星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

 
 


01. シンフォニア ト長調(交響曲第81番Hob.I-81より第1楽章)
02. 言いたい人は言うがよい Hob.XXIVb-8(アンフォッシ『試練に遭うやきもち』)
03. ばらに刺がなくなったら Hob.XXIVb-3(アンフォッシ『メティルデの再会』)
04. あなたはご存じでいらっしゃる Hob.XXIVb-7(アンフォッシ『偽りの結婚』)
05. 私の一番いいところは Hob.XXIVb-17(チマローザ『金詰まりの興行師』)*
06. 女房の機嫌がいい時は Hob.XXIVb-18(チマローザ『ジャンニーナとベルナルドーネ』)*
07. お嬢さん、ゆっくりお行きなさい Hob.XXIVb-12(P.グリエルミ『機知に富むクェーカー教徒の女』)
08. アルチーナよ Hob.XXIVb-9(1786)(G.ガッザニーガの『アルチーナの島』)
09. おお神よ、わが平安は失われました Hob.XXIVb-19(ガスマンの『職人の恋』)
10. 私は運命に見放された不幸な女 Hob.XXIVb-15(チマローザの『2人の偽伯爵』)
11. さあ、いい子にして Hob.XXIVb-23*
12. 情け深い人は Hob.XXIVb-13(F.ビアンキの『インドのアレクサンドロス大王』)
13. 薄幸な花嫁 Hob.XXIVb-2(パイジェッロの『フラスカーティの女』)
14. Son pietosa, son bonina』Hob.XXXII-1b*



ヌリア・リアル:ソプラノ(Nuria Rial
マルゴット・オイツィンガー:メゾ・ソプラノ 5, 6, 11, 14(Margot Oitzinger

オルフェオ・バロック・オーケストラ(Orfeo Baroque Orchestra, L'
ミヒ・ガイック:指揮(Michi Gaigg

 ハイドンイヤーの2009年、「おおっ、これは!」と思わず手を出してしまったのがこのアルバム。正直にいいますと第一印象は清楚な感じが漂う、このアルバムの主人公であるヌリア・リアルのポートレイト。ソプラノとはいえ、もっと音域の高いコロラトゥーラ・ソプラで、容姿も声も透明感のある瑞々しい歌声にうっとりしてしまいました。購入して大正解!と膝を叩きました(実際叩いていないけど)。 

 他にも手を出した理由として、やはりハイドンが好きと言うこともあったのと、ヌリアともう一人メゾ・ソプラノが参加していて、女声デュオが好きな私としては、てっきりデュエットしているのかと思っていたら、これは予想が外れ、それぞれソロで歌っています(ソプラノ9、メゾ4)。ちょっとがっかり。 

 バックを務めるオルフェオ・バロック・オーケストラは名前の通り、バロックを連想させるキビキビとした明るい音色で、というのも通奏低音にチェンバロが入っています。バロックから古典期の橋渡し、ともいわれるハイドンの音楽性を見事に反影した演奏です。いいです、これ。指揮者兼ヴァイオリニストでもあるガイックも女性です。 

 それにしても「これがハイドン?」と思ってしまう曲ばかりが収録されていますが、それもそのはず、どうもこのアルバムはハイドンが他の作曲家のオペラの追加挿入アリアとして作曲したものだそうです(どういうことかわかりませんが、他人が作曲したオペラに自作のアリアを突っ込んでいるということ?)。
 しかし実際はハイドンと長く付き合っていたエステルハージ家お抱えのソプラノ歌手ルイジャ・ポルツェッリのためにハイドンが作曲した曲だとか。不倫相手だそうです。音楽の授業ではそんなこと勉強していないから、「交響曲の父」とか「パパハイドン」などと表面的なエピソードしかしるよしがないので、意外な一面をかいま見たと言う感じです。ハイドンは音楽史上でも一二を争う悪妻を娶ったことで知られているそうで、その反動がこの楽しげな曲調に表れてしまったのでしょうか。つまり正妻に「不倫」を悟られないための秘策だったのかもしれません。なんか納得(笑)。 

 まあ、ハイドンの悪妻に悩む心中をまったく感じさせない曲調はまことにすばらしく、何度聴いても疲れません、飽きません。さすがはハイドン。でもそう思わせてくれるのは、時々小鳥がさえずるような透明感のあるヌリア・リアルの歌声でしょう。オケとの絡みも、特にフルートやオーボエ、リコーダーでは森や草原で動物たちと語りあうような少女か、ギリシア神話に登場する女神に使える侍女が牧場で歌い踊ってでもいるような牧歌的、田園的な情景が浮かんで来ます。



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