良い録音をする為互いにマッチしたペアのニューマンマイクロフォンの崇拝者でした。今はそうではない。昨今はスタインウェイに10本のマイクを配置するというひどく変わった方法を使っています。これはオーディオマニアの方々から見たら全くの狂気でしょうし、ザ・アブソルート・サウンドの読者の中には今後私のレコーディングをボイコットする人もいるでしょう。単にオーディオマニアとしての罪を告白した異端児としてね。私はアカデミックなことには全くのところ関心がない。またどのように録音が成されなければいけないかという数学的な先入観についてもです。正直なところレコーディングに関するいくつかの理論上のゴールも全く気にしていません。そういったプラトニックな理想は、いったんマイク、ワイヤー、湿度、電気などの要素が入ってくると到達し得ないものになり苦しめるだけです。私がしたいのは人々を感動させるレコーディングです。医者の仕事のような完璧さを目指しているわけではありません。私は暖かさ、輝いている高音域、制御されしかも体が感じる低音域ほしいのです。私はリスナーがあたかも目に見える空間の中にいるように感じてくれることを望んでいます。(もっとサラウンドミックスをできればと思っています。)以上のことにとても近づいた時に私は自分の仕事をしたと感じるのです。

ジェフ: マイルス・デイビス・クィンテットのあるコンサートで、結果として彼らのマスターピースであるマイファニー・バレンタインができたということがありましたよね。バンド全員気が塞いでいて、グループの誰一人として彼がその夜特別なことをするとは思わなかった。ある人が彼らが演奏したテープを後で流した時、彼らは自分達がすごい音楽を作ったんだと知って驚きました。そういった種類の驚きをスタジオでまたライブ録りで経験されたことはありますか。

ウィル: 少なくとも私はないです。私は自分の本能を信じるべきだということ、そして初めて一緒に仕事をするアーティスト達の信頼を買うことが最初にやるべきことのひとつだ、ということを学んでいます。トムと私はいろいろ工夫して私が聞くものにリアルタイムに決定を下せるようにしています。それが演奏されている間に評価付けをすることを可能にしているのです。この評価付けのおかげで、クリーンでインスパイアーされたマスターを編集するのに十分な素材が全てそろったかどうか、すぐに分かるのです。これは多くの場合、時間とお金の大きな節約となっています。またアーティストを身体的、感情的浪費から守ることにもなります。強い感情を伴う音楽を作るということは、偉大な俳優から優れたものを引き出すのと似てるかもしれない。それは感情の領域の仕事であり、とても疲れるものです。マスターレコードに編集するための材料すべてを取り終わった瞬間にすぐ気づくことで、アーティストにその日一日感情豊かな演奏を続けさせることができます。トムはどんな複雑な楽曲でもたいてい20分で編集してしまう。2~3分でやり遂げてしまうこともあります。もし編集のオリンピックがあったなら彼は出場しているでしょう。

ジェフ: アーティストは誰もある程度自己中心的です。私は小説家ですが、もし私が友達の脚本の編集をやってあげることになったらそれは私自身の執筆の時間を奪うでしょう。「うん、この曲いいね。録音するよ。でも僕すごくギター弾きたいんだ。」と思ったことはありませんか。

ウィル: 一度もないです。何ヶ月間もギターにさわらないことは時々あるんです。全くそれをする必要がない。正直言って私の音楽は、しばらく私が離れて手をつけないでいた方がいいんです。スタジオでしている仕事を私たちは「蟻に割礼を施す」と言っています。細かな作業であり、バランスをとるため私は頻繁にそこから逃げなければならない。私の建築家としての仕事は敷地のいたるところにはっきり見られます。私は木を伐採し、材木を引いて行き、製材し、敷地内のすべての大工仕事を行います。心からそれをしています。もしあなたが私に、もう釘は打てない、森で木を切ることはできないと言ったら、私は人生におけるやりがいのある仕事は残されているのだろうかと決定を下さなければならない。一方、もしあなたが私に、もう音楽を演奏することは一切できないと言ったら、残念だとは思いますが、それは私自身を知覚することや人生の価値に影響は及ぼしません。何か良い音楽を作り、それを沢山の人の為に演奏することに私はとても感謝できるのです。プロデューサーであることをいつも私の仕事だと思っています。そして私自身の音楽は殆ど付随的な、楽しみと見なしています。

ジェフ: 家で音楽をかける時は何を聴かれるのですか。どのような楽器かということではなく、例えばハイレゾ音源のダウンロードや、CD、ビニールなどを聴くかということです。チューブ機器を聴かれるのを好まれますか。モノレコーディングや、78回転盤や8トラック(まさかとは思いますが)など、そういった性質のものはどうですか。

ウィル: 私の家には本当に音楽が少ないとみんな言うんです。もう音楽にうんざりしているというわけではなく毎日本当に集中して音楽を聴いているからです。周りの自然からの音、妻や友人との会話だけで幸せなんです。私はBGMは全く好きではない。私は聴いているか聴いていないかのどちらかです。私の妻はキッチンで働く時音楽をかけますが、きゅうりを切っている私にいい音楽を教えてくれます。がっかりさせたくないのですが、普通の人がやることと全く同じです。私がスタジオ外で聴くものはどんな意味でも全く重要ではないのです。私は「泌尿器科医が家でリラックスする為に何をするか」というネタをジョークにしようとしているんですが何も思いつかない。ポイントは人はずっと一生懸命に聴き続けることはできないということです。別の人になって音楽を楽しむ、そしてしばらくプロデューサーの椅子から降りるというのは健全なことです。

ジェフ: 将来ビニール盤を出される予定はありますか。

ウィル: あります。私のアルバム"RETURNING"はユニバーサルからマスターをもらいました。"RETURNING"は2005年にグラミーを取ったのですが、それ以前に私はすでにそれをビニールで出そうと思っていたのです。新しくプレスした音は素晴らしく大好きです。私は若いリスナーたちが親のLPコレクションを調べているうちに好きな音楽を見出し、LPに入ってくるといいと思います。

ジェフ: ハイレゾダウンロードについてはどうですか。

ウィル: サウンド的には抜群に素晴らしい。だが商売として成り立つのか疑問です。成り立つという価値のある反論が出てくればとても感謝します。

ジェフ: 聴く音楽の嗜好についてのみの話ですが、何かギルティプレジャー(ちょっと罪悪感を感じるタイプの楽しみ)は何かありますか。

ウィル: ポップの良いヒット曲は大好きです。今はLady Antebellumの "Just A Kiss" にはまっていて、"my whole life"という歌詞のところのひとつのコードチェンジがたまらないんです。 
Gotyeの今のヒット曲は好きです。Adeleは名声に値すると思います。私は時勢についていくように
していて、事実多くのヒップホップが好きです。でもラップの支配にはうんざりしています。Coldplay のような普通のバンドはいいと思います。Ray LaMontagne、Florence and The MachineとかMatt Kearneyはらも、素晴らしいミュージシャンです。彼らは私が何度も何度も聴いているアーティストです。Rayの "Gossip in the Grain" は素晴らしくプロデュースされたレコードで希少価値です。そのプロダクション同様Ethan Johnsのレコーディング処置もねたましい。Smokey Robinsonはいつも心に響きます。Sam Cookeは地球上で最高の声を持っていると思います。Gregory Douglassは地上で最も偉大なまだ発見されていない歌手またソングライターです。Iron and Wineも目覚しい。Happy Rhodesは有名になるべきだ。Mark Knopflerはもっと評価されるべきです。Van Morrisonの "Astral Weeks" はどんな音楽においても小さなアンサンブルでどれほどのことができるかを見せてくれ私の人生を変えました。Ennio Morriconeの "The Mission" 以上のサウンドトラックを誰かが書けるとは私は思わない。

ジェフ: マイケル・ヘッジズのスタジオでの話をしてもらうまでには、あなたを行かせるわけにはいきません。彼はステージではユニークだったそうですが、スタジオでもやはりふざけることがあったと考えて間違いないですか。

ウィル: マイケルは私が知っているどの人間よりも生きていました。彼は人生のあらゆる面をいとおしみ、皮肉っぽいユーモアのセンスもあった。でもスタジオでは彼はかなり職人的でした。カリフォルニアの彼のメンドシーノのスタジオで彼と仕事をした時、私は部屋の隅にとても小さなギターが壁に寄りかかっているのを見つけました。取り上げてそれで遊び始めるとマイケルが近づいてきて、私が感じをつかんで弾いているとコメントしました。それは彼がマスターできなかったものだというのです。それ以上の馬鹿げた話を聞いたことがない。マイケルヘッジスがユニークな楽器の可能性を見つけられなかったという概念は信じられない。でも彼はそれを真面目な顔で言ったのです。何ヶ月か後、彼はバーモントの私のところへ来て何日間か滞在しました。彼は新しい "AERIAL BOUNDARIES" を作ることを話し、私たちはまた一緒に仕事をすることでとてもエキサイトしました。彼はボストンからサンフランシスコに戻るフライトに乗るため朝とても早く家を出ました。朝起きた私は、小さなギターケースがキッチンのドアの前に置いてあるのを見つけました。それはもちろん私がメンドシーノで弾いた小さなパーラーギターでした。マイケルは数週間後に亡くなりました。私は今でもそれを弾くと涙が溢れてきます。

翻訳;MASAKO