そして翌年、昨年より早目に行ってみたら、去年と同じアオバズクかどうかわからないけど、奥まったところに留まっているのが見えた。僕が近づいても別にどうすることもなく、身じろぎもせずに気持ちよさそうに木漏れ日の中でウツウツしている。これが感動的な動物物語なら、去年の親かその子で、しかも僕の顔を憶えていてくれて、「別に害を与えるようなヤツじゃないからほっておこう」などとナレーター入りで締めくくれそうだけど、はたして同じ一族がやってきているのか僕には確認できるすべがない。
ただ、この場所に子供を産みに来ているんだから、何らかのつながりはあるんだろう。できることならば、来年もまた会いたい。
アオバズクに会ってから3年目の今年、印旛沼のほとりでアオバズクのなく声を聞いたので「もしや」と思い、いつもの畔田の古木のところまで行ってみた。いくら日暮れの遅いこの時期とはいえ、さすがに20時をまわると夜の帳も降りきり、わずかに月の光が足下を照らし出すだけになっていた。木下に車を止めて古木を仰ぐと、りゅう座のβ星とγ星をバックに一本だけ葉のついていない枝が星空に伸びていて、「いかにもフクロウなんかが好んで止まり木に使いそうだなぁ」と思って見ていると、アオバズクのシルエットがふわりとその枝にやってきた。そして何度も何度も飛び立っては戻りを繰り返している。ここでは何度か彼らと対面をしているけど、いまだかつて、こんなに飛んでいる姿を見たことがなかったので、なんだかとても凛々しく感じた。昼間のウツウツしている姿を思い浮かべると、まるで別人のようだ。
夜の撮影はどうしてもストロボをたかないと撮ることが出来ないが、子育ての真っ最中で迷惑をかけたくないから翌日4時半に起きて、昨日の畔田まで車を走らせた。
15分ぐらいは、あれこれと枝を探し回り、足下でふらふらしていたけど、ようやく中程の枝に止まっているアオバズクの姿を見つけた。黄色いリングが、例によって僕の方をじっと見つめている。僕が見つけるまで、彼はそこからこちらの様子をうかがっていたんだろう。久しぶりの対面だ。僕は思わず「ありがとう」と彼に合図を送った。
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