CONSPIRACY(2000)
/ BILLY SHARWOOD CHRIS SQUIRE
本来ならイエスの『OPEN YOUR EYES』がクリス・スクワイアのソロアルバムになるはずだったものが、長らくお蔵入りとなり、その音源を元にして製作されたのが1997年にリリースされたイエスの『OPEN YOUR EYES』です。そのオリジナルが、こうしてビリー・シャーウッドとのコラボレーションとして日の目を見ることになったのですが、なかなか佳曲揃いです。すでにイエス名義で世に出ている曲だから、耳慣れている、ということもあるかもしれませんが、それらの原石(ラフスケッチ)を聴いているような楽しさがあります。
逆に、ジョンのヴォーカルが加わるだけで、イエスか、イエスじゃないか、雰囲気ががらりと変わってしまうという比較が出来て、ファンなら並べて聴くべきアルバムと言えるのではないでしょうか?
OPEN YOUR EYES(1997)
/ YES
というわけで、クリスのソロアルバムが一転してイエス名義のアルバムになってしまいました。1997年にリリースされたこのアルバムの評価は一様にして低いとか。はたして本当に駄作なのでしょうか?
新たにビリー・シャーウッドという若手ミュージシャンを加え、サウンド的にはトレヴァー・ラビンがいた頃の90125YESを彷彿とさせる作りになっています。しかし1980年代ならそれで良かったかもしれませんが、今さらながらに聴くと単調な楽曲と評価を下されかねないかもしれません。今作でそれを見事に覆してくれたのはスティーヴ・ハウに他ならなりません。
私は、かねてからYESのサウンドのカギを握っているのはスティーヴに違いないと思っていました。特にリック・ウェイクマンとの絡みとなると、もう独特のYES SOUNDが繰り広げられ、これぞYesworldといった唯一無二の世界です。それだけで充分、ジョンの声がなくても大丈夫だと思えるぐらい。
先に私が90125YESを引っ張り出したのは、80年代のYesは完全にトレヴァーがイニシアチブを握り、トレヴァー色に彩られていた、まったく新しいバンドだったからです。それはそれで、今までのYesという伝統の音に刺激を与え、それはリスナーにも伝わりました。まさに新世代のYesmanが造った新世代リスナーに向けての挑戦だったのです。
彼はエレクトリック・ギターとデジタル・ポップを融合させ前面に押し出しました。Yesの音楽の中にあって、これは時代のニーズにも応え、メンバー感にも新鮮な想像力を生み出したに違いないでしょう。しかし受けたからと言って次作も同じ作風になると、周辺の他のバンドと大差なくなってきてしまいます。だからスティーヴのような変幻自在のギタリストの存在が欠かせないのです。
意外だったのは『DRAMA』を最後に脱退したスティーヴが次に選んだ道が、ASIAでのヘヴィなギターサウンドを作りだしたこと。8人編成での大家族の時、スティーヴは実にぎこちなかった(ように思う)。あれがASIAのステージならいざ知らず。
さて、この『OPEN YOUR EYES』は、トレヴァーの抜けたポジションにスティーヴが復帰していますが、新加入のビリーの存在を、私は第二のトレヴァーと捉えていました。オープニングで聞こえてくる、また、随所に見られるヘヴィな(エレキの)音作りはスティーヴらしくないからです。だからスティーヴはすぐに脱退してしまうのでは? と正直不安に思ったものでした。それこそがイエスらしいと言えばイエスらしいのですが、それでなくてもメンバーチェンジの激しいバンドだけに。
ここでは新加入のビリーの存在が目立っています。しかもクリス・スクワイアが後押ししているからなおさらのことでしょう。また、このアルバムの特徴はトレヴァー在籍時のYesの延長線に加え、今までにないコーラスワークが素晴らしいのです。いちおうキーボードとしての新加入だったビリーも歌えると言うことが大きく影響しているに違いありません。そして90125YESと決定的に違うのが、スティーヴのアコギが加わっていることです。90125YESにはなかった世界がここに広がっています。しかし、これぞYesと言うのでしょう。
もうひとつの特徴として、クリス・スクワイアのヴォーカルの占める割合が多い。これは後にリリースされたビリーとのコラヴォレーション『CONSPIRACY』で明らかにされるのですが、元々『OPEN YOUR EYES』のいくつかはクリスのソロ・アルバムのためにレコーディング、作曲された楽曲らしいのです。ジョンとの掛け合いがこれほど聴けるのは、このアルバムだけと言っても良いかもしれません。Open Your Eyesはアルバムタイトルにもなっているだけあって、キャッチーな曲そして白眉はなんといってもスティーヴのアコギ伴奏によるFrom The Balconyでしょう。やはりジョンの声は美しいですよ!
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