クラシック音楽の中でも繰り返し聞いても飽きの来ない大好きな曲の一曲である「幻想交響曲」。フランツ・リストがピアノソロに編曲した版をとうとう聴いてしまったお話。

 ベルリオーズという人は、モーツァルト同様、作曲の際、いきなりオーケストラ譜を書き始めるというようなことを本かレコードの解説書で読んだことがありますが、この有名人気曲には作曲者によるピアノ版というのは存在しないようです。しかし、かのリストが1833年に編曲したスコアが、多くのヴィルトゥオーゾの指をほっておけないようです。

 大好きな曲がピアノ編曲され、レコードでもそのピアノ版があることを中学生の頃から知っていましたが、実際に耳にしたのは30年以上も後になってからです。(つい最近のエピソードで、音楽評論家としての顔を持つシューマンが雑誌『音楽新報』において、この曲の解説を行う際に参考にしたのがリスト編曲のピアノ版だったということを知り・・・)

 オーケストラ作品のピアノ版というのは、とても好きなジャンルではあるのですが、興味があるのは作曲者本人による編曲版のみ。幻想交響曲のピアノ版を30年近く聴かなかったのは、つまりそういう理由からでしたが、シューマンのエピソードを知って「じゃあ聴かなくちゃなぁ」ということになってのです。どんなアレンジになっているんだろうと一番気になったのは、最後の二つの楽章です。

 第四楽章はあの行進曲の旋律がオリジナルより一回多く繰り返されているのにはビックリしました。ただ単にオーケストラをピアノ譜に移し換えわけではないのですね。
 第五楽章は鐘の箇所、そして続くグレゴリオ聖歌「怒りの日」からの旋律。リストは1853年にこの旋律を使って「死の舞踏」を作曲していますが、そこでは同じ旋律をはるかに荒々しくピアノを強鍵しています。

 他の作曲家もこのメロディをモチーフにして聴くことが出来ますが、ここまでの引用はベルリオーズとリストぐらいではないでしょうか?その「怒りの日」の旋律だけを集めた日本らしい変わり種のマニアックなCDなどもオムニバス盤としてリリースされています。

 それにしても一体全体、この曲のCDはどれぐらいあるのでしょうか?2011年はリスト・イヤーということで、久々にメジャー・レーベルからキワモノがリリースです(笑)


ピリオド楽器に聴く幻想交響曲
 ピリオド楽器による3つの演奏。特に注目して耳を傾けたいのはオフィクレドとセルパンという二つの低音パート。この中ではパイオニア的存在のノリントン盤が異彩を放っています。ベルリオーズが「もしも、十分に低い音の2つの鐘を見つけることが出来なければ、舞台前面に置かれた複数のピアノを用いる方が良い。その場合は、鐘のパートを記譜のまま、1オクターブ下と2オクターブ下で演奏せよ」と脚注しているとおりの事をやってのけたのはインマーゼル盤(2009)。まさか鐘の音に混じってピアノの音が聞こえてくるとは思っても見なかったのですが、調べたら先のコメントが楽譜に記されているではありませんか。

シカゴ交響楽団に聴く幻想交響曲
 私が最初に聴いた「幻想」は、ジャケ買いしたショルティ/シカゴ響。1972年にグラミーを受賞したやつです。さすが名コンビといえるコンビネーションは繰り返し聴きました。特に好きだったのは第四楽章の行進曲と第五楽章の「怒りの日」の扱い。吹っ切れた金管群の咆哮にはシビレました。その後、広島の鐘をサンプリングとして使ったという話題盤のアバド盤(1981)、友人のドミンゴを贅沢に起用したベルリオーズ編曲の「ラ・マルセイエーズ」を併録したバレンボイム盤(1995)の「怒りの日」の低音に圧倒されました。

 最近観た『THE CAR(ザ・カー)』という映画に、この「怒りの日」の旋律が使われていました。スタンリー・キューブリックよりも先にこのメロディをスクリーンに登場させていたのには驚きました。とは言ってもキューブリックのはカラヤンの音源がそのまま使われていましたが、『THE CAR(ザ・カー)』はベルリオーズではなく、リストの「死の舞踏」的なアレンジだったので、興味ある方はどうぞご覧下さい。他にロッシーニの「ウィリアム・テル」の旋律が出てきたりします。