天文台の電話番―国立天文台広報普及室

 星を解説するような本は、「晴れていれば」部屋の窓を開けて確認したり「あれはなんだろう?」というときに、星空の下で開いて見たりと、天文書は実用的な読み方をするケースが圧倒的に多く、そんな中にあって、この本は、天文学者が非常勤として天文台の電話番(星や宇宙に関する質問から、)をこなす職員、といっても天文学者が、広報という立場になって、日本全国から掛かってくる電話のやり取りを、著者の気取らない文体で、面白おかしく描いた、今までにないタイプの星のエッセイです。特に私のお気に入りはマスコミとのやり取り。そのせいか、私は、マスコミの方にぜひこの本をご一読願いたいと思っています。

 この書は、のちにタイトルを『はい、こちら国立天文台―星空の電話相談室天文台の電話番』と改題されて文庫版として出版されました。天文ファンには身近な存在の天文台(ホントか?)。一般の人にとっては雲の上の人々のような存在なのかもしれませんが、ここで繰り広げられる空間は、我が家の茶の間でもあり、あまりにも日常くささを感じさるのは、著者の文体のうまさによるところがあるかもしれません。(ただそれだけでは迷惑な話なんでしょうが)なんとなく電話してみたくなってしまいます。
私もサークルなどの活動の中で、小学校や一般の方たちを招いて観察会をしているから、この本でのやり取りは「あーあるある」などと、膝を叩き、クスクスと笑いながら読むようなケースが多々ありました。しかし、そんな内容ばかりではなく、教育とは何かとか、大人がもっと真剣に考えなければならないようなこととか、「こんなこと聞かれたら、こんな風に答えよー」などと、少なからず私の教科書にもなってくれています。

 天文学とか天文台などというと、一歩引いてしまう方もいるかもしれません。この本はドタバタ、とまではいきませんが、かなりそれに近いエッセイとして天文台の内部(広報)が描かれています。笑いの中にも「へー」という話題も盛りだくさん。今まで持っていたイメージとは違ってくることうけあいです。そして、いつでもどこでも(文庫なら)晴れている必要もなく、曇りや雨が降る日でも季節に関係なく読めるのがこの本の最大の魅力といえるでしょう。

 2005年に文庫化された際、改題されましたが補筆などは加わっていません。巻末に松本零士氏(漫画家、財団法人日本宇宙少年団理事長)の解説が入りました。