役に立たないレビュー「アンドレア・コーエンのテレマン」

アンドレア・コーエン
（Andrea Coen）

　テレマンは4000曲作曲したことでギネスにも認定されている（私はその記事を読んだことがありませんが、あちこちで書かれているようです）と言いますが、CDが普及して輸入盤が手軽に手に入るような時代になっても、その全貌は見えてきません。

　そんな中、キーボーディストのアンドレア・コーエン（Andrea Coen）が、チェンバロ・ソロのレコーディングを進めてくれています。私はチェンバロの音が好きなので、たとえどれも同じように聞こえてこようとも、異なる曲であれば聴いてみたいと思っているので、コーエンのレコーディングは嬉しい企画だと思って注目しています。2022年までに、それまでも様々なアーティストによってバラバラにレコーディングされてきた楽曲が、まとめて聴く機会が増えています。バッハの数学的な音階とも、クープランともラモーとも違う楽器の音色は、テレマンそのものです。

幻想曲全曲（2011）

　全集として初めて手にしたのはアンドレア・コーエンによるレコーディング。安い（いくらで購入したか覚えていませんが、1000円ぐらいだったと思います）だけあってなんとなく手を抜いたようなジャケット（ごめんなさい）。インフォメーションを見る限りでは、とくにピリオド楽器を使用していません。だからといって、チェンバロの製作年代とかも書いてあるわけでもなく、せっかく見つけておきながら、残念なところが見受けられました。

　でも探していた幻想曲（ファンタジー）なので、選曲盤のPaul Rey Kleckaの盤よりかは良く聞く一枚です。ともかくテレマンらしい弾むような曲が多く、即興的な性格を併せ持つ曲としては、耳に残る曲が多く、さすがテレマンと楽しみながら聴くことができます。B.G.M.としては最高な曲集です。

♪Disc1♪

ファンタジーニ長調 TWV33:1（Fantaisie in D Major, TWV33:1）
ファンタジーニ短調 TWV33:2（Fantaisie in D Minor, TWV33:2）
ファンタジーホ長調 TWV33:3（Fantaisie in E Major, TWV33:3）
ファンタジーホ短調 TWV33:4（Fantaisie in E Minor, TWV33:4）
ファンタジーヘ長調 TWV33:5（Fantaisie in F Major, TWV33:5）
ファンタジーヘ短調 TWV33:6（Fantaisie in F Minor, TWV33:6）
ファンタジート長調 TWV33:7（Fantaisie in G Major, TWV33:7）
ファンタジート短調 TWV33:8（Fantaisie in G Minor, TWV33:8）
ファンタジーイ長調 TWV33:9（Fantaisie in A Major, TWV33:9）
ファンタジーイ短調 TWV33:10（Fantaisie in A Minor, TWV33:10）
ファンタジー変ロ長調 TWV33:11（Fantaisie in B-Flat Major, TWV33:11）
ファンタジー変ホ長調 TWV33:12（Fantaisie in E-Flat Major, TWV33:12）

♪Disc2♪

ファンタジーハ短調 TWV33:13（Fantaisie in C Minor, TWV33:13）
ファンタジーハ長調 TWV33:14（Fantaisie in C Major, TWV33:14）
ファンタジーロ短調 TWV33:15（Fantaisie in B Minor, TWV33:15）
ファンタジーニ長調 TWV33:16（Fantaisie in D Major, TWV33:16）
ファンタジート短調 TWV33:17（Fantaisie in G Minor, TWV33:17）
ファンタジー変ロ長調 TWV33:18（Fantaisie in B-Flat Major, TWV33:18）
ファンタジーイ短調 TWV33:19（Fantaisie in A Minor, TWV33:19）
ファンタジーイ長調 TWV33:20（Fantaisie in A Major, TWV33:20）
ファンタジーホ短調 TWV33:21（Fantaisie in E Minor, TWV33:21）
ファンタジート長調 TWV33:22（Fantaisie in G Major, TWV33:22）
ファンタジート短調 TWV33:23（Fantaisie in G Minor, TWV33:23）
ファンタジー変ロ長調 TWV33:24（Fantaisie in B-Flat Major, TWV33:24）

♪Disc3♪

ファンタジーヘ長調 TWV33:25（Fantaisie in F Major, TWV33:25）
ファンタジーニ短調 TWV33:26（Fantaisie in D Minor, TWV33:26）
ファンタジーホ短調 TWV33:27（Fantaisie in E Minor, TWV33:27）
ファンタジート長調 TWV33:28（Fantaisie in G Major, TWV33:28）
ファンタジート短調 TWV33:29（Fantaisie in G Minor, TWV33:29）
ファンタジーハ短調 TWV33:30（Fantaisie in C Minor, TWV33:30）
ファンタジーイ長調 TWV33:31（Fantaisie in A Major, TWV33:31）
ファンタジーイ短調 TWV33:32（Fantaisie in A Minor, TWV33:32）
ファンタジーロ短調 TWV33:33（Fantaisie in B Minor, TWV33:33）
ファンタジーニ長調 TWV33:34（Fantaisie in D Major, TWV33:34）
ファンタジー変ホ長調 TWV33:35（Fantaisie in E-Flat Major, TWV33:35）
ファンタジー変ロ長調 TWV33:36（Fantaisie in B-Flat Major, TWV33:36）

楽譜は1732年から1733年に掛けて出版されました。

小室内楽曲集

　幻想曲全曲に続いてレコーディングされたのは『室内楽曲集』と題された1枚もの。内容はパルティータ第1番〜第6番（TWV.41）までと、協奏曲ロ短調（TWV.33）。合わせて71分を超えた収録となっています。

パルティータ第1番変ロ長調 TWV.41:B1（Partita No.1 in B-Flat Major, TWV41:B1）
パルティータ第2番変ト長調 TWV.41:G2（Partita No.2 in G Major, TWV41:G2）
パルティータ第3番変ハ短調 TWV.41:c1（Partita No.3 in C Minor, TWV41:c1）
パルティータ第4番変ト短調 TWV.41:g2（Partita No.4 in G Minor, TWV41:g2）
パルティータ第5番変ホ短調 TWV.41:e1（Partita No.5 in E Minor, TWV41:e1）
パルティータ第6番変ホ長調 TWV.41:Es1（Partita No.6 in E-Flat Major, TWV41:Es1）

協奏曲ロ短調 TWV.33:A1（Harpsichord Concerto in B Minor, TWV33:A1）

楽譜は1728年に出版されました。

100のメヌエット

　「7の7倍と1つのメヌエット」として作曲された曲集で、単純に計算すると7X7で「49」。これに1つのメヌエットを加えると合計50。それが2セットあるのでアルバムタイトルが『100のメヌエット』というわけ。数学っぽい（音楽そのものの起源をピュタゴラスに求めるなら）ジャケットも洒落ています。サウンド的にはバッハほど堅苦しさを感じさせないのは、メヌエットだからでしょうか？　100曲なので1曲あたり1〜2分程度の短さ。こんなにもバッハっぽさを感じさせる曲集があったとは、コーエンのこのアルバムで初めて知りました。テレマン、奥が深ーい

7の7倍の1つのメヌエット TWV.34:1-50
（Sept fois sept et un menuet, TWV 34:1-50）
7の7倍と1つのメヌエット第2巻 TWV 34:51-100
（Zweytes sieben mal sieben und ein Menuet, TWV 34:51-100）

楽譜は第1集が1728年、第2集が1730に出版されました。