お風呂から上がって、湯冷めしない程度に窓をちょこっとだけ開けたら、僕の体の湯気がどんどん窓の外に吸い込まれていった。その先を見ると明るい星が二つ並んでいる。「あれ?なんだ、あれ?」あれこれ星をたどっていくと、みなみのうお座のフォーマルハウトだった。秋の夜空では唯一の一等星で、ひとり寂しく南の空に輝いているところから“みなみのひとつぼし”と呼ばれている。今は近くに土星が並んでくれているおかげで、わりかし賑やかだ。
 ところで、土星のような惑星は、星座の中をゆっくりと動いて行くところから“さまよい歩く者(ギリシア語のPlanets)”という意味で名付けられた名前だが、時々こうして星座の形を変えてしまうので、“迷惑な者”にもなる。正体が分かったので窓を閉めた。
 

 日没の西の空に、“宵の明星”金星が輝いている。明るくて大きいから、たびたびU.F.O.と勘違いされることもある。これも“迷惑”な星のひとつだ。その西の空には“はくちょう座”が首から地平線につっこもうとしている。その光景は、クリスマスの日になると、十字架の姿として眼に映る。冬も近い。