星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

センス・オブ・ワンダー

 顔を合わせるたびに仕事のグチばかりこぼしている友だちを、少しの間でもいいから、その事を頭の中から追い出してもらおうと思って、無理矢理サイクリングに誘ってみた。雲ひとつない青空の下、MTBで走るにはもってこいのコースを使って、目標にするにはちょうどいい距離にある印旛沼まで行った。

 車なら20分もかからないところだけど、別に時間を気にしているわけではなかったから、青々とした水田に延びる道を気ままに漕いでいった。気にしていたのは風ぐらいで、その風も終始向かい風だったにもかかわらず、僕らは風を切って走ったというのではなく、何だか風の方が僕らの体の中を通り抜けていくような感じだった。友だちはその風が、アシや早苗を揺する葉擦れの音が気に入ったらしく、「歩こう」と言って自転車を降りた。そしてその葉擦れの音を聞きながら歩いていると、「あれなんて鳥?」とか、「あの赤い実、さっきから見かけるよね」とか言って、自分をとりまく環境が気になりだしたらしく、無理に誘った僕は嬉しくなってしまった。
 印旛沼の行き帰りに、どれだけのモンシロチョウに出会ったことか。遠くまで見渡せる水田の中で動くものと言ったら、このモンシロチョウだけだった。花と戯れたり、二匹で戯れあったり、なかには僕にまとわりついてくるチョウもいた。

 ときどき田圃の水路でザリガニ釣りでもしているのか、アミを持った父子の姿を見かけた。そしてどの父子も共通していたのが、アミを手にしているのはおとうさんの方で、腰に手を当てて心配そうにその様子をうかがっていたのが子供の方だったので、何だかおかしくなってしまった。
 社会にでれば不況の世の中と言われ、さまざまな心配事と一緒に生活していかなければならないけど、自然の中では社会の立場も知識も関係なく、誰もが自然のなかで対等に生かされているということに気がつくだろう。そして、少しの遊び心と好奇心のかけらでも残っていれば、その昔、どこかに置き忘れてきてしまった“童心”を拾い上げることができるはずだ。

 
 


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