キラキラと輝く星空を眺めながら
星座の神話や星にまつわる話しに耳をかたむけたい
日頃の生活から解放されて
ゆっくりと天球の動き回る様を感じたい
そんな情景派にはアイルランドの作曲家ジョン・フィールド(1782-1837)の『ノクターン』があります
『ノクターン』というよりは個人的に『夜想曲』と訳した言葉の方が好きなので
以下このタイプの曲を紹介するときは『ノクターン』ではなく『夜想曲』と表現します
その方が夜の情景や夜に対する思いが伝わってきやすいイメージとなると考えるからです
さて夜想曲と言えば
フレデリック・ショパンのそれが一番有名で
中には彼が作曲した夜想曲しか知らないと言う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
実はショパンに有名な夜想曲を書かせるきっかけを作ったのが
ここで紹介するフィールドなのです
ショパンのそれと比べると
盛り上がりや耳に馴染むメロディラインとものはありませんが
星空を眺めるときには逆に聴きやすいかもしれません
というのは
変に有名な曲が入っていたり
ピアニスティック(ここでは技巧的な意味で使います)だったりすると
星空に気持ちがいっているのに
その曲にさしかかると五感が音楽へ傾いてしまうからです
たとえば流れ星を数えているときのそれは不利なので
そういった曲をこの【天界の音楽】と名づけたこのページでは紹介しません
このフィールドの『夜想曲集』は聴き方によっては非常に退屈に聞こえるかもしれません
それほど有名ではないし、ショパンに同曲集を書かせた作曲家の説明はほとんどありません
フィールドの『夜想曲集』は全部で18曲
そのうちの最後の曲が出版のために付け加えられた全く関係のない曲だったらしく
曲想も雰囲気も全く違っていたそうです
校訂を行っていたフランツ・リストは苦肉の策にその曲のタイトルを『白夜』と名づけたそうです
天球がゴロゴロと音を立てて(この感覚が天界の音楽なんだと思います)行くのをボーッと眺めたり
何も考えずに流れ星の数を追うときなど
B.G.M.として何となく掛けるにはこれ以上最高の曲集はありません
個人的に星を眺めるときに一番掛けていたいのがこのフィールドの『夜想曲集』です
ピアノ:ジョン・オコナー 1989年録音。 TELARC TCD-36 (CD-80199) たぶん最初に日本でリリースされたジョン・フィールドのレコードで、見事にこの曲集の曲想を反映してくれている演奏。ピアノはスタインウェイを使っているので、キラキラと星空の間に輝く無数の星たちを連想させます。個人的にはちょっとエコーをかけすぎているのでは?と思うフシがあります。 この演奏を一言でいえば、町灯りの気にならない郊外に行って、町の頭上に架かる星たちのようなきらめく音色に聞こえてきます。 残念ながらこのアルバム1枚では全集を聴くことが出来ず、この後に収録されなかった分をリリースして全集を完成させました。 |
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フォルテピアノ:バート・フォン・オート 1995年録音。 COLUMNS CLASSICS 0189 こちらの演奏は1823年に制作されたBroadwood1823というピリオド楽器のフォルテピアノによる演奏です。ショパンが晩年のロンドン旅行で弾いていたピアノでの演奏と同タイプのもの、というだけで何となくいろいろと想像の羽が星空へ羽ばたかせてくれそうです。 この曲集の特徴は、左手のパートが装飾音で、右手がメロディを奏でていきます。その右手のパートの音が、まるで積み木を叩くような音に聞こえます。この雰囲気がいい。何たって星の姿は何十年も前にそこを出発し、今、その届いた光を見ているわけですから、この200年近く前に制作されたピアノの音色が星のまたたきのように聞こえても不思議ではありません。 ここでは14番と15番を抜かして17番までを聴くことができます。 |
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スクウェアピアノ:ヨアンナ・リーチ 1990〜1991年録音。> ATHENE RECORDS ATHCD1 このレコードもオートが演奏している同じピリオド楽器による演奏ですが、スクエアピアノというタイプのものです(ジャケットのピアノのように上から見る四角い形をしている所に由来している)。アルバムタイトルにある“Three Square”というのは3台の楽器を演奏している、という意味で、Stodart1823, Broadwood1823,D'Almaine1835という3台のピアノを曲によって弾き分けています。どれも古くささを感じさせる音が、遠くフィールドのいた時代に連れて行ってくれるようです。 ここでは1番から16番までを番号順に聴くことができます。 |