★★ジョージとキャサリン
毎年この時期、梅雨の中休みに見せる青空を見ると家で飼っていたつがいのセキセイインコのことを思い出す。つがいとは言っても雄と雌だからというだけで同じ小屋に入れてしまったもんだから、先住人だったにもかかわらず気の弱い雄のジョージはあとから入ってきた雌のキャサリンにいつも突っつかれていた。ジョージの顔を見れば「なんでこうなるのぉ」という表情がありありと見えていたが、特に激しい喧嘩をすることも無さそうだったのでそのままにしておいた。するとキャサリンの方はジョージがおとなしいもんだから、我が物顔で小屋を占領し始めたのである。ジョージはますます肩身が狭くなって、いつも小屋の隅っこの方で小さくなっていた。
ある時キャサリンは庭に入ってきたネコに羽をもがれてしまった。黄色い体が真っ赤に染まったその姿に僕は「ダメかな…」と、思わず肩を落としてしまったのだ。病院に連れて行っても、小さい体なので麻酔治療ができないと言われ、荒治療ながら飛び出した方の骨をハサミで根元から切り落とすしか打つ手はなかった。
今まで小屋の中では大きな顔をしていたキャサリンも、ケガをしてしまったあとは小さく見えた。実際ジョージとは反対側の止まり木でじっと痛みをこらえているようだった。そして何よりもつらそうだったのは、片腕になったキャサリンは止まるバランスがうまくいかなくなり、片足で立つことができなくなってしまったのだ。つまり自分の足で頭を“かいかい”することができなくなってしまったのである。
そんなキャサリンの痛々しい姿を見てジョージがおずおずとキャサリンに近づきだしたのは、キャサリンが病院から帰ってまもなくのことだった。今までいじめられていた腹いせを、ケガをしている最中にでも仕返しするのだろうかと見守っていると、なんとジョージはキャサリンの頭を自らのくちばしで“かいかい”しだしたのである。
「おおっ!ジョージ!そんなちっこい脳ミソでも思いやりっていうのがわかるのか!」
そんな風に思った。
片腕になったキャサリンはそれから1 年近く、ジョージの愛に包まれてがんばった。そしてキャサリンが死んだあと、まもなくしてジョージも息を引き取ったのである。まるで生きる目標がなくなったかのように静かにひっそりと。仲良くなってからの歳月は決して長くはなかったけど、ふたりとも幸せだったことだろう。ジョージは今日の梅雨晴れのように真っ青な羽の色をしていた。
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