星を眺めるときに聞く音楽として、手始めにその対象となるのは曲名です。だからホルストと出会ったあとにも、この類いの音楽はたくさんあるのだろうと期待していましたが、なかなか巡り会うことなく、FMラジオの番組表を眺めては、星や天文に関わりのあるタイトルばかりに目を向けていました。

  そんな中、比較的すぐに見つかるのがモーツァルト(1756-1791)の最後の交響曲となった41番目の作品についた名前の『ジュピター』ではないでしょうか? 親友であるハイドン(1732-1809)を英国に招いたことで知られるヨハン・ペーター・ザロモン(1745-1815)が命名したと伝えられていますが、モーツァルト自身が命名したタイトルでないので「星と関わりのある曲」としてお勧めしづらいのですが、オープニングの雄大なメロディは、まさにジュピター(ギリシア神話の最高神ゼウスと同一神)と言うニックネームにふさわしい滑り出しです。そしてエンディングに至るまでも(当時はまだ知りませんでしたが)モーツァルトの最後の交響曲としての貫禄も備わっていたように感じました。

 ちょうど私が星の音楽を探していた頃、新譜としてリリースされたのが、私のお気に入りの指揮者になりつつあった一人、リッカルド・ムーティが、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を振ったレコードが広告に掲載されました。
  この頃はまだピリオド・アプローチなど、ごく一部の文献的な演奏ぐらいしか知られていないような時代だったから、この演奏はいかにもムーティらしくメリハリがあり、かつ重厚な響きを聴かせたこのレコードがまもなく私のお気に入りの演奏となったのは言うまでもありません。

 ここで紹介しているムーティ/ベルリン・フィルは1985年、もう一枚は6年後にウィーン・フィルを振ったもの。1985年当時は、まだ帝王カラヤンが存命中だった頃なので、カラヤン以外の指揮者がベルリン・フィルとクレジットされること自体が珍しく、私の好きな指揮者がクレジットされたことで、なんだかとても嬉しかったのを思い出します。ムーティは他にもモツレク、ベルディの「聖歌四篇」、ヴィヴァルディの「四季」、ハイドンの「十字架上のキリスト」、リヒャルト・シュトラウスの「イタリア」をレコーディングしてくれました。
 ベルリン・フィルとウィーン・フィルの両方で同一の曲を録音してくれると、クラシックファンとしては、いろいろな楽しみが出てくるのですが、聴く以外にも、なんとなく両者が並んでいるのを視覚的に眺めるだけの楽しみも、いろいろと想像できて楽しいのです。

リッカルド・ムーティ指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1985)
リッカルド・ムーティ指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1991)

「ジュピターという名前は本人がつけたタイトルじゃないし、ギリシア・ローマ神話とも何の関わりもない」と主張したところで、世間では習慣になってしまい、レコードでも本でも、コンサートのプログラムでも「ジュピター」という名前がついて回ります。
  まぁ、それはそれで良いのですが、超有名曲なので、様々な指揮者が取り上げています。そんな中、星空を眺めるときのお供としてお勧めしたいのがピリオド・アプローチによる演奏と、ニックネームをつけたザロモンの編曲による弦楽四重奏曲版があります。

 
もどるhome(一番星のなる木)