星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

アンサンブルによる夜想曲

夜想曲といえば、誰もが思い浮かべるのがショパン(私にとってはフィールドです)のピアノであり、そのイメージはシンプルにピアノという音色ではないでしょうか? 

  しかし、作曲家のインスピレーションはピアノという音色にとどまらず、様々な楽器との絶妙なハーモニーによる複数楽器のコラボ作品が数多く生み出されています。ここでは、器楽曲という少人数の編成ではなく、もう少し人数の多い音色豊かな夜想曲を紹介します。

ヨハン・ヘンリク・フライトホフ
(Johan Henrik Freithoff, 1713-1767)

 ジョン・フィールドが創始者と言われる夜想曲の第1作目が作曲されたのが1812年。このフライトホフが作曲したこの楽曲は、少なくともフィールドよりも早く18世紀中に年に作曲されているので、このタイトルがつけられたのは、作曲者の意向ではなく、出版社が世間で「夜想曲」というジャンルがヒットしているのを受けてのことかもしれません。
 ほとんどレコーディング機会に恵まれないフライトホフですが、このアルバムはまるまる一枚彼の作品が録音されました。

 その貴重なアルバムに収録されているのが夜想曲というのも嬉しい限りですが、時代が時代だけにまだチェンバロなどの通奏低音が加わっているので、バロックを思わせています。主旋律はヴァイオリンで、穏やかな雰囲気が終始しています。星空の傍らで、ちょっとした宮殿の夜会を連想させてくれるのではないでしょうか。

夜想曲 変ロ長調(Notturno in B-Flat Major, 2Violin、Cello、Harpsichord)
I. Andante / II. Menuetto

夜想曲 ホ長調(otturno a tres in E Major, 2Violin、Cello、Harpsichord)
I. Allegro / II. Menuetto

 このアルバムには2つの夜想曲が三重奏曲(2Violin、Cello、Harpsichord)の編成。他のトリオ・ソナタに交じって収まっています。こちらはフルートが主役になるぐらいで、雰囲気は変わらないリラックスした楽曲が揃っています。特にハイドンがディベルティメントと名付けた2梃のヴァイオリンとチェロのための三重奏が聴けるのは嬉しいです。

フラウト・トラヴェルソのためのソナタト長調(Flute Sonata in G Major, 2Flute, Violin, Cello)
I. Allegro / II. Adagio / III. Allegro man non presto

トリオ・ソナタト短調(Trio Sonata No. 2 in G Major, 2 Violin, Cello)
I. Allegro / II. Menuetto

ヴァイオリンのためのソナタ ホ長調(Violin Sonata in E Major, 2 Violin, Cello)
I. Moderato / II. Allegro / III. Andante avec les variations

三声のソナタ イ長調(Sonata a tres in A Major, 2 Violin, Cello)
I. Allegro / II. Andante / III. Allegretto Menuett alternativements

三重奏曲 ホ長調(Trio in E Major, 2 Violin, Cello)
I. Affettuoso / II. Spirituoso

三重奏曲ト長調(Trio in G Major, 2 Violin, Cello)
I. Allegro / II. Andante / III. Allegro

三重奏曲ニ長調(Trio in D Major, 2 Violin, Cello)
I. Largo assai/ II. Larghetto mantanto

 




FREITHOFF
/ Norwegian Baroque Orchestra Soloistes

Notturno in Bb
Sonata a flauto traverso solo in G major
Sonata 2/ Trio in G minor
Sonata a vioino solo in E major
Notturno a tres in E major
Sonata a tres in A major
Trio in E major
Trio in G major
Trio in D major

SIMAX




 

   
 




フランツ・アントン・ホフマイスター
(Franz Anton Hoffmeister, 1754-1812)

 生前は楽譜出版社として名を馳せたホフマイスターですが、1790年代から次第に作曲に手を染め、数多くの室内楽作品を残してくれました。ここに紹介する夜想曲は、オーボエ、ホルン、ファゴットに2本のヴィオラというかなり変則的な編成。明るい感じの、和気あいあいとした演奏からは、タイトルにもなっている「夜想曲」といった雰囲気を感じ取ることはできませんが、なんか遠い昔を思い出すような楽器同士の和音が心地良く夜のしじまに流れて来ます。

夜想曲 第1番 変ホ長調(Oboe、Horn、Bassoon、2Viola)
I. Allegro molto / II. Menuetto / III. Andante / IV. Menuetto / V. Finale. Moderato

夜想曲 第2番 ヘ長調(Oboe、Horn、Bassoon、2Viola)
I. Moderato / II. Menuetto / III. Adagio / IV. Menuetto / V. Finale. Allegro

夜想曲 第3番 変ロ長調(Oboe、Horn、Bassoon、2Viola)
I. Allegro molto / II. Menuetto / III. Andante. Adagio / IV. Menuetto / V. Finale. Allegro moderato

夜想曲 第6番 二長調(Oboe、Horn、Bassoon、2Viola)
I. Allegro / II. Menuetto / III. Andante / IV. Menuetto / V. Finale. Allegro assai
 


HOFFMEISTER

Simon Fuchs; Oboe
Jakob Hefti; Horn
Manfred Sax; Basson
Michel Rouilly; Viola
Katja Richter
; Viola

TUDOR 7075




 

   
 




フランセスコ・モリノ
(Francesco Molino ,
1775-1847)

 ギタリスト兼ヴァイオリニストでもある作曲家のモリノの魅力を収めたアルバムから。セレナーデ・ア・トロアの演奏。この一枚はフルート、そしてヴァイオリン・ソロにギターが伴奏の一枚。収録されている夜想曲は Op.37がヴァイオリンとギター、Op.38がフルートとギターの為に書かれています。この時代に、現在のポップスなどと共通するサウンドを書いていたと言うのは新鮮な驚きでした。でも、この頃のイタリアはカンツォーネとかセレナーデとかのジャンルでは、ギターが主役だったりするので、もっとも手軽で一般的なスタイルだったのでしょう。私が知らなかっただけで(笑)

夜想曲 第1番 イ短調/イ長調 Op.37 (for Violin & Guitar)
I. Introduction: Romanze / II. Rondo pastoral

夜想曲 第2番 ト長調 Op.38 (for Flute & Guitar)
I. Andante cantabile / II. Rondo: Allegretto

 モリノはこの2曲以外にもOp.39(Flute & Guitar)、Op.36、Op.44、Op.57(Guitar & Piano)と計6曲残してくれていますが、いずれもギター伴奏でフルートとヴァイオリンで奏でられますが、なかなか聴く機会がありません。

 





MOLINO
/ Serenade a trois
Karl Kaise; Glute
Petra Mullejans; Violin, Viola
Sonja Prunnbauer; Guitar


Trio Op.4
Nocturne Op.37
Nocturne Op.38
Sonata Op.6-2
Trio Op.45
Grand Trio Concertant Op.30

CPO 777 448-2




 

   
 



ジギスムント・ノイコム
(Sigismund von Neukomm, 1778-1858)

 夜想曲に巡りあうまで知らなかった作曲家の一人ですが、ハイドンに師事し『天地創造』の編曲を手がけたとのこと。また、南米に渡り、ハイドンやモーツァルトの音楽を広め、モーツァルトのレクィエムを補筆した、いわゆる「リオ・デ・ジャネイロ版」でも知られているのだとか。ここで紹介する夜想曲は、ベルリン・ドイツ・オペラ室内アンサンブルの演奏で、最大九重奏曲から最小人数である五重奏曲の間に置かれたアンサンブル作品。ハ長調という明るい音色で奏でられるのはピアノによる序奏から始まり、オーボエ演奏。
 

NEUKOMM
/ Berlin Deutsche Oper Chamber Ensemble

CPO



 

   
 


フェルディナント・リース
(Ferdinand Ries, 1784-1838)

 ベートーヴェンの弟子の一人で、師匠の作風を色濃く反映した作品を残しました。ここで聞くアンサンブルのような作品を最初に耳にしましたが、彼の中核を占めるのはピアノ作品。なので、カタログを探しましたが、ピアノによる「夜想曲」がないのは残念。
 

RIES
/ Schweizer Blaserensemble

CPO




 

   
 

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♪参考資料♪
クラシック作曲家辞典(監修:中川原理/フェニックス企画編)
クラシック作曲家大全(監修:ジョン・バロウズ、日本語監修:芳野靖夫/日東書院)