Photo by Toshiharu Minagawa.


WH1050
CONFERRING WITH THE MOON / William Ackerman
Produced by William Ackerman and Steven Miller.
All composed by William Ackerman.

01. Conferring With The Moon
02. Improv
03. Lago De Montanoas (Mountain Lake)
04. Big Thing In The Sky (For Jess)
05. Climbing In Geometry
06. The Last Day On The Beach
07. Singing Crocodile
08. Processional*
09. Shape Of The Land
10. Garage Planet*
11. Conferring With The Moon (Solo)

Windham Hill Records, 1986

* CD only.



01.Conferring With The Moon
William Ackerman ; Guitar / Chuck Greenberg ; Lyricon / Charles Bisharat ; Violin / Michael Manring ; Bass

02.Improv 2
William Ackerman ; Guitar

03.Lago De Montanoas (Mountain Lake)
William Ackerman ; Charango / Enrique "Quique"Cruz ; Quena, Zampona,m Entara

04.Big Thing In The Sky (For Jess)
William Ackerman ; Guitar / Bob Hubbard ; English Horn

05.Climbing In Geometry
William Ackerman ; Guitar / Charles Bisharat ; Violin / Ira Stein ; Piano / Michael Manring ; Bass

06.The Last Day On The Beach
William Ackerman ; Guitar / Philip Aaberg ; Piano / Eugene Friesen ; Cello

07.Singing Crocodile
William Ackerman ; Guitar

08.Processional
William Ackerman ; Guitar / Chuck Greenberg ; Lyricon

09.Shape Of The Land
William Ackerman ; Guitar / Charles Bisharat ; Violin

10.Garage Planet
William Ackerman ; Guitar / Eugene Friesen ; Cello / Charles Bisharat ; Violin

11.Conferring With The Moon (Solo)
William Ackerman ; Guitar



 邦題『月に向かって』のアナログ盤には英文によるポートレイトが封入されていて、当時のウィンダム・ヒルの勢いというものを感じさせてくれました。ジャケットに使われている幻想的な写真(Dennis G. Olson)の別カットなど、音楽と風景が、お互いにイマジネーションを及ぼし合っているかのような、レーベルが目指したポリシーを見ているようでした。前作『PAST LIGHT』で確立されたアッカーマンのスタイルが、今作では更に押し進められ、再びシャドウファクスのリリコン奏者チャック・グリンバーグとのコラボレーションがそれを物語っているようです。壊れそうなほど美しいメロディラインは第2章の幕開けでしょうか。ちなみに、このアルバムは『THE SHARP OF THE LAND(植村直己物語)』と同じプロダクションのもとでレコーディングされたためか、珍しく同じ音源が収録しています。

 私には、このアルバムは森の梢から降り注ぐ月の光が奏でているように思えます。石川賢治氏の『月光浴』を思わせるようなアルバムジャケットからも想像できるように、ウィルの夜の音楽です。耳を澄ましてみないと聞こえてこないようなささやかな音であり、その音は夜の中に充満しているのです。ドビュッシーがアルフレット・コルトーから賛辞を受けた言葉が、ここでも通用しそうです。すなわち

 “歴史の開闢以来
 大自然をにぎわしている不思議なつぶやきや片言
 しかしこれらは人間に伝える声を持たなかった
 それを初めて歌い上げ
 人間の声に変えたのがドビュッシーであった”

それとも ウィルのノクターン的なアプローチでしょうか。その夜の音を聞きやすくしてくれたのが今回のアルバムでしょうか。

 チャック・グリーンバーグの美しいリリコンはオープニングを飾るアルバムタイトル曲“Conferring With The Moon”と、3度目のリ・レコーディングとなった“Processional ”(植村直己物語と同一テイクであり、CDのみのボーナストラックです)で聴くことができ、このアルバムジャケットを象徴するような音色を奏でてくれています。
 チャックのリリコンという楽器とは対照的に、ワン・テイクで録ってしまったというエピソードが興味深いケーナとの共演“Lago De Montanoas (Mountain Lake) ”は、夜の神秘と畏怖の感情が祈りとなって問いかけてくるようです。ここでウィルはケーナに合わせてチャランゴという南米の民族楽器(形はギターでもアルマジロの甲羅をボディに使っている)を弾いているのが聴きどころでしょうか? 彼のレコーディング中でも異色の作品として仕上がっています。
 ウィンダム・ヒル・メイツとしてマイケル・マンリング、そして(エレクトリック)ヴァイオリンのチャールズ・ビシャラットがもっとも多い4曲で参加しています。そのチャールズ参加の、CDのみのボーナストラックになっている“Garage Planet”では、前作【PAST LIGHT】に収録されている“Synopsis”のような不思議な雰囲気で、チェロのユージン・フリーゼンとトリオで演奏しています。他にピアニストとしてウィルお気に入りのアイラ・スタイン(5)とフィリップ・アーバーグ(6)がそれぞれ1曲ずつ参加して、ストリングス色の強いアルバムに良いアクセントとして響きわたります。
 ウィルのソロは2、7、11の3曲のみ。あとはアンサンブルの形式を取っていますが、どの曲にも共通して言えるのは、アンサンブルにありがちなインプロビゼーションから発展して大げさになっておらず、どこまでも夜の雰囲気を持った穏やかな演奏に終始してリスナーを疲れさせることはありません。そしてエンディングは「再び…」、しかし今度はウィル一人によってオープニング曲を奏でながら月の光の降りそそぐ夜の闇の中へと消えてゆきます。

 多くのファンが、この【月に向かって】をウィルの最高傑作として挙げているように、ウィリアム・アッカーマンというアーティストやウィンダム・ヒルというレーベルを1枚で体験できる素晴らしい内容だと思います。
 アッカーマンは自作曲を何度かレコーディングし直していますが、このアルバムでも過去の曲に手を加えています。そして、2005年に新しいレーベルMary's Treeからリリースされ、グラミーを授賞した『RETURNING』にリ・レコーディングされた“The Last Day On The Beach”を、2006年になってNew Land Musicからリリースされた『WOODSONGS』で再び取り上げています。これは久々のウィルのソロ・アーティストとしてクレジットされ、他のレーベルでレコーディングされた珍しいテイクです。
 なお、アナログ盤とCDには曲数に違いがあって、CDには8と10がボーナストラック扱いで全11曲、アナログ盤にはその2曲が収録されていないので9曲という違いがあります。私はジャケットが素晴らしいので、時々アナログ盤を部屋のインテリアとして飾っています。やはり飾るなら大きい方がいいですね。特にウィンダム・ヒルのアルバムは。

 最後にジャケットに関して。1stプレスではグレー地だったので、月の光に満たされている森の写真も浮き立って見えていましたが、輸入盤のCDから黒地ジャケットに変更されてしまい、せっかくの写真を殺してしまっています。