ここ最近、フィールド、ショパン、フォーレなどのまとまった夜想曲のレコーディング以外に、作曲家のコンピレーション的なアルバムが増えてきたような気がします。私の記憶では、小山実稚恵さんのアルバムを知ったのが最初で、いわゆる三大夜想曲以外の楽曲を知ることになり、その後、Bart van Oortがフィールド、ショパンをボックス化した時に『CONTEMPORARIES』と題されたDisk4などを手にして夜想曲の多彩な表情を星を眺める時、布団に入るときのお供として傍らに流して楽しんでいます。

  ここでは、作曲家たちの忘れられがちな単品としての夜想曲を、まとめてレコーディングしてくれているアルバムを紹介します。

 

 夜の音楽と呼ぶのにふさわしい。ピアニスティックな表現を極力押さえた演奏が魅力的です。 夜想曲といえばフィールドやショパンを連想されるのは、あまりにも金字塔的な作品集だから致し方ありませんが、ここで小山さんは、それ以外にも作曲された多くの作曲家の夜想曲(あるいは夜がテーマの曲)を集めてくれています。だからといって決してロマンチシズムに溺れるわけでもなく、作曲家の描いた夜の音楽を体現させてくれるシンプルな演奏に好感が持てました。

フィールド、ショパン、フォーレ。三大夜想曲集(なんて誰も呼んでませんが)を書いた作曲家が一枚のアルバムに収められるのも珍しいでしょう。同一のピアニストによる楽曲(演奏)の違いを楽しむことができます。

01.Gabriel Faure(1845-1924); 夜想曲 第2番 ロ長調 Op.33-2
02.Samuel Barber(1910-1981); 夜想曲(フィールドに捧ぐ)変イ長調 Op.33
03.John Field(1782-1837); 夜想曲 第5番 変ロ長調
04.Frederic Chopin(1810-1849); 夜想曲 第21番 ハ短調(遺作)
05.Frederic Chopin(1810-1849); 夜想曲 第20番 嬰ハ短調(遺作)
06.グラナドス:組曲「ゴイェスカス」  第4曲「なげき、またはマハとうぐいす」
07.Francis Poulenc(1899-1963); 8つの夜想曲より第4番「幻の舞踏会」
08.Sergei Rachmaninoff(1873-1943); 「サロン小品集」 Op.10-1「夜想曲」イ短調
09.Edvard Grieg(1843-1907); 「抒情小品集 第5巻」第4番:夜想曲
10.シューマン:「幻想小曲集」作品12  第1曲「夕べに」
11.Claude Debussy(1862-1918); 夜想曲 変二長調
12.アルベニス:組曲「スペインの歌」 Op.232-4「コルドバ」(夜の歌)
13.Alexander Scriabin(1872-1915); 左手のための2つの小品 Op.9-2 夜想曲変ニ長調
14.プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」からの10の小品 Op.75-10「別れの前のロメオとジュリエット」
15.Gabriel Faure(1845-1924); 夜想曲 第6番 変ニ長調 Op.63

 夜以前、この手のオムニバスものでは小山実稚恵さんのアルバムを愛聴していましたが、第二段的なアルバムがリリースされました。惜しむらくは、その選曲で、先のアルバムと同じ曲が入っていることでしょうか。こうしたアルバムでないと、決して選曲されることがないような夜想曲がもっとたくさんあるはずで、そうしたことを考えると、いつも選ばれるのが同じ作曲家の同じ曲だと、もうちょっと市場リサーチというものをお願いしたいなぁ、などと大胆なことを思ってしまいます。 

 

01. John Field(1782-1837); 夜想曲 第4番 イ長調
02. グリンカ:夜想曲 へ短調「別れ」
03. シマノフスカ:夜想曲 変ロ長調
04. Frederic Chopin(1810-1849); 夜想曲 第2番 変ホ長調
05. Frederic Chopin(1810-1849); 夜想曲 第20番 嬰ハ短調
06. パデレフスキ:夜想曲 変ロ長調op.16-4
07. リスト:夜想曲 第3番変イ長調「愛の夢」S.541 R.211
08. Edvard Grieg(1843-1907); 「抒情小品集 第5巻」第4番:夜想曲
09. Georges Bizet(1838-1875); 夜想曲 第1番ヘ長調 Op.2
10. Gabriel Faure(1845-1924); 夜想曲 第1番変ホ短調op.33-1
11. Claude Debussy(1862-1918); 夜想曲 変二長調
12. Francis Poulenc(1899-1963); 夜想曲 第1番 ハ長調
13. Alexander Borodin(1833-1887); 夜想曲 変ト長調
14. Alexander Scriabin(1872-1915); 夜想曲 変ニ長調 Op.9-2
15. Ottorino Respighi(1879-1936); 夜想曲 変ト長調
16. Samuel Barber(1910-1981); 夜想曲(フィールドに捧ぐ)変イ長調 Op.33

 

 フィールドやショパン、フォーレに代表される「夜想曲」。このフレーズにインスピレーションを受けた作曲家は、それこそ星の数ほど。すべてを網羅するなんてことはできませんが、時折、こうしたアルバムが登場してくれると、ファンとしては嬉しいですね。ピアノを奏でているのはアメリカ人ピアニストMichael Landrumで、美術の修士号も持ち、映画にも深い知識を有しているとのことで、ノクターンをノクターンらしく弾いているのではなさそうです。 

Disc 1
01. John Field(1782-1837); 夜想曲 第4番 イ長調
02. Frederic Chopin(1810-1849); 夜想曲 第7番 嬰ハ短調 Op.27-1
03. Ottorino Respighi(1879-1936); 「6つの小品 P44」夜想曲
04. Alexander Scriabin(1872-1915); 「2つの左手のための小品 Op.9」夜想曲
05. Gabriel Faure(1845-1924); 夜想曲 第3番 イ長調 Op.33-3
06. Jean Francaix(1912-1997); 夜想曲
07. Jean Sibelius(1865-1957); 「10の小品 Op.24」夜想曲 ホ短調
08. Georges Bizet(1838-1875); 夜想曲 第2番 二長調
09. Mily Balakirev(1837-1910); 夜想曲 第2番 ニ短調
10. Charles-Valentin Alkan(1813-1888) ; 夜想曲 第2番 ロ長調 Op.22
11. Erik Satie(1866-1925); 夜想曲 第1番 、第2番 、第3番
12. Francis Poulenc(1899-1963); 「8つの夜想曲」第1番 ハ長調
13. Cyril Scott(1879-1970); 夜想曲 Op.54-5
14. Edvard Grieg(1843-1907); 「抒情小品集 第5巻」第4番:夜想曲
15. Sergei Rachmaninoff(1873-1943); 「サロン小品集 Op.10」第1番:夜想曲 イ短調
16. Alexandre Tansman(1897-1986); 「5つの印象」夜想曲

Disc 2
01. Frederic Chopin(1810-1849); 夜想曲 第1番 変ロ短調 Op.9-1
02. Claude Debussy(1862-1918); 夜想曲 変二長調
03. Clara Wieck-Schumann; Notturno, Op.6-2
04. Alec Rowley; Nocturne No.5 in F Major
05. Manuel de Falla Nocturno in F minor
06. Franz Liszt; Notturno No.3 in A-flat Major (S.541)
07. Samuel Barber(1910-1981); 夜想曲(フィールドに捧ぐ)変イ長調 Op.33
08. Alexander Tcherepnin; Nocturne in G-sharp minor, Op.2-1
09. Pyotr Ilyich TchaikovskyNocturne in C-sharp minor, Op.19-4
10. Norman Dello Joio(1913-2008); 夜想曲 ホ長調
11. Alexander Borodin(1833-1887); 小さな組曲 夜想曲
12. Charles Tomlinson Griffes(1884-1920); 3つの幻想的小品 Op.6」夜想曲 変イ長調
13. Fanny Mendelssohn-Hensel(1805-1847) ; Notturno in G minor
14. Gian-Carlo Menotti(1911-2007) ; Notturno, from Poemetti
15. Ralph Vaughan Williams(1872-1958); 「小さなピアノの本」夜想曲
16. Aaron Copland(1900-1990); 真夏の夜想曲

 

 

 
NOCTURNES/ Bart van Oort
 夜想曲をまとめて聴くなら、Bart von Oortのアルバムが一番のお勧めです。また、2017年には5枚目となる『夜想曲集』として『THE ART OF NOCTURNES IN EUROPE (Vol.5)』というタイトルでフランスものの夜想曲を集めたアルバムがリリースされました。残念なのはCDでのリリースではなく、デジタルのみでのリリースということでしょうか?

 

 

...il regno della Notte... / Filippo Quarti
John Field(1782-1837)
01. 夜想曲第4番 変二長調
02. 夜想曲第9番 変ホ長調
03. 夜想曲第10番 ホ短調
04. 夜想曲第12番 ト長調
05. 夜想曲第13番 ニ短調
06. 夜想曲第14番 ハ長調
Fryderyk Franciszek Chopin(1810-1849)
07. Lent(夜想曲第20番 嬰ハ短調)、
08. 夜想曲第21番 ハ短調
09. Giuseppe Martucci(1856-1909); 2つの夜想曲 Op.70-1 変ト長調
10.Claude Achille Debussy(1862-1918); 夜想曲 変二長調
11.Ottorino Respighi(1879-1936); 夜想曲 変ト長調
Gian Francesco Malipiero(1882-1973);
12.「6つの小品」パストラール風夜想曲
13.「幽霊」より幽霊

 フィールドの6曲の夜想曲を中心に、ショパン、ジュゼッペ・マートゥッチ、クロード・ドビュッシー、オットリーノ・レスピーギ、ジャン・フランチェスコ・マリピエロといった作曲家の夜想曲を集めたアルバムで、作曲家の名前をみると曲の配列が生まれた順に並んでいます。

アルバムタイトルは『...il regno della Notte...』と題されていますが、直訳すると「夜の王国」といった意味になるようです。録音は1996年。使用楽器はスタインウェイ。

 


 
 

 夜の音楽と呼ぶのにふさわしい。ピアニスティックな表現を極力押さえた演奏が魅力的です。 夜想曲といえばフィールドやショパンを連想されるのは、あまりにも金字塔的な作品集だから致し方ありませんが、ここで小山さんは、それ以外にも作曲された多くの作曲家の夜想曲(あるいは夜がテーマの曲)を集めてくれています。だからといって決してロマンチシズムに溺れるわけでもなく、作曲家の描いた夜の音楽を体現させてくれるシンプルな演奏に好感が持てました。

 フィールド、ショパン、フォーレ。三大夜想曲集(なんて誰も呼んでませんが)を書いた作曲家が一枚のアルバムに収められるのも珍しいでしょう。同一のピアニストによる楽曲(演奏)の違いを楽しむことができます。

 

THE ART OF NOCTURNES IN EUROPE (Vol.5) / Bart van Oort
01. Jean-Henri Ravina (1818-1906); 夜想曲 変ニ長調 Op.1
02. Louis Lefebure-Wely (1817-1869); 夜想曲 変イ長調 Op.102 「羊飼いの鐘」
03. Jules Egghard (1834-1867); 夜想曲 変ニ長調 Op.41「若い女の子の瞑想」
04. Charles Gounod (1818-1893); 夜想曲 変ホ長調
05. Leon Delafosse (1874-1955); 夜想曲 ト長調
06. Benjamin Godard (1849-1895); 夜想曲 ヘ長調 Op.68
07. Georges Bizet (1838-1875); 夜想曲 ニ長調
08.Camille Saint-Saens (1835-1921); 夜想曲 変ホ長調 Op.85「夕べの鐘」
09.Gabriel Faure (1845-1924); 夜想曲 第1番 変ホ短調 Op.33-1
10.Léon Boellmann (1862-1897); 夜想曲 ハ短調 Op.36
11.Vincent d'Indy (1851-1931); 夜想曲 変ト長調 Op.26
12.Claude Debussy(1862-1918); 夜想曲 変二長調

 1849年のエラールを奏してのレコーディングは、フランスものに的を絞った選曲になっています。今回のレコーディングはBrilliant Classicsからではなく、Cantus Records から。Oortはこれまでにフィールド、ショパンとその周辺の作曲家の夜想曲を取り上げてくれていました。また、フォルテピアノ奏者というあたりも、取り上げる作品は古典期に近い作曲家ばかりだったので、たとえば『三大夜想曲』と呼ばれるフォーレは取り上げていませんでした。しかし、このアルバムでは全曲ではないものの、フォーレも含んだフランスの夜想曲をレコーディングしてくれました。
  おなじみの作曲家から、初耳の作曲家まで。作曲家もまとめての作曲ではなく、こうした性格の曲はふと、ぽつり、と作曲するイメージがあるので、よほどメジャーな作曲家以外はなかなか録音の機会に恵まれないのではないでしょうか?

 

NOCTURNE / Richard Saxel
01. Alec Rowley(1892–1958); 夜想曲 第5番 ヘ長調
02. Ivor Gurney(1890-1937); 夜想曲 変イ長調
03. Anthony Herschel Hill; さようなら(Das Lebewohl)
04. John Field(1782-1837); 夜想曲第9番 変ホ長調 H46
05. Lowell Liebermann(1961-); 夜想曲 第4番 Op. 38
06. Frederic Chopin(1810-1849); 夜想曲 第21番 ハ短調(遺作)
07. Francis Poulenc(1899-1963); 「8つの夜想曲」第4番:幻の舞踏会(Bal fantôme)
08. Louis Durey(1881-1979); 夜想曲 Op.40
09. Selim Palmgren(1878-1951); 星はまたたく Op.72-1(The Stars Are Twinkling)
10. Bela Bartok(1881-1945); 「戸外にて」 IV. 夜の音楽(Night's Music)
11. Edvard Grieg(1843-1907); 「抒情小曲集 第5巻 Op.54」IV. 夜想曲
12. Mikhail Glinka(1804-1857); 夜想曲 へ短調「別れ」

13. Alexander Scriabin(1872-1915); 「2つの夜想曲」 Op.5 第1番 嬰ヘ短調

14. Antonio Bibalo(1922-2008); タンゴ夜想曲(Tango Nocturne)

15. Astor Piazzolla(1921-1992); ブエノスアイレス午前零時(Buenos Aires Hora Cero)

16. Dave Brubeck(1920-2012); 「夜想曲」 第19番 オードリー(Audrey)

17. Leonid Desyatnikov(1955-); 「Giselle Mania」 夜想曲(Nocturne)

 クラシックの世界でもクラウドファウンディングが登場したようですね。このアルバムの主役であるRichard Saxelもそんな一人で、2017年7月からレコーディングを開始して、ネット上でスタートさせました。私が気づいたのはすでにリリースが告知されてからです。予約したらすでに「待ち」状態だったので、調べてみたらクラウドファウンディングだった、というわけです。

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