英国プログレッシブ・ロック・グループの代表格。1969年デビューから幾多のメンバーチェンジを繰り返していますが、そこで作り出される音楽はイエスの何者でもない、まるでオーケストラのようなバンド。ウィーン・フィルもベルリン・フィルも、シカゴもロンドンも。メンバーはどんどん変わっていきますが、オケの音は変わらず。

 そんなイエスですが、バンドのメンバーでは最も好きだったクリス・皆勤賞・スクワイアが2015年に白血病で死去するというショッキングな出来事がありましたが、とりあえずはイエスのサウンドが好きということもあって、メンバーがどう変わろうと来日のたびに足を運んでいます。
 

個人的イエス・ベスト・アルバム

THE LADDER -1999-
 ともかくこのアルバムは大好きです。イエスサウンドが何かを知り尽くしたメンバーたちが繰り広げる作品集。その後押しをしてくれたのが、このアルバムが遺作となってしまった名プロデューサー、ブルース・フェアバーンの存在を忘れてはならないでしょう。メンバーに向かって「あなたたちはイエスだ」ということを再認識させてくれたそうです。



TALK -1994-
 アマゾンのレビューにも書きましたが、ジョンとトレヴァーのコラボレートが最も完成した形で作曲チームとなり、その結晶がこのアルバムに凝縮しています。『UNION』で、ちょっとギクシャクしたメンバー間のゴタゴタも決着が付き、10年間続いた90125メンバーの白鳥の歌であり最高傑作と言っても過言ではありません。

 

90125 -1983-
 一時は解散したイエスが、トレヴァー・ラビンという若い血を得て復活した作品集で、それまでのアコースティックサウンドとは異なり、時代に合わせてかなりデジタルポップなサウンドに豹変したアルバム。ジョンが加わったことでイエスを名乗ることにしたという曰く付きのアルバムでもあります。それまでシングルヒットとは無縁だったグループですが、“Owener Of A Lonely Heart”がビルボードで1位となり、アルバムセールスもイエス史上最高となりました。2009年に、スティーヴ・ホフマンがリマスターを施したディスクがAudio Fileからリリースされました。

 

DRAMA -1979-
 ジョンとリックが相次いで脱退後、新しくメンバーに迎えられた、後の名プロデューサーとなるトレバー・ホーンとジェフリー・ダウンズの2名が参加した最初で最後のアルバムは、クリス・スクワイアがヴォーカリストとしての存在を前面に出した1枚。私が好きな理由もここにあって、ジョンのハイトーンに似たトレバーとの掛け合う度合いが、今までのイエスでは聴くことができないほど多く、クリス・ファンにはウケがいい一枚。

 

CLOSE TO THE EDGE -1972-

 イエスの、というよりも、時代を代表する一枚と言えるアルバムです。わずか3曲しか収録されていませんが、イエスが創り出す最良のすべてがここに凝縮されています。前作『こわれもの』も名作ですが、メンバーの集中度はコチラが数段上。

 

 日本独自の企画で『YES : HIGH VIBRATION - SACD BOX』というものが2013年にリリースされました。その頃すでにスティーヴ・ウィルソンがキング・クリムゾン、ELPときてYesに照準をあてた5.1chサラウンドのリミックスを手掛けていて、このBOXもSACDという文句にすごく惹かれたのですが、かなり高価なこともあって未だに見送っています。『DRAMA』以降の作品はいまだに非サラウンド化状態なので、ちょっと悩むところです(笑)
 

 



CIRCA (2007)

 プログレはメンバーがくっついたり離れたりを繰り返し、「バンドはオーケストラみたいなもんだ」なんて、リック・ウェイクマンが名言を言ってましたが、一時期イエスマンだったビリー・シャーウッドを中心に結成されたCIRCAのデビューアルバムです。
  ただ、ビリー・シャーウッドのソロに豪華なイエス・メンが協力した、というような感じで、1983年以降の90125イエスを継承しているような音です。ファンとしては、やるなら徹底的にやってほしいところで、メンツから想像すると、もっとアグレッシブな音を期待していただけに、なんか印象に残らないアルバムでしょうか。。。 私も、バックにアラン・ホワイト、トニー・ケイがいなければ手にしていなかったでしょう。Conspyracyでやっていれば、まだ印象も違っていたでしょうに。コーラスワークは、イエス出身が揃っているだけに、「さすが」と思わせてくれますが、ビリーのソロは、ちょっと音程がふらついている感じ。
 嬉しいのは(それほど私はファンじゃないので、なんなんですが)、トニー・ケイのキーボードがかなりフューチャーされている曲があること。こうでなくちゃ、トニーを呼び寄せた意味がないですからね。
 メンバーは、キーボードが元イエスのトニー・ケイ、ドラムスが現イエスのアラン・ホワイト、ギターにジミー・ハーン(いろいろイエスメンと関わりがあって、晴れて桧舞台に)、そしてベースにビリーという布陣です。このメンツ(ビリー関連)にクリス・スクワイアが入っていないのが意外でしたが、クリスの穴(?)をビリーがアグレッシブにこなしています。音はクリスとのコラボレーションConspyracyそのものですが、ソングライターにトレヴァー・ラヴィンが2曲で絡んでいます。

 メジャーリリースではなく自主制作のようです。彼らのオフィシャルサイトにて購入できます。追加料金でメンバーのサインと、宛名書いてもらえます。

Circa オフィシャルサイト



THE UNKNOWN(2003)
/ CONSPIRACY

 Yesからビリー・シャーウッドが脱退してしまいました(あのメンツを見ていると、確かにステージ上ですらいる場所がなさそうに感じます…)。それでも師弟関係のあるクリスとの関係は続いて、コラボの第二段が誕生しました。

 今回は前回のアルバム名がそのままユニット名になったようです。ただ、内容は前回の路線をそのまま引きずった感じでしょうか。ジョンやスティーヴがいないと、ほとんど90125イエスのような音になってしまうという典型かもしれません。

 『OPEN YOUR EYES』の姉妹作でもない今作は日本のレコード会社も見送ったため、発売されていませんが、活発に活動していて、ライヴビデオも制作されていますが、アルバムとしては比較的な地味な作品集でしょうか。タイトルトラックは印象に残りますが、それ以外の曲は単調に聞こえてしまいます。クリスのブイブイうなるベースも抑えられ、クリス・ファンにも物足りないか。ビリーをたてたような作りになっています。ビリーのファン向け。

LIVE(2006)
 動くクリスが見たくて購入しました。暗いスタジオにて、メンバーにスポットを当てただけのような演出です。曲目は『CONSPIRACY』と『THE UNKNOWN』から、そしてクリスの1stソロ『FISH OUT OF WATER』、イエスの『OPEN YOUR EYES』から選曲されています。ライヴ映像57分+インタビューなど。
01.Cocspiracy / 02.Days Of Wonder /
03.Universal Garden / 04.New World /
05.The More We Live /
06.Hold Out Your Hand/You By My Side /07.Confess / 08.Red Light Ahead



CONSPIRACY(2000)
/ BILLY SHARWOOD CHRIS SQUIRE

 本来ならイエスの『OPEN YOUR EYES』がクリス・スクワイアのソロアルバムになるはずだったものが、長らくお蔵入りとなり、その音源を元にして製作されたのが1997年にリリースされたイエスの『OPEN YOUR EYES』です。そのオリジナルが、こうしてビリー・シャーウッドとのコラボレーションとして日の目を見ることになったのですが、なかなか佳曲揃いです。すでにイエス名義で世に出ている曲だから、耳慣れている、ということもあるかもしれませんが、それらの原石(ラフスケッチ)を聴いているような楽しさがあります。
 逆に、ジョンのヴォーカルが加わるだけで、イエスか、イエスじゃないか、雰囲気ががらりと変わってしまうという比較が出来て、ファンなら並べて聴くべきアルバムと言えるのではないでしょうか?








OPEN YOUR EYES(1997)
/ YES

 というわけで、クリスのソロアルバムが一転してイエス名義のアルバムになってしまいました。1997年にリリースされたこのアルバムの評価は一様にして低いとか。はたして本当に駄作なのでしょうか?
 新たにビリー・シャーウッドという若手ミュージシャンを加え、サウンド的にはトレヴァー・ラビンがいた頃の90125YESを彷彿とさせる作りになっています。しかし1980年代ならそれで良かったかもしれませんが、今さらながらに聴くと単調な楽曲と評価を下されかねないかもしれません。今作でそれを見事に覆してくれたのはスティーヴ・ハウに他ならなりません。

 私は、かねてからYESのサウンドのカギを握っているのはスティーヴに違いないと思っていました。特にリック・ウェイクマンとの絡みとなると、もう独特のYES SOUNDが繰り広げられ、これぞYesworldといった唯一無二の世界です。それだけで充分、ジョンの声がなくても大丈夫だと思えるぐらい。

 先に私が90125YESを引っ張り出したのは、80年代のYesは完全にトレヴァーがイニシアチブを握り、トレヴァー色に彩られていた、まったく新しいバンドだったからです。それはそれで、今までのYesという伝統の音に刺激を与え、それはリスナーにも伝わりました。まさに新世代のYesmanが造った新世代リスナーに向けての挑戦だったのです。
 彼はエレクトリック・ギターとデジタル・ポップを融合させ前面に押し出しました。Yesの音楽の中にあって、これは時代のニーズにも応え、メンバー感にも新鮮な想像力を生み出したに違いないでしょう。しかし受けたからと言って次作も同じ作風になると、周辺の他のバンドと大差なくなってきてしまいます。だからスティーヴのような変幻自在のギタリストの存在が欠かせないのです。

 意外だったのは『DRAMA』を最後に脱退したスティーヴが次に選んだ道が、ASIAでのヘヴィなギターサウンドを作りだしたこと。8人編成での大家族の時、スティーヴは実にぎこちなかった(ように思う)。あれがASIAのステージならいざ知らず。

 さて、この『OPEN YOUR EYES』は、トレヴァーの抜けたポジションにスティーヴが復帰していますが、新加入のビリーの存在を、私は第二のトレヴァーと捉えていました。オープニングで聞こえてくる、また、随所に見られるヘヴィな(エレキの)音作りはスティーヴらしくないからです。だからスティーヴはすぐに脱退してしまうのでは? と正直不安に思ったものでした。それこそがイエスらしいと言えばイエスらしいのですが、それでなくてもメンバーチェンジの激しいバンドだけに。

 ここでは新加入のビリーの存在が目立っています。しかもクリス・スクワイアが後押ししているからなおさらのことでしょう。また、このアルバムの特徴はトレヴァー在籍時のYesの延長線に加え、今までにないコーラスワークが素晴らしいのです。いちおうキーボードとしての新加入だったビリーも歌えると言うことが大きく影響しているに違いありません。そして90125YESと決定的に違うのが、スティーヴのアコギが加わっていることです。90125YESにはなかった世界がここに広がっています。しかし、これぞYesと言うのでしょう。
 もうひとつの特徴として、クリス・スクワイアのヴォーカルの占める割合が多い。これは後にリリースされたビリーとのコラヴォレーション『CONSPIRACY』で明らかにされるのですが、元々『OPEN YOUR EYES』のいくつかはクリスのソロ・アルバムのためにレコーディング、作曲された楽曲らしいのです。ジョンとの掛け合いがこれほど聴けるのは、このアルバムだけと言っても良いかもしれません。Open Your Eyesはアルバムタイトルにもなっているだけあって、キャッチーな曲そして白眉はなんといってもスティーヴのアコギ伴奏によるFrom The Balconyでしょう。やはりジョンの声は美しいですよ!