ウィンダム・ヒルの掲示板


WH-1066
LIVE ON THE DOUBLE PLANET / Michael Hedges
Produced by Michael Hedges.
All songs written by Michael Hedges. except where noted.

01. All Along The Watchtower (Bob Dylan)
02. Because It's There
03. Silent Anticipations
04. Ready Or Not
05. A Love Bizarre (Prince)
06. Breakfast In The Field
07. Rikki's Shuffle
08. Woman Of The World
09. The Double Planet
10.The Funky Avocado
11.Come Together (John Lennon/Paul McCartney)

-CD Only-
12.Two Dasy Old

Windham Hill Records, 1987



 ウィンダム・ヒルの場合、ヴォーカル系のアルバムにはアーティストのポートレイトをジャケットにしていますが、マイケル・ヘッジスは、このライヴアルバムの前に『WATCHING MY LIFE GO BY』という全曲ヴォーカルという、当時としては異色の作品をリリースし、続けてこのライヴアルバムをリリースしています。前作は穏やかな表情を浮かべたポートレイトですが、このライヴアルバムは、彼のパフォーマンスがいかなるものかを如実に言い表しています。
 それまでのレーベルカラーがアコースティックインストゥルメンタルというイメージに固定されてしまったため、レーベル傘下にオープンエアーという新しいレーベルを誕生させる事で、さらに幅広いジャンルの音楽を扱う方向へと広がっていきました。そこからの第一弾がマイケルの『WATCHING MY LIFE GO BY』だったのです。今回紹介するライヴアルバムは、半数近くにヴォーカルが含まれていますが、本家のレーベルの66番目のアルバムにカウントされています。

 さて、マイケル・ヘッジスと言えば超絶技巧派のギタリストの面が大きくクローズアップされていますが、ここではその名に恥じないパフォーマンスを繰り広げています。ここではその貴重な彼のライヴステージを大いに楽しみましょう。
“Rikki's Shuffle”に愛弟子のマイケル・マンリングのフレットレスベースが登場しますが、それ以外は全て単独パフォーマンス。もしかすると、曲によってはレコードよりも音が多い曲もあるかもしれません。ただただ圧巻のパフォーマンスです。
それを体験したリスナーであれば誰もがそのパワーに言葉を失うのではないでしょうか。それは、このアルバムジャケットに記録された写真からも伺えます。アン・アッカーマンがデザインしたこのジャケットこそ、故人となったマイケルの音楽を視覚的に言い表すことのできる決定的な一枚なのかもしれません。

 1985年12月、昭和女子大で初めてマイケルのパフォーマンスを目の当たりにしましたが、1曲目の“Silent Anticipations”のボディタッピングでいきなりがつんとやられてしまいました。最前列で見ていた私は「弦が切れる!」「ギターが壊れる!」などと心配で、思わず体をのけぞらせてしまったほどです。いやはや、これまで見たことのないギター奏法。どこかで読みましたが、こうしたアコースティックギターによるステージでは、座って奏でるのが普通らしいのですが、マイケルはフォークシンガーのように立ったまま奏でる珍しいアーティストと紹介されていました。確かに、マイケルの奏法を見れば、黙って座って演奏できるものではありません。また、わざと弦を切ることもパフォーマンスの一部に含まれていて、ポケットに用意していた新しい弦をその場で張り替えて、何ごともなかったかのように演奏を続けます。そういえば同じ1985年に世界規模で行われたLIVE AIDのトリにボブ・ディランがキース・リチャーズ、ロニ・−ウッドを従えて弾き語りをした際、ボブの弦が切れて、ロニーが自分のギターをボブに渡す、といった「ロニーは良いヤツ」という光景が見られましたが、大抵は演奏中に弦が切れたら一大事!マイケルはその当たり、計算づくしで楽しんでいます。


01. All Along The Watchtower
Michael Hedges ; Acoustic Guitar, Vocal

02. Because It's There
Michael Hedges ; Harp Guitar

03. Silent Anticipations
Michael Hedges ; Acoustic Guitar

04. Ready Or Not
Michael Hedges ; Harp Guitar, Vocal

05. A Love Bizarre
Michael Hedges ; Acoustic Guitar, Vocal

06. Breakfast In The Field
Michael Hedges ; Acoustic Guitar

07. Rikki's Shuffle
Michael Hedges ; Acoustic Guitar / Michael Manring ; Fretless Bass

08. Woman Of The World
Michael Hedges ; Acoustic Guitar, Vocal

09. The Double Planet
Michael Hedges ; Harp Guitar

10.The Funky Avocado
Michael Hedges ; Acoustic Guitar

11.Come Together
Michael Hedges ; Acoustic Guitar, Vocal

12.Two Dasy Old
Michael Hedges ; Harp Guitar



01. All Along The Watchtower (Bob Dylan)
 私がもっとも敬愛するアーティストであるボブ・ディランの1967年の曲で、邦題は「見張り塔からずっと」。『JOHN WESLEY HARDING』の4曲目に収録されています。この曲はジミ・ヘンドリックスのカヴァーが最も有名であり、かつボブがジミのアレンジによる演奏がもっとも好きだと語っているように、現在ボブは“ジミがアレンジした”曲を演奏しているのです。他にもU2が取り上げていますが、マイケル・ヘッジスはアコースティック・ギター一本で挑んでいます。ヴォーカルは非常に優しい声質ですが、ギターパートがマイケル的であり独創的に聞こえてくるのは、さすがアレンジャーとしての卓越した才能ではないでしょうか。『WATCHING MY LIFE GO BY』に収録。

02. Because It's There
 日本のファンにとって非常に誇らしい曲。映画『植村直己物語』の冒頭に登場する曲です。彼のハープギターが、いかにも雪原を犬ぞりが疾走している感じを思わせますが、この曲はこのギター演奏のための実験曲だったのかもしれません。曲の終わり、フェードアウトしながらマイケルの「ハープギター」と言っているのが聞こえます。
 マイケルの演奏しているハープギターは1920年製のもの。このテイクはレーベル30周年記念として編んだ『A QUIET REVOLUTION』にも収録されています

ウィンダム・ヒル・イン・コンサートより

03. Silent Anticipations
 1985年の日本公演ではマイケルの他、ピアノのフィリップ・アーバーグと、ギターのウィリアム・アッカーマンによるジョイントコンサートでしたが、マイケルのステージの1曲目にこの曲を演奏してくれました。ウィルが「これはマジックだ」と言うのも無理はないパフォーマンスをいきなり演ってくれました。私は1stアルバムを聴いていましたが、マイケルのステージを初めて(しかも最前列)体験して
「これがギターなのかっ!」と思ってしまったほどです。思わずのけぞり圧倒されてしまいました。(弦が!弦が!弦が切れてしまう〜) 

04. Ready Or Not
 このアルバムをリリースする直前に、ラビットイヤーという「子供のためのお話」を目的としたレーベルが誕生し、そこからリリースされた中の一枚『SANTABEAR'S FIRST CHRISTMAS』にはハープギターとフルートによる演奏が収められています。ライヴではハープギターを奏でながら歌をうたっているためか、若干もたつくような印象を受けますが、ご愛敬。

05. A Love Bizarre (Prince)
 マイケルの音楽性を一面を表す曲で、オリジナルはシーラE. 歌い始める前に「♪ A, B, ABCD ! Sheila E! 」と叫んでいますが、これは1985年の映画『KRUSH GROOVE』(日本未公開)の挿入曲で、当時はまだプリンスのレヴォリューションに在籍して、パーカッションを叩いていた頃のソロアルバム『ROMANCE 1600』に収録されています。バックボーカル(ほとんどデュエットのように聞こえる)に作曲者のプリンスが歌っていることでも話題を呼び、ビルボードでも11位というヒットを記録しました。マイケルは自分のバックグラウンドとしてボブ・ディランや、ビートルズ、ストーンズを取り上げるほか、ヒットチャートにも目を向けているわけです。 それにしても、まじめに歌っていますが、昭和女子大での日本公演ではプリンスのパートをファルセットで張り上げ、プリンス
の物真似を披露してくれ、私は膝を叩いてウケてしまいました(一緒に行った友人を始め周囲はシーンとしていたのがちょっと寂しい)

06. Breakfast In The Field
 まるで打楽器のようにギターを叩いて音を出しています。レコードでも同様で不思議な音楽です。あたかもチューニングでもしているかのような響き具合を確かめているような。そしてこのタイトル。

07. Rikki's Shuffle
 このアルバムで唯一の登場となる(実際は一緒にロードに出ていました)愛弟子のマイケル・マンリングのフレットレス・ベースとのデュオ。オリジナルはマイケルがマンリングにプレゼントした“Manthing”という曲で、1985年にリリースされたマンリングの『UNUSUAL WEATHER』のラストに収録されています。ベースのメロディラインが優しい曲。それをバックでサポートするヘッジス。まさに二人が血の繋がった兄弟であるかのように、自然にメロディが絡み合い溶け込んでいきます。

08. Woman Of The World
 『WATCHING MY LIFE GO BY』の3曲目に収録されています。スタジオレコーディングではハーモニカを被せて、1960年代のフォークシンガーのように演奏していますが、ここではギターのみによる演奏。優しいヴォーカルは奥様に向けられたのでしょう。彼のささやかなウエディングソング。

09. The Double Planet
 Harp Guitarの低音域が心地よい曲。オリジナルは4曲目の“Ready Or Not”同様『SANTABEAR'S FIRST CHRISTMAS』に収録されています。お話しを聴いたことがあるファンには、この曲のメロディを聴くとサンタベアの姿が浮かんでくるかもしれません。
 マイケルといえば、とかく超絶技巧ばかりが先行していまいがちですが、彼の類い希なメロディメーカーとしての才能があったからこそ、多くのフォロアーが後を追ったのではないでしょうか?

10.The Funky Avocado
 オリジナルのスタジオヴァージョンではマンリングのフレットレス・ベースとの息のあったデュオを聞かせてくれていますが、ここではマイケルがベースのパートも同時に演奏しています(スゲェ)。そして途中に盛り込まれているローリング・ストーンズのディスコの波に合わせてヒットさせた1978年8月にビルボードで1位になった“Miss You”のフレーズを歌い、観客から大いにうけています。

11.Come Together (John Lennon/Paul McCartney)
 マイケルの、というよりもほとんどのミュージシャンにとってビートルズから受けた影響は多大なものだったでしょう。マイケルもそのひとりで、特にステージではアンコールのラストに演奏するのが定番になっている曲。スタジオレコーディングはしていないので、このアルバム、もしくはステージのみで聴くことができる曲です。オリジナルは事実上ビートルズの白鳥の歌となった1969年の傑作『ABBEY ROAD』の1曲目に収録されているジョン・レノンの曲です。ビルボードではジョージ・ハリスンの“Something”と両A面でシングルカットされ1位になっています。1985年の日本公演でもジョイントコンサートのラストで演奏してくれ、曲の途中「♪Come together right now over me !」と歌ったところでウィルがステージ横から(バァ!という感じで)飛び出してきて、フィルと二人でコーラスをつけてくれました。当然私は大喜びで一緒にコーラスを歌わせてもらいました。周辺のお客さんたちはちょっと困惑気味だったのがおかしかった。

CD Only-
12.Two Dasy Old
 スタジオレコーディングでは“Breakfast In The Field”に続いて収録されている曲で、マンリングとのギターとベースの語らいを聴くことができますが、ここではマイケルのパフォーマンスのみ。


 マイケルのパフォーマンスは、その楽曲の素晴らしさから耳だけでも充分楽しめる(どうやって演奏しているのか謎は増える一方ですが)アートですが、やはりステージを目にしていただきたいと思います。すでに故人となってしまっているので、残された映像作品は非常に少ないのが残念で仕方ありませんが、幸いにも『ウィンダム・ヒル・イン・コンサート』という作品が映像として残されています。アッカーマンが「これはマジックだ!」と叫んだ理由がこのライヴ映像ではダイレクトに視覚で訴えてきます。機会があれば、ぜひ一度ご覧下さい。最近ではYouTubeでも楽しむことができます(映像は良いとは言えませんが)

WINDHAM HILL IN CONCERT
THE Impending Death of the Virgin Spirit / William Ackerman
02.Visiting/ William Ackerman
03.The Bricklayer's Beautiful Daughter/ William Ackerman
04.Silent Anticipations / Michael Hedges
05.Woman of the World/ Michael Hedges
06.Because It's There/ Michael Hedges
07.Follow Through/ Michael Hedges
08.Aerial Boundaries/ Michael Hedges
09.Vashon Poem / Scott Cossu
10.The Orangutan Gang / Shadowfax
11.What Goes Around / Shadowfax
12.What Goes Around / Shadowfax
13.New Electic India / Shadowfax
14.Streetnoise / Shadowfax

 マイケルの映像作品としては、この他に『 SOLACE』があり、ここではベンチに腰掛けて“Aerial Boundaries”を演奏するという珍しい映像を見ることができます。ただしマイケルを始めとする登場アーティストはすべて口パク指パク(というのか?)。こういった音楽にもPVがあるとは知りませんでした。

 マイケルのライヴトラックとしては、このライヴアルバムの他に2001年に編まれたベスト盤『BEYOND BOUNDARIES』にも収録されていて、その中には未発表音源として“Aerial Boundaries”と“Ragamuffin”を聴くことができます。(他にも既出の音源を含め全5曲のライヴ音源収録その他、1999年、友人たちによって日の目を見ることになる『TORCHED』に“Spring Buds”と“Free Swinging Soul”の2曲が収録されています。
SOLACEより「Aerial Boundaries」


〜Discography〜
BREAKFAST IN THE FIELD (Windham Hill, 1981)
AERIAL BOUNDARIES (Windham Hill, 1984)
SANTABEAR'S FIRST CHRISTMAS* (Rabbit Ears, 1986)
THE SHAPE OF THE LAND (Windham Hill,1986)
LIVE ON THE DOUBLE PLANET (Windham Hill,1987)
WATCHING MY LIFE GO BY **(Open Air, 1987)
TAPROOT (Windham Hill, 1990)
PRINCESS SCARGO & THE BIRTHDAY PUMPKIN *(Rabbit Ears, 1993)
THE ROAD TO RETURN (Windham Hill, 1994)
ORACLE (Windham Hill, 1996)
TORCHED (Windham Hill, 1999)
BEST OF MICHAEL HEDGES(Windham Hill, 2000)
MICHEL HEDGES : BEYOND BOUNDARIES, GUITAR SOLOS(Windham Hill, 2001)
PATINUM & GOLD COLLECTION(Windham Hill, 2003)

*Rabbit Earsより。**Open Airより。