オペラは古代ギリシア悲劇を、当時の形で再演しようという試み(ガリレオ・ガリレイの父、ヴィンセンティオがかかわっていて、ここにも音楽と天文学の共通点を見いだせるかもしれません)から芽生ばえ、大掛かりなセットものへと変貌していきました(照明がオイルランプから電気になったことの影響も大きい)。 その頃の作品(脚本)は、新たに作家が作るよりもギリシア神話、ギリシア悲劇などをモチーフとした劇が栄華を極め、オペラとして花開いたのです。 しかし、私にとってのオペラは言葉がわからないから「何言ってんだかわからない」状態に陥るのが常。そして有名なアリアだけをピックアップして聞くような聴き方は、性分に合わないので疎遠になってしまうのも仕方ありませんでした。 かといって、そのアリア1本だけを聴くために、数時間も要するオペラを耐え忍んで耳を傾けるのは苦痛以外の何物でも無いと思ってしまいます。そうはいってもギリシア神話を生きた形で体験できるのは、このオペラをしのぐものはないのではないかと思い始めるようになり、必死になって(クラシック・ソムリエの受験をしたことも大きかったかな?←結局不合格でしたが…)聴きまくり、耐えられるようになりました(笑)。 もともと、ホメロスやヘシオドスといった抒情詩人の語りだったものが、数人による語り継ぎや器楽などを使ってテンポよくパフォーマンスし、それが悲劇、オペラへと続いてきたというのであれば、興味のある題材はやはり雰囲気だけでも見ておきたい、聴いておきたいものですね。 ここでは、数多くのギリシア神話がもとになっているオペラ作品を紹介しています。可能な限り、自分自身でどうにかこうにか(テレビとかビデオとかCDとか)聴くことができた作品を選んでいますが、ゆくゆくは手当たりしだい(笑)。 |
タイトル | 作者 |
ウリッセの祖国への帰還 -1640初演- Il Ritorno d’Ulisse in Patria |
クラウディオ・モンテヴェルディ (1567-1643) Claudio Giovanni Antonio Monteverdi 台本:Giacomo Badoaro |
ヴィーナスとアドニス -1665初演- Venus and Adonis |
ジョン・ブロウ(1649-1708) John Blow 台本:Aphra Behn |
オーロラの誕生 -1710初演- Il nascimento de l'Aurora |
トマゾ・ジョヴァンニ・アルビノーニ(1671-1751) Tomaso Giovanni Albinoni 台本:Anonymous |
青春の女神へーべの祭り -1739初演- Andromeda liberata |
ジャン・フィリップ・ラモー(1683-1764) Jean-Philippe Rameau 台本:Antoine-Cesar Gautier de Montdorge |
アポロとヒュアキントス -1769初演- Apollo et Hyacinthus |
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791) Wolfgang Amadeus Mozart 台本:Rufinus Widl |
シピオーネの夢 -1772初演- Il sogno di Scipione |
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791) Wolfgang Amadeus Mozart 台本:Pietro Metastasio |
エンディミオーネ -1778初演- Endimione |
ミヒャエル・ハイドン(1737-1806) Michael Haydn 台本:Pietro Metastasio |
トロイ人 -1859/60初演- Les Troyens |
エクトル・ベルリオーズ(1803-1869) Hector Berlioz 台本:Hector Berlioz |
グルック(1714-1787)のオペラといったら『オルフェオとエウリディーチェ 』が有名ですが、彼のオペラを最初に聴いたのは、トロイア戦争を題材にしたこちらの作品でした。こちらもオルフェウスのエピソードに負けず劣らず有名な題です。言わずと知れたトロイの木馬が出てくるお話。これはその渦中の人物二人にスポットが充てられています。ギリシア人のパリスが運命、いえ、神々(三女神)の戯言の嫉妬に翻弄される物語。 この曲が作曲されたころ、現在はその割り当てをテノールか、アルトに振り分けている音域、去勢した男声が演奏していました。カストラーテという音域です。このCDではアルトが担当。そのアルトを歌っているのが、ここ数年私のお気に入りであるマグダレナ・コジェナーです。そして(私はドビュッシーと同じく女声が好き)他の登場人物も、ソロは全員女声という「こーゆーのを待ってたんだ」という展開に食指が伸びたわけです。ジャケットも素朴でいい。 合唱も歌も多いので、聴いていて飽きることはありませんでした(あまりレチタティーヴォがないのがいい)これがいわゆるグルックが仕掛けたオペラ復興運動の構成に従った作品となったのでした。が、世間からは不評だったようです(私は大絶賛なのに)。 グルックは「オルフェオとエウリディーチェ」のウィーン版のあとに書き直したパリ版で、この「パリスとエレーナ」の中に出てくる三重唱を挿入したりと、遣い回しをして、「オルフェオ」と関連を持たせているようです。 |
このオペラを初めて聴いたのはBSか何かのオペラ番組で、2003年にパリ・シャトレ座での公演で、ジョン・エリオット・ガーディナー&オルケストル・レヴォリュショネール・エ・ロマンティークによる古楽演奏でした。 最近のオペラは、上記2つの演奏だけで比較できるように、ガーディナー盤は映像を観ながら、デュトワ盤は音のみの勝負という2通りの楽しみ方ができるようになりました(しかもディスクのみならかなり安く聴くことができます)。何が言いたいのかというと、前者の場合、制作側は実演や映像作品は演出を考えなければならないために、過去の繰り返しを避けるために斬新なアイデアや演出が行われます。作曲された時代を無視した現代風の演出が施されたオペラが盛んに上演されて話題になってます(絶賛されたり酷評されたり)。 |
|