ホタル

 毎年毎年、僕は近所の田圃にホタルを見に行く。確か高校2年の時、藤田君とそこで大発生を目撃して以来毎年見に行っている。あの時は僕らが宇宙空間にでも漂っているような錯覚さえ起きたぐらいだから、よっぽどのことだと思う。水田の脇の林や森にもホタルが群がって、まるでクリスマスツリーに飾るイルミネーションのような幻想的な光景だった。

 ただそれ以来、年々ホタルの数が減り、ここ2〜3年では1〜2匹がやっとだった。ただホタルは決まった時間にしか飛び交わないということを知り、今年(って書いたけど、この話は6年前の話)はいつになく早目に見に行った。といっても夜の10時を過ぎていたが…。
 その時は水田の稲の中にホタルの光が見え隠れしている姿が、かなり多く確認できて嬉しくなり、僕は何かの本で読んだ実験をしてみようと思った。その実験とは、車のウインカーを点滅させておくと、その点滅に惹きつけられるようにしてホタルが集まってくるというものだ。
 ウインカーを点滅させて数分後、前後左右のあちこちからホタルが集まりだし、たぶん15〜20匹ぐらいは集まっただろうか。なかには車内に入ってくるものもいれば、フロントガラスやボンネットなんかに乗っているのもいる。みんなこの辺にもまだまだホタルがいることに大喜びだった。今まで僕らがここにやってくる時間は、遊んだあとだったからいつも夜半を過ぎていた。「きっといつも来ていたときはホタルも寝てたんだよー」と、あくびをしながら青木さんが言って大笑いになった。

 僕はいつしか藤田君と見たあの光景が再び見られる日がくるだろうと思わずにいられなかったが、たぶんここにいる友だちも今日の体験でそう思ったに違いない。

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