【映画に見る「トロイ」の物語】
 人類史上初の文学作品とまで称されるホメロス作の『イリアス』。その映画は何度か制作されました。ここでは『イリアス』をもとに製作された『トロイ』を紹介します(2015年6月8日更新)

 


 
【イリアス】他、叙事詩の環をコンパクトにまとめたのが、ここで紹介する三作で、特に2004年作となる『トロイ』はオリンピックの開催がギリシアに戻った年に公開され、人気俳優を起用したハリウッド超大作となりました。私にとっても好きな作品であるので、ここでは、ちょっとだけ深く解説してみようかと思います。
 
   
 
タイトル
トロイ(2004)
監督 ロバート・ワイズ ジョン・ケント・ハリソン ウォルフガング・ペータゼン
脚本 ジョン・ツイスト ロニー・カーン デヴィッド・ベニオフ
アキレウス スタンリー・ベイカー ジョー・モンタナ ブラッド・ピット
ヘレネ ロッサナ・ポデスタ シエンナ・ギロリー ダイアン・クルーガー
パリス ジャック・セルナス マシュー・マースデン オーランド・ブルーム
ヘクトル ハリー・アンドリュース ダニエル・ラパイン エリック・バナ
アガメムノン ロバート・ダグラス ルーファス・シーウェル ブライアン・コックス
メネラウス ナイアル・マクギニス ジェームズ・キャリス ブレンダン・グリーソン
オデュッセウス トリン・ザッカー ナイジェル・ホイットメイ ショーン・ビーン
プリアモス サー・セドリック・ハードウィック ジョン・リス=デイヴィス ピーター・オトゥール
カッサンドラ ジャネット・スコット エミリア・フォックス  
テーセウス   ステラン・スカルスガルド  
アイネイアス ロナルド・ルイス   フランキー・フィッツジェラルド
ブリセイス     ローズ・バーン
テティス     ジュリー・クリスティ
ヘラ   アンドリーア・ラドゥトイウ  
アフロディテ   エミリー・コスロスキー  
アテナ   ジーナ・ナラムリング  

 

 
【キャスティングの順番について】
 人類最古の文学といわれているホメロス(紀元前8世紀後半頃の人。ただし個人なのか団体なのか、いまだに謎の部分が多い)の『イリアス』を原典としている映画で、役の比較は独断と偏見で『イリアス』の主役級から順に並べてみました。この作品を『イリアス』としてお読みになった方であれば、アキレウスがトップ(主役)になっているのも頷けることと思います。すなわち“アキレウスの怒り”から始める物語だからです。
【配役について】
 これは独断と偏見(ばっかりだなぁ)で選ばせてもらいました。こういうのは楽しいですね。性格の描き方は、どの配役に重きを置くかによって見るべきところが変わってきてしまいますから、ここでは原作に近い描写を考えて個人的な配役を楽しんでみました。
 
 
アキレウス;ブラッド・ピット
ヘレン;シエンナ・ギロリー
パリス;マシュー・マースデン
ヘクトル;エリック・バナ
アガメムノン;ルーファス・シーウェル
メネラウス;ジェームズ・キャリス
オデュッセウス;ショーン・ビーン
プリアモス;ピーター・オトゥール

 
【キャスティングの順番について】
 人類最古の文学といわれているホメロス(紀元前8世紀後半頃の人。ただし個人なのか団体なのか、いまだに謎の部分が多い)の『イリアス』を原典としている映画で、役の比較は独断と偏見で『イリアス』の主役級から順に並べてみました。この作品を『イリアス』としてお読みになった方であれば、アキレウスがトップ(主役)になっているのも頷けることと思います。すなわち“アキレウスの怒り”から始める物語だからです。
【配役について】
 これは独断と偏見(ばっかりだなぁ)で選ばせてもらいました。こういうのは楽しいですね。性格の描き方は、どの配役に重きを置くかによって見るべきところが変わってきてしまいますから、ここでは原作に近い描写を考えて個人的な配役を楽しんでみました。
 
 アキレウスはブラピでしょう。ジョー・モンタナはいまいちアキレウスの性格を上手く描き切れていないし、あの風貌じゃ…
 
 
 ヘレンは意見の分かれるところですが、好みの問題でシエンナ・ギロリーを選んでみました(ダイアンも捨てがたい… ←なんなんだオマエ)。
 
 

ホメロスに描かれているパリスはオーランドでは情けなさすぎです。マシュー・マースデンでいきましょう。アキレウスとパリスはナイスキャスティングです(自惚)。ヘクトルはペーターゼンの起用の仕方が上手く、トロイを平和的に守ろうとする男の苦悩を上手くエリック・バナに託したと思います。思わず感情移入しそうでした。

さて、アガメムノンを徹底した悪役とみるか(つまりペーターゼン流)そうでないかによって見方が別れてきますが、私はアガメムノンを悪役と見ていません。特に娘を生け贄に捧げ、のちにヘレンに対してその胸の内を打ち明けるときのロニー・カーン脚本で、鬼気迫る演技は見物です。というわけでルーファス・シーウェル。その弟メネラウスは兄がルーファスならブレンダン・グリーソンが生まれてくるわけもなく、そのままジェームズ・キャリスに引継です(笑)。得しましたね。

 話は、少し脱線しますが、しばらく遠ざかっていたプロレスを見るようになりました。私がプロレスを見ていた時代は、大ファンだったブルーザー・ブロディ(1946-1988)の時代です。時代は変わり(本当に変わった!)、今のプロレスはWWEの「E」がエンターテイメントだけあって、ショウマンシップが華々しいのですが、トロイには2人のレスラーが登場しています。

  1人は冒頭にアキレウスと対決するBoagriusのネイサン・ジョーンズ(212cm)。もう1人はAjax、すなわち大アイアスのタイラー・メイン(207cm)。タイラーは他にも出演歴があり、知名度としてはX-Menシリーズでしょうか。他にもホール・マーク・シリーズの【ヘラクレス】へもAntaeusに扮しています。
ボアグリウス扮するネイサン・ジョーンズ
アイアス扮するタイラー・メイン
  残念ながらレスラー二人の対決(笑)はありませんでしたが、それぞれ主人公となっているアキレウスvsボアグリウス、アイアスvsヘクトルは見せ場の一つでありました。とにかく裸体をさらけ出している古代人なので、ブラッド・ピットやエリック・バナのトレーニングは人並みはずれた量だったようです。それと比べると、レスラー2人は、肉体美を併せ持った俳優というわけです。

 

【ストーリー】
 映画というものは原作に忠実である必要はありません。私が原作を読み、映画を見る理由のひとつに、将来映画用の脚本を書きたいために、原作が映画になるとき、一体どういった変化があったのかを見ることがあります。この関係で異質だったのは『2001年宇宙の旅』でしょう。この作品は映画と小説とが同時進行で書き進められていました。
 さて、ここで紹介している一連のトロイの原作はホメロスによる『イリアス』という人類最古の文学、いわばギリシア神話の物語のひとつとされています。文字として残された作品としても最古のもので、いまだに研究者の間では「本当は誰が書いたものか」という結論の出ていない作品なのです。ここではその事に関して割愛させていただきます。

 

 

【登場人物たちの生い立ち】
「アキレウス(Achille)」(アキレウスはギリシア読み、アキレスはラテン語読み)ペレウスと海の女神テティスとの間に生まれ、アキレウスという名は“唇のない子”という意味。女神は予言から若死にすることを知り、アキレウスを不死身にするつもりで黄泉の川スティックスに足首を持って全身を川の中に漬けました。黄泉の川は不死身にする力を持つとされていたからです。おかげでアキレウスはギリシア神話の中でも屈指の英雄の1人として名を残します。ただし、テティスが掴んでいた足首の部分は川に浸からなかったため、のちのトロイア戦争でパリスの放った矢がその部分に当たり命を落とします。

 「ヘレン(Helene)」ヘレネまたはヘレン。ただしヘレンという名はデウカリオンとピュラの間に生まれた英雄にも同名がいるため、通常のギリシア神話ではヘレネ。トロイア戦争の発端となった絶世の美女。なので読み手は自分の好みの女性を思い描いてしまうため、映画化に当たり、毎度のこと賛否両論が湧き起こります。好みの問題なので仕方ないでしょう。ヘレンはゼウスが白鳥に化けレダと交わった結果生まれたことになっています。そしてその時産み落とされた二つの卵からは、双子の姉妹と双子の兄弟の4人が生まれました。姉のクリュタイムネストラ(のちにアガメムノンと結婚)とヘレネ。もう1個の卵からはカストルとポリュデウケス(星好きにはポルックスの方が聞こえがいいでしょう)が生まれました。

 

 そうこうしているうちに時は流れ、映画公開から4年目に、(ようやくというか)ディレクターズカット版がリリースされました。公開当初から、これだけお金を掛けているのに、まして巷ではディレクターズカットという物が流行、DVDという商品として売られる際には、ほとんどといって良いほど「ディレクターズカット」になっているのに「どうして?」という思いがずーっとありましたが、ようやく解消! 

 さて、いつのまにか発売されていたこのディスク。本編が163分から196分へと3時間を超える大作となっています。初回盤と同じ二枚組ですが内容が変更されました。特典映像については、廉価盤から1枚ものになり映像特典がすべてカットされましたが、復活。トロイの舞台裏、トロイに迫る、ギリシャ船という3つのコンテンツがついかされましたが、ギリシャ神話ギャラリーがカットされています。あと本編の開始前に監督、ウォルフガング・ペーターゼンによるイントロダクションが入ってます(スキップ可能)。オーディオコメンタリーは入っていません。

 それにしても30分拡大版である本作は、消化不良気味だったこの映画の魅力をようやく十分に伝えてくれるものになりました。ご覧になった方は、最初から満足だった方もいらっしゃるでしょうが、やはり原典としてホメロスの叙事詩の名をオープニングで謳っているので、劇場公開版は、個々のキャラクターの性格付けが薄いという印象は拭えませんでした。


【トロイアの女】 -1971-
 トロイ戦争10年に及ぶの後日譚として悲劇作家エウリピデスの原作。後日譚であれば、オデュッセウスの帰還物語もそれに当たります。ギリシア方の大将アガメムノンの弟メネラオス(パトリック・マギー)にまつわる題材。原作は古代ギリシアの三大悲劇作家エウリピデス。アンドロマケにヴァネッサ・レッドグレイヴ。絶世の美女ヘレンはイレーネ・パパス。先の「エレクトラ」では主役でしから、続けて見るのはお勧めしません(笑)。
 イレーネ・パパスといえば、音楽ファンにはヴァンゲリスとのコラボレートが有名でしょうが、その後もギリシア神話ものに登場します。『オデュッセイア 魔界の海の大冒険』のアンティクレイア(オデュッセウスの母)など。
home


このページは、元http://homepage.mac.com/tupichan/cosmos/Cinema_GreekMyths.htmlです。

Copyright©tupichan All Rights Reserved.